不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2017.06.19 11:08
多ブランド化で差別化を図る 「チサン」「ロワジール」「アンドルームス」「ハタゴイン」を主力に
「チサン」、「ロワジール」ブランドなどを含め、現在国内約52か所、海外1軒、総客室数約9031室のホテルを運営、フランチャイズ、アセットマネジメントを展開している、ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(東京都港区)。同社は米国の企業再生ファンドであるローンスターの子会社としてスタートしたが、2016年に体制変更したのを機に、積極的な出店戦略へ舵を切った。
歴史的施設を運営「コンセッション」
「今回のプロジェクトは、当社にとって新たなチャレンジとなります」
井上理社長は大きな期待を寄せる。同社は歴史的な施設の所有権を公的機関に残したまま、運営を特別目的会社として設立されるSPCが行う「コンセッション事業」を開始する。
同社を代表企業とするグループが優先交渉権を獲得した同事業は、今年3月31日で閉鎖された奈良少年刑務所(旧奈良監獄)を保存・活用を目的とした「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」。
この刑務所は、監獄の近代化を示す煉瓦作りの建物で、奈良監獄として1908年に完成したもの。10万6000㎡の広大な敷地を有し、2016年には国の重要文化財に指定されている。
プロジェクトでは、同社をはじめ清水建設・日本診断設計・東急コミュニティー・小学館集英社プロダクション・近畿日本ツーリスト・セイワタロウデザイン・JAG国際エナジーが参画。敷地内には、これまでの歴史や史料を保存し、次世代へ伝える史料館を主とし、ホテル、レストラン、カフェバー、温浴施設、商業テナントエリア等の付帯施設が併設される。
ソラーレ社の役割は、「プロジェクト全体の管理」、「ホテル・レストラン等の付帯事業の運営」で、ホテルは、異なる3つのスタイルで展開していく計画だ。
プロジェクトはすべての外観を保持しながら、当初から使われている部材は最大限保持しつつ工事を進めていく。2019年秋に史料館が開館、2020年度中にホテルを含む全施設の開業を目指す。
立地に合わせた形態 コンセプトを明確に
同社はここ数年、既存店舗の整理を進めてきたが、この1年で一巡し、市況の好転とも相まって積極的な出店戦略に舵を切るとともに、新たに「アンドルームス」、「ハタゴイン」等新たなブランドを立ち上げた。立地やマーケットによって使い分けていく計画だ。
「アンドルームス」とは、「部屋プラス何か」をコンセプトにしているもの。 「それぞれの街にあわせて、そこにあったら嬉しい『アンド』をホテルにプラスしていく。新しいホテルの形を提案するものです」(井上社長)
第一号ホテルとして4月27日に開業させた「ホテル・アンドルームス大阪本町」(大阪府大阪市)は、「食」が特徴だという。
一方、「ハタゴイン」は、欧米ではポピュラーな車での旅行、ビジネスに便利な各高速道路、主要幹線道路沿いに建つロードサイドの立地に、「日本の伝統的な旅籠の情緒性を融合させたコンセプトとなっています」(井上社長)という。
2018年秋に開業する「ハタゴイン福島広野(仮称)」は、静岡・大阪に続く3店舗目となる。
多彩な支援法を用意 長期繁盛店目指す
異業種からの新規参入組や、民泊・簡宿の増加等により、右肩上がりだった客室単価も昨年から下落傾向にある。既存ホテル運営会社にとっては今後も予断できない状況が続くとみられ、同社も決して例外ではない。井上社長も「将来に対しての不安が大きい」と話す。それだけに新規オープンの施設は、計画の段階で神経をすり減らしているのだという。
「他社との差別化を図り、できるだけ価格競争に巻き込まれないホテルを作っていく。今から価格競争を見据えた戦略を打ち出していかなければ生き残っていけません。2つの新ブランドはその試金石になるはずです」(井上社長)
同社では今後、直営店だけでなく、土地の有効活用法としてホテル運営を進めていく。現在、直営店舗はじめフランチャイズ店7カ所、技術支援1カ所、業務提携7カ所、営業支援27カ所と様々なメニューを用意し、ホテル運営を支援・受託している。
アパホテルが初のFC説明会を実施
「アパホテル」を運営しているアパホテルズ&リゾーツ(東京都港区)は6月14日、同社セミナー室にて初のフランチャイズ説明会を実施した。
当日は全国から既存ホテルオーナー・新規参入を考えている企業・投資家など約40名が参加した。
大手チェーン店の進出、新規ホテル開発、民泊等の台頭により、独立系ホテルの経営環境はますます厳しくなってきている。このため2011年9月より開始した同社のフランチャイズ事業に関心を持つ事業者は多い。実際、加盟1年間で平均稼働率が約20%、売り上げ158%増となったケースも珍しくなく、同社のブランド力と運営力に期待が高まっている。
現在、加盟店は47ホテル6236室にも上るが、同社ではさらに加盟店を増やしてネットワーク力をさらに強固していく考え。
同社は8月に第2回目のフランチャイズ説明会を行う。日時は8月24日(木)、13時から15時、同社にて。内容は同社の販売戦略・加盟店のメリットの実績・加盟条件・加盟店オーナーインタビュー・個別相談など。
同社はまた、大阪市中央区高麗橋2丁目にホテル開発用地を取得した。取得会社はアパホームとなる。
今回の案件は、大阪市営地下鉄堺筋線・京阪電気鉄道「北浜」駅より徒歩2分、大阪市営地下鉄御堂筋線・京阪電気鉄道「淀屋橋」駅より徒歩5分、敷地面積501・55㎡。
現段階で10階建・192室、延床面積3160㎡の「アパホテル〈堺筋北浜駅前〉」を計画しており、2018年12月の開業を目指す。
今年、大阪エリアでは、4月25日に380室の「アパホテル〈なんば駅東〉」が、10月には160室の「アパホテル〈御堂筋本町駅東〉」と2棟のホテルが開業する。今後は2019年夏開業予定の「アパホテル&リゾート〈御堂筋本町駅タワー〉」(917室)の大型タワーホテルの計画等、5棟のホテルを建築・計画中であり、大阪府下のアパホテルは16棟4948室となる。 同グループは全国で建築・設計中、海外、 FC、パートナーホテルを含む424ホテル7万244室を展開しており、年間宿泊数は約1252万名に上る。アパカード会員は、1300万名を突破している。
“民泊”の経済効果は約9000億円 エアビーアンドビー調査
世界最大級のホームシェアリングプラットフォームを提供するAirbnb(エアビーアンドビー、本社:米国カリフォルニア州)が発表した「日本における短期賃貸に関する活動レポート」によれば、2016年のAirbnbコミュニティが経済活動により創出した利益は4061億円であり、その経済効果は9200億円と、昨年の経済効果5207億円から約1・8倍となった。
日本に宿泊したインバウンドゲストの数は370万人を超え、2015年の137万人と比較して2・7倍となった。1人あたりの平均宿泊日数は3・4泊。日本の標準的なホストのホスティングによる年間収入額は100万4830円で、一般的なホストの年間貸し出し回数は89泊、370万人以上のインバウンドゲストが宿泊した。
Airbnbでの宿泊利用率の高い上位10都道府県は、1大阪府、2東京都、3福岡県、4奈良県、5広島県、6沖縄県、7徳島県、8群馬県、9高知県、10栃木県だった。
Airbnbを利用した訪日ゲストの上位5カ国・地域は、1韓国、2中国、3アメリカ、4香港、5台湾。
Airbnbを利用した訪日ゲストの滞在上位10都市は、1東京、2大阪、3京都、4福岡、5札幌、6那覇、7名古屋、8広島、9沖縄、10名護だった。
同社は2016年10月に岩手県釜石市と覚書を締結。釜石市でもAirbnbが提供する施設に宿泊できるようになるという。
エボラブルアジア シェリングエコノミービジネス拡大
エボラブルアジア(東京都港区)はこのほど、レンタルスペース事業を行うスペースマネジメント(東京都渋谷区)と資本業務提携を締結、49%を出資し、関係会社化することを決定した。今回の資本業務提携は、昨年12月15日に発表したシェアリングエコノミービジネス参入への民泊CtoCプラットフォームに続く第二弾となる。
スペースマネジメントは、レンタルスペース事業を展開し、レンタルスペースを保有・運営している。保有・運営を受託しているレンタルスペース数は合計で東京都内を中心に32物件。これらの物件は、自社サイトの「糀屋箱機構(KOJIYAHAKOKIKOU)」や親会社のあどばるが運営する「スペなび」等を通じて貸し出しを行っている。
エボラブルアジアでは今後は、スペースマネジメント社が有するレンタルスペース運営のノウハウ、あどばる社が有する物件発掘や開発力、スペースレンタルの販売力等、それぞれの強みを生かした事業拡大を図っていきたいという。
今後、同社は保有・運営するレンタルスペースの一部を、「レンタルスペース」×「旅」×「食」をコンセプトに「EAダイニング(仮称)」として運営することを検討している。