不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2017.07.03 16:49
エフェックス 「ホテル1―2―3」ブランドを11カ所で展開 昨年にはベトナム・ハノイへ進出
「ホテル1―2―3」ブランドを国内・海外11カ所で展開しているのがエフェックス(東京都品川区)だ。同社はもともと地域活性化・店舗コンサルティング等を手掛けてきたが、2003年に本格的にビジネスホテルに参入、新築・既存関わらず運営を積極的に受託。昨年には海外にも進出している。
アジア圏にも拡大 法人需要を獲得
同社が昨年7月にベトナム・ハノイ市内に開業させた「ホテル1―2―3ハノイ」が好調を維持している。
当初から日本人観光客、ビジネスマンの短期滞在を期待していたが、「実際は宿泊者の約60%が地元の常連客で、宿泊日数は2~3日、1週間ぐらいご利用されるケースもあります」(吉村原夫社長)という。
ベトナムは近年、日本企業の進出が著しく、市場拡大が見込めるということで、スーパーホテルやくれたけホテルなどの邦人チェーンが進出しているエリアだ。
同ホテルは、ハノイ駅から徒歩3分に位置。敷地面積203・8㎡、延べ床面積1720㎡、RC造地上11階建て、客室数はツイン・ダブルを中心に53室。現地スタッフのほか、日本人スタッフを常駐させている。
建物自体は2010年に建設され、地元オーナーが運営していたものを、同社100%出資の現地法人エフェックスベトナムが10年間の契約で借り上げた。
「開業にあたり、大幅なリニューアルを施しました。フロント周りはもちろん、上階に大浴場とサウナを増設しました。また日本のテレビ放送や和朝食の提供も行っています」(吉村氏)
初期投資額は、家賃・保証金を含め約1億円程度。
同社はベトナム進出に当たり、日本企業の現地法人と連携、太いパイプを利用することでオーナーとの折衝や許認可、建設工事を「スムースに行うことができました」(吉村氏)という。
定期的に改修実施 インバウンド向けも
「ホテル1―2―3」は、基本金額に宿泊人数が増えると、1人当たり1500円プラスで宿泊できるという独自のスタイルで展開。各ホテルに対して、定期的に改修を実施。稼働率向上に努めている。
例えば「高崎店」ではレディースフロアを設置、専用アメニティを配布するなどキャンペーンを行うことで、平均80%超の実績を残しているという。
「甲府店」は、1階に「お食事処 甲斐路」をオープン。夜の食事の提供を開始した。「朝食と合わせて1泊2食付プランなどにより、ホテルの施設をもっと利用してもらおうと考えています」(吉村氏)。また、「神戸店」は1階喫茶室でランチ営業を開始、閑散時の収益向上を図っている。
一方、インバウンド強化を進めているのが「名古屋丸の内店」。
同ホテルは従来あった大広間の漫画コーナーの一部を改装。400~500万円のコストをかけて畳などを設置し、外国人向けのドミトリーとして提供。
「防音工事やロッカー設置などにより、4~5人泊まれるように改修しました」(吉村氏)
前橋の施設を取得12月にオープン予定
同社はこれまで宿泊特化型ホテルのみを運営してきたが、この8月からは宴会場を併設するフルサービスホテルも行うこととなった。
このほど、「前橋マーキュリーホテル」(群馬県前橋市)の運営権を伊藤園ホテルズ(東京都豊島区)から取得した。同ホテルは1973年に開業した前橋市のフラッグシップホテルで、延べ床面積は約1万㎡。本館と新館があり、客室数は75室と多くはないが、最大700名が入る宴会場や結婚式場などを併設している。
エフェックスでは外壁はもちろん、排水などを中心に数億円をかけて改修工事をスタートさせる。12月1日に「ホテル1―2―3 マーキュリー」としてリブランドする。
「新たに大浴場を作り、セントラルキッチンを設けるなど大幅な改修を施し、デザインホテルとして再スタートします。新たにホテルの目玉として、群馬県内の地域食材等を使用して宴会料理の強化を図っていきます」(吉村氏)
同社では今後も、東京はじめ主要都市で120室程度のホテルを手掛けていきたいという。
Aカードホテルシステム 独立ホテルの全国ネットワーク構築 送客をサポート
「スマイルホテル」ブランドで展開しているホスピタリティオペレーションズ(東京都千代田区)は、グループ会社であるAカードホテルシステム(東京都千代田区)を通じて独立系ホテルのネットワークを構築している。
「Aカード」と呼ばれるポイントカードを利用することで、送客力を高めていこうというものだ。主な利用者は30代~50代のビジネスマン。特に出張の多いビジネスマンを中心に評価は高い。現在、ホテルは416カ所、レストラン52カ所の合計468か所が加盟しており、総客室数は4万3000室にも上る。会員数は約73万人。
独立系ホテルにとっては近年、大手チェーン店の出店などにより集客力に苦労しているところも多い。このため、同社のような全国規模のネットワークに加盟するケースが増えているのだ。もちろん、ターゲットに合ったカード会員や、低率の手数料や予約システム利用料も無料など、加盟メリットが多いことも増加している要因のひとつだという。
実際、加盟することで集客はもちろん、売り上げアップに成功しているケースも多い。同社執行役員の内藤信也氏は話す。「例えば2009年に加盟した3ホテルは加盟直前の稼働率が約46%に低迷していたものが、2016年9月には93・5%にまでに向上、1室あたりの客室売り上げも平均3365円から6838円にまで上がりました。こうした実績が加盟店の信頼に繋がっているのでしょう」。
同社は加盟店に対して、カードを通じた送客だけでなく、様々なサポート体制を整えている。具体的には、「コスト削減」、「新築・改装」、「購入・売却・賃貸」、「団体客の送客」、「運営改善・事業承継」、「広告宣伝・印刷物」と多岐にわたる。
近年は、加盟店がより売上向上を図るため、グループ会社のホスピタリティパートナーズが運営する「スマイルホテル」へのFC加盟も増えているという。
昨年12月には、みちのくホテルが青森県弘前市で経営する「弘前国際ホテル」とのフランチャイズ契約を締結。これにより、「スマイルホテル弘前」として新たなスタートを切った。他にも、M&Sが熊本県熊本市で経営する「ホテル SLOW 水前寺」が「スマイルホテル熊本水前寺」にリブランドオープンしている。「当グループの『スマイルホテル』は全国で39店舗ですが、そのうちAカードからの転換は5店舗になります。今後はこうしたケースが増えてくるでしょう」(内藤氏)。ホテルは全国で7000軒あり、そのうち約2000件はチェーンといわれる。「つまり5000件は独立系で占められており、既存加盟店を除いてまだ4500件は手つかずということになります。そう考えると開拓できる余地はまだあるでしょう」(内藤氏)という。
インバウンドを切り口に異業種から参入
ソーシャルアパートメントの開発・運営を行うグローバルエージェンツ(東京都渋谷区)は、北海道札幌市内の「ホテルクレール札幌」の土地建物を取得。大規模リノベーションを実施し、ライフスタイルホテルとしてリブランドオープンさせた。
この物件は、札幌駅から南北線で3駅「中島公園」駅から徒歩4分、「すすきの」駅からも徒歩10分に位置。鉄筋コンクリート造10階建てで、客室数は47室。敷地面積457・26㎡、延べ床面積1772・26㎡、竣工は1988年7月。
北海道は、入域観光客数が堅調に増加している成長市場であり、2015年の延べ宿泊者数は1779万人を記録、今年も前年を上回るペースで推移している。特に訪日観光客数が顕著に成長しており、2015年の延べ訪日宿泊者数は対前年169%の151万人を記録し、5年前の約5倍に増加した。さらに、新たにシンガポールに本社を置くLCC「スクート」が、新千歳―台北―シンガポール線の定期便を開始したことで東南アジアからのアクセスが向上し、更なる観光客数の増加が見込まれている。
同社は、マンション内にラウンジを増設し、入居者間のコミュニティを形成させる新しい住宅「ソーシャルアパートメント」を開発・運営している。現在首都圏に35棟約2000室を展開しており、全物件の年間の平均稼働率は92%だという。
2013年よりインバウンドを対象にしたライフスタイルホテル事業を開始。文化と芸術が集まる街、東京の根津で「ホステルライクなホテル」をコンセプトに「HOTEL GRAPHY」を2013年3月に開業、また2015年8月に沖縄県那覇市で「次が見つかるホテル」をコンセプトに様々な出会いや発見を提供する「ESTINATE HOTEL」を開業し、「ただ寝るだけ」の従来型ビジネスホテルとは全く異なる宿泊体験を提供している。今回取得したホテルは、全47室という規模と、平均客室面積25㎡の利点を活かしたコンセプトワークを行い、これまでの札幌にないデザインとスタイル性の高いライフスタイルホテルを目指していく考えだ。