不動産トピックス
クローズアップ スマートロック編
2016.09.26 12:43
スマートフォンを使用することで、鍵の解錠ができる「スマートロック」。国内で普及し始めてから約2年が経過し、不動産業界でも設置する物件が増加傾向である。今回はそのスマートロック大手3社に取材し、最新動向を追った。
フォトシンス スマートフォンをかざすだけで解錠可能 iBeaconを用いた「Akerun Touch」
フォトシンス(東京都品川区)は、後付け型スマートロック「Akerun(アケルン)」を提供しており、今年8月時点で販売台数は1万個を超える。その「Akerun」の追加アクセサリーとしてiBeaconを利用した「Akerun Touch(アケルン タッチ)」を昨年11月より提供する。
「Akerun Touch」は、「Akerun」に「かざして開閉」機能を導入した新製品。「Akerun」アプリをインストールしたスマートフォンをドアの外に設置した同製品の10cm以内にかざすだけで、スマートフォンとアプリを立ち上げることなく鍵が解錠・施錠できる。これにより、従来のパスワード入力によるスマートフォンのロック解除、アプリの起動、解錠する部屋の選択、開閉操作などの煩わしい動作が解消され、更にスムーズなドアの開閉を実現することができた。
また、簡単な設置も「Akerun Touch」の特長のひとつ。同製品は「Akerun」と同様に、強粘着テープを使用してドアの外側に貼るだけ。簡単に外れない上、取り外しの際は綺麗に剥がすこともできるため、賃貸オフィスやマンション等の原状回復が必要な物件でも安心して利用できる。
さらに購入済の「Akerun」本体はそのままに、追加購入した「Akerun Touch」のUUID(識別子)を「Akerun」アプリに登録するだけで利用可能な点も特長である。既存の「Akerun」を買い替える必要がないため、負担額も少額で済む。
代表取締役社長の河瀬航大氏は「『Akerun』は賃貸オフィスの設置・導入に最も適したスマートロックだと思います。その利便性をさらに向上させた製品が『Akerun Touch』です。オフィスの入退室記録を残すこともできるため、セキュリティ性の向上はもちろん、照明・空調機の利用状況の確認や省エネ化にも繋げることもできます。大掛かりな工事も必要ありませんので、少額でオフィスビルのバリューアップが実現します」と自信をのぞかせる。
Qrio 遠隔操作で鍵の施錠が可能 今年冬発売の「Qurio Hub」
Qrio(東京都渋谷区)は、提供する「Qrio Smart Lock(キュリオ スマートロック)」の遠隔操作を可能にするデバイス「Qrio Hub(キュリオ ハブ)」を今年冬に発売する。
ドアのサムターン部分に設置する「Qrio Smart Lock」。鍵をデジタル化することで合鍵の作製や鍵の受け渡しなく、一時的に鍵を発行することができる。そのため、鍵管理の効率化や紛失防止を実現した。しかし利用者の中には、部屋を利用する際にアプリインストールが必要な点に不便と感じており、普及の妨げに繋がっていることが判明した。その課題を解決した製品が「Qrio Hub」。玄関近くのコンセントに挿しておくことで、遠隔地からのスマートフォン操作をWi―Fi経由で受信し、「Qrio Smart Lock」とBLE(近距離無線通信の一種)で通信することで鍵の解錠を可能にする。そのため、自分が自宅にいない時でも遠隔操作で知人や友人を室内に入れることができる。自宅だけに限らず、オフィスや会議室、トランクルームなどにも使用でき、時間貸しによる「貸会議室」の管理にも遠隔操作で対応できる。
また「Qrio Hub」は、外出時に鍵の開閉通知を受け取ることができ、開閉履歴を確認する機能もある。リアルタイムでの利用状況把握にも繋がるため、セキュリティ面でも安心して利用可能。経営企画部の佐藤竜斗氏は「従来のスマートロックにおける煩わしい動作を『Qrio Hub』で改善することができました。遠隔地から操作できるので、自宅やオフィスに居なくても利用できる点が魅力です」と語る。
ライナフ 空室の有効活用や人件費削減を実現 無人で会議室運営が可能な「スマート会議室」
ライナフ(東京都千代田区)は、無人で貸会議室運営が可能な「スマート会議室」を住友不動産ベルサール(東京都新宿区)と共同開発し、今年7月から開始した。
「スマート会議室」は、リアルタイムで空き状況の確認やその後の予約、決済までワンストップで利用できるサービス。全ての貸会議室がスマートロックと完全連携をしているため、遠隔開閉、電話開閉、ウェブ開閉ができ、鍵の受け渡しも不要となる。これにより無人の貸会議室運営が可能となり、人件費の削減が実現する。
テナントが退去した空室の有効活用として手軽に行える特長を持つ。次のテナントが入居するまでの一時的な活用に繋がり、収入に繋がらない状態も解消できる。さらに銀行振込自動消込機能を搭載しているため、入金があった場合に自動で消込作業を実施する。総務の入金管理などの手間を削減でき、ビルオーナーのみで管理することも可能となった。
住友不動産ベルサールの「ベルサールNEXT」で採用されており、今年8月オープンの「ベルサールNEXT東新橋5号館」に導入。今秋オープン予定の「新宿オークタワー」にも設置される。
代表取締役の滝沢潔氏は「『スマート会議室』で、無人の貸会議室運営が可能になりました。利便性の向上と人件費削減、更に空室の有効活用も同時に実現する内容となりました」と語る。