不動産トピックス
第18回不動産ソリューションフェアセミナー再現
2016.10.24 12:39
今年の不動産業界において外せない話題「民泊」。不動産ソリューションフェアでも民泊関係のブースやセミナーが賑わいを見せていた。今回はその中でも一際注目を集めた不動産オーナーと民泊ホスト4名を招き、民泊について徹底討論していただいた。1時間30分という短い時間の中で行われた臨場感溢れるパネルディスカッションの様子を紙面で再現。
民泊パネルディスカッション「民泊は是か非か!?不動産オーナーと民泊ホストが徹底討論」
○ここ一年、不動産業界において民泊が非常に注目され、また気になっている方も多いと思います。今回、民泊というビジネスモデルが不動産経営にとってはプラスになるのか、マイナスの要因になるのかということを検討できればと思います。まずはそもそも民泊とはなんでしょうか。
阿部 民泊およびAirbnbの仕組みついて、まずは説明いたします。民泊とは2008年にアメリカで誕生した会社、およびウェブサイトです。これはインターネット上でゲスト(宿泊者・旅行者)が泊まる場所を探しホスト(オーナー)はリスティングと呼ばれる物件情報などをサイト上に公開します。それによりゲストとホストのマッチングをサイト上で行います。今まで旅行会社などが仲介していたのをウェブサイトが代行し、気軽に簡単に仲介できるという点がAirbnbの特色です。また、物件情報を公開すること以外にも決済という点、問題が起きた際の補償、言語の問題など様々な部分を網羅的に解決したのがAirbnbの大きな強みとなっています。
岡田 Airbnbを活用していくことは普通に部屋を貸すことよりも金額的な面で高いメリットを生み出せる可能性が魅力です。自身の物件でも借主が無断でAirbnbをやっていたようなのですが、普通は月額12万円ほどでの家賃収入だったのがAirbnbの場合だと60万円ほどとなっていたようです。それを機に自分でもやってみたのですが同じくらいの収入がありました。もちろん、時期などもありますが同じ場所でも貸方の違いだけで利益の上がり方違います。こういった面においてAirbnbは魅力的な要素があると考えます。
○ 素朴な疑問ですが利益としてはどれくらいのものでしょう。
阿部 エリアや物件にもよります。ただ、通常賃貸に比べて月の収益が2~3倍くらいになるエリアや物件でないと民泊として貸し出すメリットはないと思います。
○エリアとして人気なのはどのあたりでしょう。
阿部 ピークとそうでない時期がありますが渋谷、新宿近辺は人気スポットです。
岡田 私は大阪を中心に事業を展開していますがやはり観光客の多い難波や天王寺あるいは賃貸としての価格が安い西成あたりが人気です。新幹線停車駅の新大阪も人気です。収益性という点においては普通に貸すのではなく、家具なども準備しなければなりません。例えば月額10万円で貸し出す物件であれば設備などに50万円ほどかけます。それを2~3カ月くらいで回収できれば収益性という部分においてはメリットが高い物件になると思います。民泊は動きが激しいです。収益が上がっていた物件でもトラブルが起きたりや旅行シーズンが外れる。エリアとして人気が薄れていく場合もあります。そうなった場合は撤退も考えなければなりません。その部分も考慮してフレキシブルに対応していくことがホストに必要です。
○ベッドメイキングや管理などの運用面というのは代行業者に依頼するものなのでしょうか。
阿部 投資向けにやっている方は代行業者に委託している場合も多いですが、物件によっては自分で行います。
○一方、オーナーの視点として感じる民泊のメリット、デメリットとはなんでしょうか。
稲垣 民泊をすれば儲かる。利回りが良いという印象があると思います。民泊というのは昔からある民宿というのに似ていますが民宿は旅館業の許可を得て管理者も一緒に同居しているのが特徴です。ですが、民泊というのは管理者が誰もいないところに泊めるということがかなり多いと思います。政府としても近年、ホテルや旅館が足りておらず、空き家が増えている日本において民泊を利用してインバウンド客をそこに泊めさせる方針をとっているように感じます。現状、民泊においてのルールや法的整備などはまだ行われていません。そうした中で推進していくのは非常に荒っぽいやり方であり危険だと思います。以前、私の物件でも借主の方が無断で民泊をやっていたという経験があります。その際はすぐに退去していただきました。ゴミや騒音の問題があり、同じ物件に住まわれている人の不信にも繋がります。家主が不在ですとそのような要素がリスクとなります。民泊はオーナー側からみると家賃は変わらないにも関わらずそのようなリスクだけが孕んでいく要素になります。また、転貸というのは借地借家法において禁止しています。そういった点において嘘をついて借りるのも問題だと思います。部屋が埋まるという点においてメリットはありますが、それ以上にデメリットが大きいと思います。
石橋 民泊特区として先進的な動きを見せている大田区で不動産経営をしています。まず民泊というのは許可、認可を得てやる必要があります。それ以外は違法となります。また、その責任はホストにかかるものです。そうした中で現状、まだまだ違法な「ヤミ民泊」と呼ばれるものがはびこっているのが問題です。また、合法的に民泊をやった場合でも外国人の利用者が多い民泊は同じ物件に住んでいる方にとっては不安になる要素でもあります。他の入居者が退去する可能性があります。そのような場合、物件全体の収益率を考えると決して良い判断かというとそうではないと思います。ただ、物件一棟をまるごと民泊として活用するという方法は一つの選択肢としても考えていいのかと思います。ただ、利益を得たい、空室を減らしたいという理由で民泊に手を出すのは危ない判断であると思います。インターネットを見ると大田区で認可を得た物件は20件ほどです。そのすべての物件を閲覧することができますが、思った以上に活用されていません。原因は行政側が考えたプランと日本における民泊の現状、現場サイドの認識とまだまだ大きくズレがあるからだと思います。民泊を今後うまく活用するためには現場サイドの意見なども踏まえていく必要があると思います。
○オーナー側としてはメリットが薄いという意見が多いです。例えばオーナーも利益を享受することはできないものでしょうか。
阿部 まずオーナーにきちんと許可を得て貸すというのが今の主流です。それを前提にオーナーのメリットとしては家賃を相場以上に上げて貸すことができるという点があります。敷金・礼金も多くとっている場合もあります。
岡田 オーナーにはかなりのリスクがかかります。ホストもそれを踏まえて家賃が相場よりも高くなるというのを考えて活用を提案していくのが一般的です。そういった意味でも外国人がどんどん訪日する時代です。ビジネスという観点において時代に合わせた不動産の利活用を考えると民泊とうまく付き合っていく必要があります。
○民泊におけるトラブルというものは頻繁に起きているものですが、実際に阿部さんや岡田さんが経験されたトラブルの事例や解決策となどがありましたらお願いします。
阿部 外国人の方が利用されることを想定し、ホストも対策を行っています。また、ゴミや騒音などの問題は皆さまが思われている以上に多くありません。Airbnbのシステムで泊まった人に評価がつくというものがあります。これにより、トラブルがあった場合、利用者はAirbnbを使うことができなくなります。また、損害を与えた場合にもAirbnbを通じて請求することも可能です。また、決済の面においてもAirbnbから支払うことになっているので支払いが滞ることもありません。当初はゴミや騒音の問題もありましたが今はAirbnbにおいても利用上の注意点を明記するようにしています。そういった形でオーナーにも安心して使っていただける体制をとってからは私の物件でトラブルなどは起きていません。
岡田 ゴミや騒音の問題はあります。また、部屋の使い方が雑だったり掃除が大変だったりということはありますね。未然に防ぐためにはハウスルールを徹底することや業者の選定をしっかりと行うことが大切だと思います。
○石橋さんにお伺いしたいのですが、大田区の特区条例についてオーナーは歓迎するものなのでしょうか。
石橋 大田区の特区条例について反応とかは特にありません。民泊自体にどれくらいのリスクがあるのか。利益を見込めるのか。今のところ事例が少ないのでなんとも言えないのが現状です。
○これから先、民泊を世間的に普及するにはオーナーの理解も必要です。そうした中、いわゆる「ヤミ民泊」を運営されているホストはまだまだいるといえるのでしょうか。また、普及するためには何が必要でしょうか。
阿部 3年前にAirbnbが来た際にホストになった人は不動産の知識がないままスタートし許可なども考えずにやった人が多かったです。去年の段階では「ヤミ民泊」ホストはおよそ7割ほどでした。ですが、今年に入っては徐々に減っています。今から民泊をやりたい人がいるのであればまずオーナーにその旨を伝えることは必須です。今後、民泊を普及させるにはマンションタイプで行うのは難しくなっていると思います。戸建てやアパートの小さい物件で行っていくという方向に流れているようにも思います。また、先日Airbnbが発表した新しいサービスとしてオーナーが民泊の許可をとったらそのオーナーにもフィーが発生するというサービスを取り入れていく話もあります。そうしたサービスが普及することでオーナーと連携をとって空室活用を行っていくということができると思います。
岡田 オーナーとホストが連携するというのは現状としてはまだまだ難しいです。ですが、法整備が進んでいった場合、今度は利益性を考えるとかなり厳しいものになると思います。あくまでも民泊は一時的なものと考えていく必要があると思います。
○ オーナーとして無断転貸を未然に防ぐためにはどうしたらよいでしょうか。
稲垣 オーナーの立場として明確な手段がない中、現状において民泊は「ノー」という意思表示をすることが大切です。そのために誓約書などを作成するのは一つの手段です。申し込みの段階で一緒に出してもらうようにするのも有効だと思います。さらに言うなら不動産仲介会社に渡して事前に通達してもらえるようにすると良いと思います。
石橋 契約書などでリスクヘッジを考えていく必要があると思います。また、自身も民泊に対して知識を有していくのが大切です。また、民泊などのポータルサイトで許可などを得ているか。オーナー側としても認可しているか。オーナー側でやれることには限界があります。民泊を推進するサイトなどにも対策を講じてもらえるようにしてもらう必要があると思います。
阿部 確かに現状ポータルサイトとしてはそのような対策はまだできていません。許可という面では足りていない部分があります。法律自体がまだ決まっていないからです。そこに関しては今後、クリアにしていく必要だと感じます。
岡田 ポータルサイトの課題はまだまだあります。やって実際に経験してみるのが大切だとも思います。システムを理解した上で対応する取り組みがオーナーとしても求められるものだと思います。
○最後に、民泊の法整備が進み、オーナーがメリットを享受できるようになった場合、今後は民泊に対して肯定的に考える要素になるのでしょうか。
稲垣 不動産の使い方は民泊だけでなく様々な在り方があると思います。法整備が進んだとしても民泊はちょっと違うのかと思います。やるなら民宿でいいと思います。個人的には民泊に関しては今後も賛成していくのは難しいと思います。
石橋 現段階において賛成はできないです。法整備がされていき、新しい業態として発展しくのは良いとは思います。人それぞれだとは思いますが個人的にはやっていくことは考えてはいません。