不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2017.08.14 12:20

 コンテナ型モジュール建築を採用したホテルが注目を集めつつある。いわゆる海上輸送用コンテナを利用したものだが、同工法は、トランクルームとして空いている敷地の有効活用として広がってきた。近年はバリエーションも増え、賃貸住宅・店舗などへと用途は広がってきている。以前からコンテナ型ホテルは存在していたが、ホテル需要の増加と、短工期や投資効率の良さなどから、不動産所有者からの案件が増えているのだ。

デベロップ コンテナ型モジュール建築採用した宿泊施設オープン 九十九里浜近隣にコテージ11棟
8月3日に開業ジャグジー設置
 8月3日、千葉県長生郡一宮町にコンテナ型モジュール建築を採用した「Casual Resort COFF Ichinomiya(COFF カジュアルリゾート コフ イチノミヤ)」がオープンした。JR外房線「上総一ノ宮」駅から車で10分に位置。敷地面積は1975・62㎡、客室数・棟数は、本館が洋室3名用1室、洋室2名用1室、和室3名用2室、「C-Cotage」は洋室タイプ9棟、うち4棟がペット同伴可、和室タイプ2棟。
 同施設は、長年企業の保養所として利用されてきた築30年の木造家屋をリノベーションした母屋の隣に、40フィートタイプのコンテナモジュールを2段に積み上げた11棟の離れ(コテージ)を配しているもの。
 1Fには風呂、トイレにキッチを備えたリビングダイニングスペース。2Fは半分をベッドスペースにし、のこり半分は屋外にしてプライベートジャグジーを設置した。プライベート性と宿泊客相互の交流をともに楽しめる造りが特徴だという。
 COFFが所在する千葉県長生郡一宮町は、2020年のサーフィン会場にも選ばれた九十九里浜に面し、国内外からの注目を集めている土地。都心からのアクセスの良さも相まって、既にファミリー層やグループ、企業研修などの予約が入っているほど、人気があるという。
 同施設を手掛けたのは、海上輸送用コンテナを利用したトランクルームビジネスビジネス等を展開しているデベロップ(千葉県市川市)。同社が土地を購入し建築したもので、ホテル型投資事業モデル1号店にあたる。
 デベロップは合併会社を通じて既に、中部国際空港旅客ターミナルビル内でカプセルホテルを運営している。また、10月に栃木県佐野市で、同様の工法を用いたビジネスホテル「HOTEL R9 SANOFUJIOKA」を開業させる。既に伊豆エリアでの出店も計画しており、早急に10店舗体制にまで持っていきたいという。
トランクルーム発展 住宅や店舗も増加
 デベロップは2007年の設立以来、海上輸送用コンテナを利用したトランクルームビジネスを展開、これまでに全国で約6000室の運営実績を持つ。
 トランクルームビジネスは拡大の一途を辿っている。セルフストレージ協会によれば、「野積みコンテナ」に代表される屋外型、雑居ビルの一部を改装したレンタル収納スペース(屋内型)などを含めた「セルフストレージ」の供給数は毎年10%の成長を続けており、現在では約50万室以上が稼働しているといわれている。狭い住宅事情の日本では、まだまだ拡大の余地がある。
 発祥の地であるアメリカでは1970年代から広がりを見せ、全米に5万カ所、1700万室以上が稼働しているという。
 同社が得意とする、いわゆる「野積みコンテナ」と呼ばれるものは、空いている敷地の有効活用法として広がってきた。
 利用者の多くは、建設資材の保管やちょっとした在庫の保管として法人の利用のほか、一般家庭でボックスを利用するケースは、テントなどのレジャー用品やストーブ、スタッドレスタイヤなど季節ごとに使うものが多い。その後、バイクを保管するバイクボックスなど様々な形態のものが登場し、その利用方法の幅は広がってきている。
 近年は、コンテナのバリエーションも増え、トランクルームのみならず、賃貸住宅・店舗など不動産の立地、用途、広さ、形状に合わせた商品を提供できるのが強み。デベロップは「貸したい」、「売りたい」、「事業で運用したい」、「相続対策をしたい」といった不動産所有者の希望に合わせて提案を行っている。
短工期・省コスト建築 事業終了後移設も容易
 同社によれば、特にホテルは、コンテナ型モジュール建築を採用することにより、在来工法と比べて様々なメリットがあるという。
 一般的に同工法は、海外工場であらかじめ生産したユニットを現場で組み立てるもの。そのため工期が短縮されるほか、人件費を含めてローコストで出来るのが特徴だ。
 例えば、デベロップがかつて手掛けたケース。震災復興に従事者向け宿泊施設として建築された41室のホテルは、室内設備も工場で組込むことで、設置開始から約2週間での完成という短工期を実現したという。
 同規模の他のホテルと比べて、20%程度建築コストを下げることができる。つまり、宿泊価格もその分下げることができるのだ。「ホテルを出店する場合、他のホテルの価格を見ながら、それよりも安い価格でできるように建築計画を建てて行くことができるのです」(同社)という。
 ひとつのモジュールは海上コンテナと同じ寸法のため、ユニットを積んだトレーラーが現場まで搬入でき、吊り上げ用のクレーン車を置くスペースがあれば設置することが可能になる。重量鉄骨造のため、プレハブに比べて断熱性や防音性に優れ、居住性も高いといわれている。  事業終了後はモジュール単位で移設することも可能で、売却や別の場所で再利用もできる。つまり、既存店舗の資源を無駄にすることなくリユースできるのだ。また解体費用が不要で、建築コスト、廃棄物の削減が可能。
例えば佐野市の案件は、宮城県石巻市の東日本大震災の復興仮設ホテルを移築したもの。新ホテルは在来工法との組み合わせによって建築される。
 構造も一般的な在来工法に比べ、壁や筋交いが少ないラーメン構造のため、間仕切りなしの空間が確保できる。また、耐力壁が必要なく、自由に開口部も作れるため、自由度の高い設計・デザインが可能だ。
 同工法は、フランチャイズ店舗やイベントブースとして採用されるケースも多い。これは事業計画をスピーディーに展開する手段としても効果的と考えられているからだ。
 小規模店舗としてはじめることで初期投資を抑え、成長に合わせて店舗を拡大。客席を増設したり、新たな用途を加えることで複合店舗にしたりと、経営計画の変更に伴う店舗の拡張が必要になった場合も、柔軟な対応が可能だ。
自社所有運営原則に全国10店舗を目指す
 デベロップのコンテナ型モジュール建築は、事業計画から、製造・建築・アフターサービスまでをトータルでサポートできるのが特徴。そのカテゴリーは、住宅から店舗、大型施設まで用途は多岐にわたる。
 ホテル事業に関しては、原則自社で土地を取得、建築、運営をしていく。しかし、ある程度多店舗化に成功した時には、FCも考え行きたいという。

ホテル京阪 3年後までに15店舗体制へ
 京阪鉄道でホテル事業を展開しているホテル京阪(大阪府大阪市)は、全国展開を加速させる。去る7月28日には、8店目となる「ホテル京阪 淀屋橋」(同)を開業させた。2018年には東京・築地など2020年までに15店舗までに拡大していく計画だ。
 同社は昨年、施設のブランドをフルサービスの「ライフスタイルホテル」と宿泊特化型の「ビジネススタイルホテル」の2つに集約した。  今回開業した「ホテル京阪 淀屋橋」は「ビジネススタイルホテル」のカテゴリーに入り、「天満橋」「浅草」「札幌」に続き4店目となる。
 同社は2018年秋に300室規模の「ホテル京阪 築地銀座 グランデ」の開業を予定しているが、こちらは「ライフスタイルホテル」のカテゴリーで、「京橋」「京都」などに続く施設になる。
 取締役営業副本部長の松井次郎氏は今後の出店について話す。
 「東京・大阪はもちろん、京都・名古屋・仙台など主要政令都市で、主要駅近くに良い立地があれば積極的に出店していきたいと考えています。関西以外に出店することで京阪ブランドの認知度向上も図っていきます」
 出店に際しては、既存のリブランドではなく新築、借り上げが中心になる。立地とマーケットの特性に合わせ規模やブランドを変えていく方針だという。
 「特に駅前立地にこだわっていきます。例えば主要政令都市では安定した出張需要が見込めますので、ビジネスマンの嗜好に合わせた施設を作っていきます」(松井副部長) 
 京阪ホールディングスは現在、2017年度までの中期経営計画で、「観光創造」を成長戦略の一つとして位置付けており、とりわけホテル事業は重要な施策となっている。全国的な新規出店は、既存ホテルリニューアルとともに、グループ事業の大きな柱になってきているのだ。




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