不動産トピックス

今週の一冊

2017.05.01 13:43

固定資産税の不条理

ルポ税金地獄
著 者:朝日新聞経済部
発行日:2017年3月20日
発行所:文藝春秋
価 格:780円(税別)

 税制の盲点をついて賢く税負担を回避する富裕層を紹介する一方、税金を支払えず困窮する社会的弱者に焦点を当て、日本社会における税金の「社会的課題」ををまざまざと見せつける。中でも、不動産オーナーにとって人ごとではないのが、第三章「固定資産税というブラックボックス」であろう。固定資産税における不条理さを追求する内容だ。
 自治体が課税額を計算ミスする事例が多発し、過払い分の払い戻しを拒否するケースが多いという。そして固定資産税の課税額を決める指標である公示地価を決定する不動産鑑定士の姿勢も問題だ。利用価値の低い不動産でも固定資産税が割高になり、売却もできず傷んだままの状態で放置された不動産が増える。地域のシャッター商店街が増える理由でもあるそうだ。
 本紙が主宰するビルオーナーの勉強会「不動産経営者倶楽部」税務部会では幾度となく「固定資産税」の問題点について議論を重ねてきた。本書は税全般の問題を取り上げているが、固定資産税の問題点を把握するには十分の内容といえる。保有物件にかかる固定資産税が本当に正しいのかどうか、オーナー自ら調べるしかない。そして不条理に対して「声」を上げるべきだろう。反省なくして改善はない。




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