不動産トピックス

クローズアップ 空間演出編

2016.11.14 14:51

 空室が常態化していることはビル経営において大きな問題である。収益を得ることができないため、修繕といった投資が難しくなり、物件の価値が下がる悪循環となる。今回は様々な空室対策に利用できるサービスを紹介していく。

エアリーフロー 客観的な視点からオーナーにアドバイス
 エアリーフロー(東京都新宿区)ではビルやマンションの建築をはじめ不動産全般のコンサルティングを行っている。特長は不動産業者や工事業者ではなく第三者の立場と視点から助言を行う「第三者性」。そして長期的な価値向上を視野に入れた提案を行う「長期的視点」。ビルの価値向上に照準を絞り最もふさわしい答えを導き出しビル経営をサポートしている。
 代表取締役の藤木哲也氏は「当社は純粋なコンサルタントという立場から、ビルの内装や外装の状態、周辺のマーケットやニーズ、賃料水準などから総合的なアドバイスを行っています。空室を埋めるためにはまず自分の保有しているビルの状況を正確に把握することが重要です」と語る。
 同社は中立であるがゆえに、オーナーが管理会社に直接言いづらいことでも客観的にアドバイスする。また逆に管理会社が切り出せないビルの問題点についても、間に立ち解決策を指摘しやすい立場にある。
 「特にオーナーは管理会社に頼りきりで、ビルの情報が伝わっていないケースも多いので、1つ1つ改善をしていきます。管理会社側からも言いにくい建物の状況や賃料水準についても提言していきます。契約関係にある当事者同士だと、どうしても駆け引きとならざるを得ない面があり、会社の立場がオーナーへの提案に障害となる場合もあります」(藤木氏)
 管理会社の選定にあたって藤木氏は「実態を知らなければなりません」と話す。ホームぺージやパンフレットでは抽象的で事実が湾曲化されていることもあるため、例えば会社が過去に提出した月次レポートの売り上げや管理している物件を参考に見せてもらうなどするとよい。あまり認識されていないが、実はひと言で管理会社といってもその会社のルーツは様々で、それによってメンテナンスが強かったり、リーシングに特長があったりする。それを知ることによってはじめて、ビルのコンディションやオーナーのニーズに合った管理会社を選ぶことができる。
 藤木氏は「これまで800件近いコンサルを行い、その約3割がリピート顧客からの依頼となっています。客観的であることが当社のコンサルで最も重要なコンセプトで、仮に自社が提案した企画であっても、それすら再度客観的に見直して適していないと判断すれば廃案とすることすらあり、柔軟な思考力が求められます」と語る。
 ビルの経営方針で悩んでいるオーナーにとって心強い味方となる。


SQUEEZE 許可申請サービスを開始
空室活用の一例として民泊が挙げられるが適切な営業許可を取得することなく、運営しているケースも多く、制度設計の検討が続けられている。 民泊・ホテル・旅館に特化したクラウドソーシングサービスを展開しているSQUEEZE(東京都港区)はオーナーを含め滞在者や近隣住民にとっても安心・安全な宿泊環境を作りだすことを目的として、行政手続きサービスを取り扱っている「行政書士ネットワーク」を運営するジーネット(東京都中野区)と提携し、宿泊施設の行政手続き支援サービスを開始した。
 許可を取得した民泊運営者が増えることによって、民泊市場全体の更なる活性化とオーナーの経営に選択肢が増える。
 行政手続き支援サービスはウェブ上から申し込みができる。最初に民泊運営について抱えている問題や不安についての電話相談から、対象物件が旅館業の営業許可を取得可能かどうか面談、現地調査、関係役所との協議、調査結果報告などを含む事前調査を行う。営業許可取得の目処が立った場合には旅館業営業(簡易宿所・ホテル・旅館)、特区民泊の営業許可申請を完全成果報酬型にて許可取得まで代行する。
 
源 地方でも成立するコワーキング
 空室活用の方法の一つとしてコワーキングスペースやシェアオフィスを開設するケースが多く、都市部では競争が激しくなっている。波は地方エリアでも徐々に広がりつつある。
 例えば、湘南エリア。小田急江ノ島線「藤沢本町」駅から徒歩3分に位置にて運営されているシェアオフィス「Unplugged」。「デザイナーが集まるシェアオフィス」をコンセプトに、建築やガーデニング等の様々なデザイナーが利用している空間となっている。
 運営者の源(神奈川県藤沢市)代表取締役谷合智憲氏は「湘南エリアでコワーキングスペースを運営している事例をあまり見なかったので、潜在的な需要を見越して開設しました。利用者はデザイナーが多く、スペースのほとんどを自分が作成した商品を展示するショールームとして利用してもらっています。新宿や渋谷のような立地が最高なエリアでは競合が多く入居希望者も多いですが、藤沢のような地方ではコンセプト重視のシェアオフィスが利用者を増やす方法だと考えています」と語る。
 地方でもコワーキングスペースを導入することによって経営に幅を持たせることも可能となる。だが一番重要なことはオーナーが自分の不動産運営のビジョンを持つこと。
 谷合氏は「現在築古ビルや倉庫の空室が増加しています。ビルの活性化のためには若者が集まるような空間づくりが必要となってきますが、シェアスペースやオフィスはその方法の一つです。起業や地方から進出を考えているテナントが入居するようなコンセプトのスペースをつくることが重要です。その影響によって周辺のビルにも似たコンセプトのスペースが誕生することによって相乗効果が発揮され、人や企業があつまり、街の活性化にもつながります。オーナーは私たちのような建築デザイナーを利用して魅力あふれる空間をつくり、街の活性化に注力していただければ幸いです」と話す。
 エリアの活性化に繋がるスペースによって、ビルの価値も向上する。




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