不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2017.06.05 11:19

ワールドリゾートオペレーション 企業の保養所取得し高級旅館に再生 リロ・グループ力を生かす

 企業向けに福利厚生・社宅管理代行を展開している東証一部上場企業のリロ・ホールディング(東京都新宿区)。同社のグループ会社のワールドリゾートオペレーション(WRO)は現在、箱根や熱海を中心に高級旅館を開発、運営しているほか、既存施設の再生にも実績を持つ。同社は今後、年間2~3棟ペースで施設を増やしていく計画だという。

12月に「天翠茶寮」全室温泉露天風呂付き
 昨年12月に開業した日本旅館「天翠茶寮」(てんすいさりょう 神奈川県足柄下郡箱根町)。同施設はすでに運営している「強羅天翠」の隣に建築された。同社は基本的には既存建物のリブランドを手掛けているが、同施設は既存の「強羅天翠」の隣の土地を取得した。わずか12室だけの全室温泉露天風呂付き客室で、部屋は、日本の花鳥風月をイメージし、全ての部屋がパノラマビュー、66・28㎡から47・9㎡までの3タイプを用意。寝室には120cmセミダブルベッド2台、和リビング、全室WiFi対応、加湿機能付き空気清浄機完備、美顔器、ナノケアドライヤなどを配置する。
 館内には、天然木を生かしたインテリア、竹を使ったアート、アンティーク帯のベッドスロー、日本絵画などを配置する。眺望が開けたレストランではライブキッチンを通して、旬の選ばれた食材を使った料理を提供する。
 建設費が高騰している昨今、同施設は4億円以下で完成させた。設備含めてほとんどをメーカーと直接取引することや、外部のデザイナーを入れないことで大幅なコストダウンに成功したのだった。
90日間で黒字化目指す スタッフの教育も
 WROは2009年設立。もともと親会社が企業の福利厚生代行事業等を手掛けており、リゾートホテルへの送客も行ってきた。こうした経緯から、「企業や健保組合などの財務負担になっている保養所などの再生案件や売却案件がありました。そこで当グループ力を生かした再生ビジネスを手掛けることとなった」(田村 佳克社長)という。
 現在、こうした運営が立ち行かない施設は全国にまだ100か所以上あるといわれている。同社はこの市場を積極的に開拓してきた。  「もちろん、既存の旅館の再生も手掛けていきますが、多くは客室が50室前後と比較的小規模なものが多く、他社が手掛けない施設が多いのが当社の特徴でしょう」(田村社長)
 取得はもちろん、「支配人派遣」、「保証」といったコンサルティングから、「予約業務代行」、「自社サイト集客拡大プログラム」、「リノベーション・ブランド提案・支援」など、オーナーの意向に合わせた再生メニューを用意、90日間での黒字化を目指す。
 具体的な再生方法としては、「従業員が自ら考えて行動に移すという意識改革を現場に浸透させること」、「徹底した顧客分析により強化すべき点・改善すべき点を洗い出すと同時に、利用状況・エリア・施設の特性に合わせた明確なコンセプトを策定すること」、「食材・飲材の仕入れ原価適正化によるコスト削減」、「イールドマネジメントの導入や、ネットエージェントからの集客向上策、自社サイトの構築による集客比率のマネジメント等」といったもの。
 リニューアルオープン後は、グループ力を生かし送客。リロ・グループは約400万人にも及ぶ企業の福利厚生サービス会員はじめとする1000万人規模の会員ネットワークを持っており、これが安定した送客につなげることができるのだという。
稼働率30%箱根施設コンセプトメイクで成功
 同社が手掛けた再生事例としては神奈川県箱根町強羅にある客室数50室の「メルヴェール箱根強羅」のケースがある。この施設はもともとある中堅デベロッパーが経営していたが、本業の業績不振により2009年1月に倒産。同社が2009年11月に取得した。
 当時、この施設は稼働率30%程度に止まり、年間約1億円の赤字を計上する厳しい経営環境だった。しかし、従業員の意識改革、同館ならではの立地・設備・景観等を生かしたコンセプトメークの実施によるターゲットを明確化。さらにこれまでの高コスト体質を見直し、食材・飲材の仕入れを大幅に変えるなどの施策を行うなどの再生施策によりわずか90日で黒字化を達成することに成功したという。
年間2~3棟取得 投資家への売却も
 同社は今後も、積極的にリゾート施設の取得・受託運営事業を行っていく。買収した施設に関しては、3~5年かけ、価値を高めて投資家などに売却していく考え。実際、購入時よりも4倍の価格で売却できたケースもあったという。
 「年間2棟から3棟購入、1棟売却、といったペースで進めていきたい」(田村社長)
 直営・コンサル施設が増加することで、運営・再生ノウハウの蓄積はもちろん、ネットワーク化も進めていく。
 「関係のできた施設が増えればその分、新たなビジネスの可能性が広がります。例えば本社にあるコールセンターを利用して、施設からの予約を一括して請け負うなどのビジネスも開始しました。旅館が忙しい一定の時間帯を当社が請負い、施設の人手不足を解消するのが狙いです。様々な手法を駆使することによって、観光業界活性化の一助になればと考えています」(田村社長)

エアビーアンドビー 宿泊施設との連携を強化
 民泊仲介の世界的企業Airbnb(エアビーアンドビー 本社・米国カリフォルニア州)は今年に入り、旅館、ホテル等既存の宿泊施設との取り組みを強化している。サイトを通じて独自の体験プランを企画する宿泊施設と、旅行者をマッチングする。
 同社は第一弾として、俵石ホテルアンドリゾート(神奈川県足柄下郡)が手掛ける温泉宿・俵石閣(ひょうせきかく)をリノベーションした「NEST INN HAKONE」、R・project(千葉県安房郡)の都心型宿泊施設「柴又FU-TEN Bed & Local」(東京都葛飾区)、瀬戸内の島と人をつなぐNPO法人アーキペラゴ(香川県高松市)と提携した。
 Airbnbは設立以来、「旅行先で現地の文化とのつながり、ユニークな旅行体験をすることで参加できる世界を作り出すことを使命」としてきた。今回の取り組みはそれの延長線上といえる。海外での宿泊施設との連携では、昨年12月にアラン・デュカス氏が会長を務めるフランスのホテルチェーン、シャトー&ホテル・コレクションのケースがある。
 今回提携した3つはいずれも「体験型宿泊」プランを提供し、地域コミュニティとゲストの交流を仕掛け、都心部の再生、地域活性化に繋げていこうという考えを持っている。これがAirbnbの理念にマッチしたというわけである。
 長田英知統括本部長は話す。「これをきっかけに、独自の体験プランを有するホテルや旅館との連携をさらに進めていきたいと思います。日本には地方の特色を生かした様々な宿泊体験やおもてなしを提供している宿泊施設があります。今後さらに様々な地域で連携させていただく事で、Airbnbのゲストにより幅広い体験を提供していきたいと考えています」。

ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ 大阪にオリジナルブランドをオープン
 ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(東京都港区)はこのほど、自社オリジナルブランド「ホテル・アンドルームス」第一号ホテルとして、4月27日に「ホテル・アンドルームス大阪本町」(大阪府大阪市)をオープンさせた。
 同ホテルは、地下鉄御堂筋線・中央線「本町」駅より徒歩6分に位置、敷地面積594・92㎡、延床面積3393・35㎡、RC造7階建て。ダブル・ツイン・スーペリアツイン・デラックスツインなど総客室数は103室。オフィスビルからのコンバージョンで、建物の構造体はそのまま残しホテルにするもの。アセットマネジメントは、ラサール不動産投資顧問(東京都千代田区)が担当する。
 同社は「チサン」、「ロワジール」ブランドなどを含め、現在国内約52カ所、海外1軒、総客室数約9031室のホテルを運営、フランチャイズ、アセットマネジメントを展開している。
 今後は新築物件、リノベーション物件併せ2018年までに5軒以上の出店を予定している。都内や大都市圏はもちろんのこと、地方では、観光のコンテンツを持っているところに集中出店させていく計画だ。




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