不動産トピックス
クローズアップ 消防設備編
2017.01.02 14:04
大気が乾燥する冬は火災発生率が上昇するという。ビルオーナーにとっても入居テナントの安心・安全を確保する上でも消防設備に気を配ることは必須条件といえる。一方、定期的な法定点検があるとはいえ、消防設備の管理・メンテナンスには費用・マンパワーを要する。これらの課題を解決するために、様々な製品・サービスが登場している。
イシザキ 消防用フート弁 水中から地上へ メンテナンス簡単、大手鉄道会社も採用
オフィスビルに必要不可欠な設備が「スプリンクラー」。貯水槽から配水管を通じて消火する仕組みだ。実は、貯水槽から取水する際、配水管の先端に取り付けられた消防用フート弁によって取水量を調整しているが、この消防用フート弁は常時水中にあるため、劣化が早い上に、交換作業に多くの時間を要する。知られざるビル管理上の課題だったのである。
この課題に対して、逆止弁の専業メーカーとして昭和26年創業のイシザキ(東京都大田区)が開発した地上設置型のフートバルブ「スモレンスキ・グランドフートバルブSG」が1つの解決策を提案する。12月には消防防災用設備機器評定を取得し、消防用途での使用が可能になったのだ。イシザキの石倉昌博氏によると「消防用フート弁は水没しているため、本体が錆び付いて動作不良を起こし、落水する可能性が高い。知らぬうちに水道代が跳ね上がっていることもしばしばだ。そしてフート弁を交換する場合、配水管を水中から引き上げて数人がかりで交換することになるが、ポンプ室の天井が低いと配水管の引き上げが非常に難しい」と指摘。わずか5年程度でフート弁を交換しなくてはならず、コスト・人的負担は膨大だ。一方、「スモレンスキ・グランドフートバルブSG」は貯水槽の地上部にバルブを設置するため、配水管から外さずその場でメンテナンスが可能になった。「水中に設置しないので錆び付きによる落水を防ぎやすい」(石倉氏)。
12月から満を持して消防用の販売を開始したが、各行政と折衝を重ね、駅舎や商業施設、オフィスビル等、すでに導入済の施設も少なくない。石倉氏は「地下にあるポンプ室での作業は非常に寒く、作業員の負担は大きい。自社の社員がメンテナンスする施設での需要は非常に旺盛」とのこと。どのような建物規模にも対応できるという。
関西の大手私鉄が採用する等、発表以来、クライアントからの引き合いが伸びている。ニッチな分野だが、問題は大きい。新たな解決策が脚光を浴びそうだ。
ヤマトプロテック 消防設備の点検状況を確認 ウェブ経由で情報一元管理
防災システムメーカーのヤマトプロテック(東京都港区)は保守物件管理システム「Maintenance Management System(MMS)」を開発・展開している。
テナントビルでは消防法17条によって半年に1度、外観点検及び防災設備の作動試験等による機器点検が、さらに年1回総合点検を義務付けられている。そして、点検による報告書は3年間保管しなければならない。報告書は紙ベースであるため、保管性が悪く、緊急時に紙資料を探すために長大な時間を要するというケースも少なくない。ビルオーナー・管理会社にとって、防災設備に関する点検業務は手間のかかる作業といえる。こうした課題を解決するべく、開発されたのが「MMS」である。開発コンセプトは「簡単に防災設備の点検状況を一元管理できること」に尽きる。従前までの管理システムは多機能である一方、登録等のわずらわしい入力作業が必要になり、なおかつ使いこなすためにシステムに熟練する必要があった。システムを使いこなすことができず、利用者の負担が大きかったのが現状だ。一方、MMSでは「誰もが簡単に使える」仕様を目指し、インターネットを通じて管理物件が一覧でき、各ビルの点検時期と状態がひと目で確認できる。点検の実施漏れによるコンプライアンス違反を防ぐことが可能になる。消防機器のメンテナンス契約をヤマトプロテックに受託していれば、物件情報は自動登録されるので、更に手間がかからない。ビル経営において、消防設備の点検業務はコンプライアンス上必要不可欠だが、収益向上に寄与するわけではない。コア業務に集中するため、MMSを活用し、効率化を図ることが可能だ。
モリタ宮田工業 老人・子供でも扱える超軽量消火器 重さ3kg台、容器強度30%アップ
モリタ宮田工業(東京都港区)は、アルミ製蓄圧式粉末消火器「ALTESIMO(アルテシモ)」の総質量を3kg台に軽量化した「ALTESIMO2. MEA10A」を開発した。アルミ素材を採用することで、継ぎ目(溶接)のない一体成型容器を実現。圧漏れリスクを大幅に低減させるという特徴は維持しながら、高齢者や子供でも活用できる超軽量化に成功。加えて、容器強度は同社従来品と比較して30%向上。底部に樹脂加工を施し、腐食を防ぐ。また、消火器前面のラベルは「人間工学的手法」に基づく、使用者の視認性・判読性・可読性にも配慮している。
同社によると「消火器は初期消火に欠かせないもので、家庭や職場の見張り番として重要な役割を担っています。常に防災に関心をもっていただくためにも、従来からの特徴である、美しさ、安全性に加え、これまで以上に軽く持ちやすい消火器を提供することが、業界のトップメーカーとしての使命であると考え、開発いたしました」とする。
また、再生消火薬剤を40%以上使用し、回収・リサイクルシステムを持つ消火器として、エコマーク認定を取得。グリーン購入法に対応する等、環境にも優しい消火器が誕生した。