不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2017.07.17 16:32
鉄道会社系の全国展開が進む
鉄道会社の宿泊特化型ホテルの積極的な出店が目立っている。特に目につくのが、神奈川県に本社を置く相鉄のように、地方の企業が全国展開しているケースだ。近年、鉄道業界は新たな事業の柱にホテル事業を企業戦略の一環として挙げている。インバウンドの増加はもちろんだが、鉄道業界は将来的に少子化の影響で、利用客の伸び悩みが予想されている。これが不動産事業、ひいてはホテル事業の拡大戦略につながっていることは間違いない。
相鉄グループは個室簡易型出店
相鉄グループの相鉄ホテル開発(横浜市西区)と相鉄イン(同)では、新たなタイプのホテルを出店する。宿泊特化型ホテルのミドルクラスに位置する「相鉄フレッサイン」よりも低価格に当たる個室型タイプの「個室簡易型ホテル」を展開する。初出店は2018年10月に京都市中京区の予定でブランド名は未定。
出店地は、京都市営地下鉄「四条」駅より徒歩5分に位置、賃借面積613・67㎡、延床面積1952・84㎡、鉄骨造地上6階建て、客室面積は5㎡~13㎡、客室数150室の予定。相鉄ホテル開発が土地を所有者より借り受け建物を建設し、相鉄インが運営する。
今回初出店する新タイプのホテルは、増加の著しい訪日外国人や国内レジャー客など多様化する需要を獲得していくことが目的。「Simple」(シンプル)・「Smart」(スマート)・「Safety」(セーフティ)の3Sをコンセプトに、セキュリティと遮音性の確保や女性専用フロアの設置等、女性にも安心して利用できるようにし、ICT(情報通信技術)を活用したホテル運営を目指していく。
客室は、要望が多いツインルームをはじめ、シングルルームや4ベッドルーム等も用意。室内には、携帯電話やスマートフォンに連動したキーシステムや、訪日外国人向けに多言語対応端末、シャワーブースやランドリーの混雑状況を客室にいながら確認できるシステム等を導入する。
対象となるのはローコスト志向の訪日外国人やカップル・ファミリー層、10代後半から30代の国内レジャーカップル・ファミリー層・20代前半から30代のビジネス層。今後は東京・大阪・京都などのマーケット需要の強いエリアを重点的に出店していく計画だ。
相鉄グループでは、運輸、流通、不動産に続く第4の柱としてホテル事業を積極的に展開している。現在、グループのサンルート(横浜市もそぃ)の直営店17店舗と相鉄インの直営店27店舗を運営する。今後も、相鉄グループの成長戦略の重要な柱として、検討中の海外への出店も含めて国内外で100店舗を視野に、2019年度までに50店舗超のホテル運営を目指していくという。
近鉄・都ホテルズは宿泊主体型を東京に
一方、近鉄・都ホテルズ(大阪市天王寺区)は、東京都港区と大阪市中央区に新たに宿泊主体型ホテルを出店する。両ホテルは、ツインルーム・ダブルルーム主体の客室構成で、客室に洗い場付浴室を設けるなど、快適性を追求したアッパーグレードの宿泊主体型ホテルになるという。
東京は、JR山手線品川新駅(仮称)の開業、リニア新幹線の開通など更なる活性化が期待されるエリア。大阪は、観光客の増加が著しい難波・心斎橋エリアに近く、京都、奈良、神戸などへの交通の便が良く、両地区ともに、今後も宿泊需要の増加が期待できる立地。加えて、近隣にはシェラトン都ホテル東京、シェラトン都ホテル大阪、大阪マリオット都ホテルなどグループホテルを運営しており、幅広い客層の獲得が期待できる。
両ホテルは、近鉄グループ外の企業が同社仕様で新たに建設・所有する建物を賃借して新規出店するスキームを採用する。今後、新規プロジェクトの迅速な事業化に向けて、同様のスキームによる出店計画も進めていく計画だ。今回の出店により、都ホテルズ&リゾーツが運営するホテル・旅館は、建替え中のものも含めて26施設、約7000室の規模となる。
同社では、「近鉄グループ経営計画」に基づき、収益力強化策の一環として新規ホテルの開発に取り組んでいる。ホテル事業はインバウンド観光客の増加などを背景に、今後も需要の拡大が期待できる成長分野であると位置づけており、既存ホテルの客室改装や、都市部への宿泊主体型ホテルの新規出店検討を進めている。
名鉄グループは銀座7丁目に計画
名鉄グループの名鉄不動産(名古屋市中村区)と、名鉄イン(同)は、2018年完成をめどに東京・銀座7丁目で、新ブランドのホテルを出店する。
新ホテルは従来の宿泊特化型ホテル「名鉄イン」とは異なる、新たなコンセプトのホテルとなるという。
同計画は「銀座」「東銀座」駅から徒歩6分に位置、敷地面積559・56㎡、建物延床面積(予定)5978・62㎡、建物構造は鉄骨造地下1階地上13階建て、客室数は223室を予定している。銀座712(東京都中央区)が所有・賃借する土地に建物を建設し、2~13階のホテル部分を名鉄不動産が賃借、名鉄インが運営する。1、2階にはそれぞれ店舗を誘致する予定。施工予定会社は矢作建設工業(名古屋市東区)。
ホテルの建設予定地である銀座エリアは、東京都内でも屈指の高級な街区であり、特に東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに多様な宿泊ニーズや趣向が求められるエリア。その中で、新たなホテルブランドを立ち上げることにより、名鉄インのターゲット顧客であるビジネス客各層のニーズはもちろん、訪日外国人や観光・レジャー客の多様な利用を期待している。
リブランドオープン情報
マイステイズは関西で7軒目
大江戸温泉物語は串本温泉ホテル取得
マイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)は、8月1日に「ホテルビスタプレミオ堂島」(大阪市北区)の運営を引き継ぎ、「ホテルマイステイズ堂島」としてリブランドオープンする。これによりマイステイズグループは、京都府を含めた関西エリアのホテル数が合計7棟となり、エリア別で35棟の東京都、9棟の北海道に次ぐ規模となる。
「ホテルマイステイズ堂島」は、JR「大阪」駅より徒歩10分に位置、客室数は全141室。繁華街の中心部にありながら、その喧騒を忘れる落ち着いた雰囲気が特徴。館内はアイランド型のフロントが引き立つロビーや、木目調のシックな客室に改装。客室タイプは、ダブルやツインを中心に、ベッド幅が180cmのスーペリアキングなどを用意。館内施設も、コンビニエンスストアをはじめ、老舗ジャズライブハウス「ミスターケリーズ」や、1万匹の熱帯魚が回遊するダイニング「梅田ライム」などバーやレストランが入居している。
マイステイズ・ホテル・マネジメントは、北海道から沖縄までの日本各地で宿泊施設を管理・運営している。2005年より本格的にホテル事業に参入し、現在は宿泊特化型施設から総合リゾートホテルまで、国内77棟全1万2144室の施設運営・管理業務、旅館の運営・管理業務、開発およびコンサルタント、デューデリジェンス、フランチャイズ運営事業などを行っている。
大江戸温泉物語(東京都中央区)は6月30日、和歌山県東牟婁郡串本町所在のホテルを所有する「串本温泉ホテル」の株式を取得した。同社が運営している「浦島ハーバーホテル」は今年3月31日をもって営業を終了しており、今後はリブランドによって大江戸温泉物語グループの34施設目のホテルになる。
同ホテルは、敷地面積9975・52㎡に建ち、鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階付5階建て、客室数は120室、定員数498名。創業は1974年。
大江戸温泉物語は2003年に東京お台場の温泉テーマパークを開業し、以来、全国で温泉宿と温泉テーマパークを運営している。
ザイマックスグループが新たに2棟
ザイマックスグループのからくさホテルズ(東京都港区)は、新たに2棟をオープンさせる計画だ。
2017年11月1日に全112室の「からくさホテル大阪なんば」(大阪市中央区)、2018年1月22日には全177室の「からくさホテル札幌」(札幌市つい居ぴぃ)をオープンする。これにより、現在運営している「からくさホテル京都」、「からくさホテル大阪心斎橋」、「からくさスプリングホテル関西エアゲート」に加えて、全国で5軒のホテルが開業することになる。
「からくさホテル大阪なんば」は、地上9階、延床面積3531・8㎡。設計・施工はエーエーアンドサンと、日本国土開発。客室は全112室で、うちコネクティングルーム64室。
「からくさホテル札幌」は、地上13階、延床面積7174・5㎡。設計・施工は前田建設工業。客室は全177室。
からくさホテルズは、観光客にとっての快適さと利便性を追求した、宿泊特化型ホテル。各ホテルとも人気観光地にアクセスしやすい立地に建ち、シンプルでスタイリッシュな和モダンのインテリアが特徴。
同社は2016年3月に「からくさホテル京都」、「からくさホテル大阪心斎橋」を開業したのを皮切りに、今年1月には「からくさスプリングホテル関西エアゲート」をオープンさせた。2019年までに、東京を含め全国10軒のホテルを開業する予定だという。