不動産トピックス
クローズアップ 内見編
2017.05.22 17:05
「内見」には非常に無駄が多い不動産業界特有の商慣習が残り、管理会社・仲介会社双方、さらに内見客にとっても不便な面が多かったという。そうした中、不動産テックを活用して内見しやすい仕組みを提供する企業が増えてきた。
イタンジ 内見予約を自動化 仲介会社の「なりすまし」防ぎ直前まで対応可能
移転を検討する住居を内見する際、仲介担当者が鍵を入手するため管理会社に電話をしているのを見た経験はないだろうか。実は鍵の受け渡しのため、仲介担当者は管理会社に電話をかけ、自身の名刺をFAXで送信し、宅建業者であることを証明した後、内見可能な時間帯を予約し、鍵を受け取りにいったり、保管場所・キーボックスの暗証番号を教えてもらっているのだ。この煩雑な手続きを経て、ようやく内見が可能になる。管理会社・仲介会社にとってこの作業は実に面倒で、さらに入居希望者が効率よく希望の部屋を内覧できないという三者三様に不利益を被るという「負の商慣習」が根強く残っている。
この課題に対して1つの解決策を提示するのが「テクノロジーで不動産のあり方を変える」と標榜する不動産テックベンチャーのイタンジ(東京都港区)だ。今年4月に開発したのが内見予約の自動化システム、その名も「内見予約くん」だ。名称こそ愛らしいが、その機能は非常に優れている。仲介会社は管理会社に連絡する際に音声ガイダンスで内見パスワードを確認。ウェブ上で「内見予約くん」にログインするだけで内見可能な時間帯や鍵情報を知ることができ、24時間365日、内見直前まで予約が可能になる。
一方、管理会社の導入メリットは内見予約に対して電話対応することがなく、さらに予約重複等のミスを避けることができる。そして、更に重要なのが仲介会社のセキュリティチェックだという。企画者である執行役員の野口真平氏は「2年ほど前から鍵の不正利用に悩まされる管理会社の声を聞くことが増えた」と指摘。どうやら仲介会社になりすまして鍵の情報を聞き出し、空室を何らかの目的で不正利用する「事件」が水面下で増えているというのだ。
「『内見予約くん』を試験的に導入・先行利用している管理会社によると宅建業者を偽る身元不明の者からの連絡が1~2%程度あることが判明しており『なりすまし』に対処することができる」(野口氏)
仮に空室を不正利用されることが露呈すれば管理責任を問われかねない。従前までのFAXによる名刺確認では「偽造」に対処できない。一方「内見予約くん」は宅建業者登録をした電話番号を自動的に捕捉するため「なりすまし」がすぐに判明してしまうのだ。
安全性・効率性だけでなく、使い勝手にもこだわっている。仲介会社が内見予約をした場合、募集条件が変更になったり、成約済みとなった場合はメールで事前に通知する機能を設けている。
現状、同サービスはイタンジが先行展開している物件情報の自動音声対応サービス「ぶっかくん」の利用者とも親和性が高く、対象となるのはアパート・マンションだ。ただ野口氏は「将来的には事業用ビルへの展開も見据えている。さらにスマートロック等と連動させ、出入り時間や滞在時間を分析することも視野に入れている」という。不動産テックによって更なる利便性向上が進みそうだ。
NTT都市開発 「パノラマオフィスツアー」公開 ウェブサイトで11物件を内見できる
NTT都市開発(東京都千代田区)はウェブサイト上で保有ビルを内見できる「パノラマオフィスツアー」を公開している。ウェブサイトに訪れるユーザーが360度自由に施設を見学できるVR(バーチャルリアルティ)サービスで、写真や言葉では伝わらない情報も直感的に理解してもらうための試みだ。高画質・高品質のパノラマ写真で執務空間を再現し、実際に現地に足を運んだような感覚で施設見学が可能。パソコン操作も簡単で縦・横・斜めにマウスをドラッグしたり、画面にタッチするだけで好みの視点にスクロールできる。移動ポイントアイコンやサムネイルの視点切り替えボタンも使い勝手が良い。対象となるビルは「秋葉原UDX」や「品川シーズンテラス」など、11物件。今後はアクセス実績などの効果を検証したうえで対象施設を拡大する予定だという。
LIFULL スマートロック対応のオンライン内見予約
LIFULL(東京都千代田区)は不動産会社間の物件見学に関わる業務を効率化する「HOME'S PRO 内見予約機能」を提供している。HOME'Sに加盟する不動産会社向けに提供するサービスで、スマートロックを活用して賃貸物件の管理会社と仲介会社間での物件見学に関わる一連のやりとりをシステム上で効率的に行うことが可能になる。オンライン上で内見予約・承認を行い、鍵の受け渡しの手間もなく、内見をスムーズに進めることができるようになる。