不動産トピックス

クローズアップ 太陽光発電編

2017.09.11 12:50

 再生可能エネルギーのなかで注目されている太陽光発電。ZEB、ZEHが目標とされるなかで、太陽光発電業界の動向、そして不動産業界での展開について聞いた。

ソーラーフロンティア 実発電量の多さで勝負~直近では住宅系シェアの獲得、中長期で貸ビルも視野に~
注目集めるCIS薄膜太陽電池その魅力は実発電量
 りんかい線「東京テレポート」駅から徒歩2分の場所に立地する「台場フロンティアビル」。駅からビルに向かう途中のデッキからビル方向を向くと、ビル3階のテラス部分に太陽光パネルが設置されているのがわかる。
 「東日本大震災をきっかけに、昭和シェル石油本社ビルの非常時における電源確保をグループ会社の太陽光パネルで賄えないか検討されました。その結果、所有者へ提案され設置に至ったものです」。こう話すのはソーラーフロンティア(東京都港区)コーポレート管理部の片倉里紗氏だ。
 同社では太陽光パネルの開発から生産、販売までを行う。展開しているCIS薄膜太陽電池は従来の銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)が使用されていて、それらの頭文字をとったもの。結晶シリコン系に比べて温度の変化に強く、また部分的に影ができても安定的な発電能力を発揮できる。太陽光に当てると発電性能が向上する特性もあり、実発電量も多いことから注目を集めている。「太陽光が強ければ多く発電される、というほど単純ではありません。電池は暑さに弱いため、高温時に発電効率が悪くなることもあります」(片倉氏)。結晶シリコンにはない特性と国内生産にこだわった品質が高い評価を得てきた。
国内への提案活動に注力 住宅系トップ企業を目指す
 片倉氏は「FIT需要が一段落し、自立分散型需要が立ち上がろうとする今は、国内への提案活動に注力する時期だと考えています。特に照準を合わせているのは住宅用です」とした。
 同社の国内での導入案件は非住宅が8割、住宅用が2割で推移している。非住宅系ルーフトップへの導入事例をみると、大型工場の屋根などを中心にして設置。また大手自動車メーカーの日産自動車(横浜市西区)の「グローバル本社ビル」の敷地内にも同社のパネルが導入されている。
 「企業にとって太陽光発電装置の導入は様々なメリットがあり、節電による電気料金の削減効果や非常用の発電装置としての機能、CSRの側面でも貢献します。また、当社では国内のメーカーで最長となる『20年保証』も導入しています。このような保証も導入される方の安心につながっていると思います」(片倉氏)
 この非住宅市場で培ってきた信頼をもとに、「住宅用でのシェアを伸ばしていきたい」という。現在、住宅用に照準を合わせるのには理由がある。それは2020年までに新築住宅・建築物への省エネ基準への適合が義務化されることだ。CO2の排出量の削減なども盛り込まれていて、その実現に向けて太陽光発電の導入が推進されている。
 一方で国内メーカーにおいて住宅用で圧倒的トップ企業といえるところはなく、ソーラーフロンティアを含めて「混戦状況」となっている。「今後、太陽光パネルの設置される住宅が増えていくことが予想されます。それらの新規需要を獲得していくことで、現在2割の住宅用案件は飛躍的に伸びるのでは」と見込む。
導入事例が少ない貸ビルその理由と今後の行方は
 住宅や大型施設では導入が活況な太陽光発電だが、貸ビル業界ではその存在感はいまだ薄い。理由を片倉氏は、「発電量を十分に確保するには設置面積が必要となります。ただテナントビルの多くは屋上に貯水タンクやキュービクルなどが設置されているため、面積を確保しにくい現状があります」と指摘する。
 だが地球規模で進む温暖化への対策には政府も本腰をいれている領域。実用化が進めば、節電効果などオーナーにとっても得るメリットは大きいはず。
 「当社が本社を構える『台場フロンティアビル』は貸ビルですが、太陽光発電を導入し、節電や非常電源の一助としています。このようなひとつひとつの事例を積み上げることで、中長期的な視点で貸ビル業界での太陽光発電の普及につなげていきたいです」(片倉氏)  「環境配慮」と「貸ビル業」。特に中小ビルでは結び付きが現状難しいところだが、その壁は、どうすれば破れるのだろうか。知見が求められている。

ライフデザイン・カバヤ ZEHを標準化 受注拡大を図る
 ライフデザイン・カバヤ(岡山市北区)は7月よりZEH、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを標準化し断熱性能をグレードアップさせた。ZEHは政府が2020年度までに標準的な新築着工の半数の努力目標を掲げていて、改正省エネ基準よりもさらに断熱性能が良い住宅になることが見込まれる。2030年度には政府は新築着工の半数を目標にしている。
 同社ではより良い住宅の提供を考えていて、今回のZEH標準化における、断熱性能向上は単に断熱だけでなく、冷暖房費の削減にも効果を発揮する。省エネ効果も期待できるZEH基準の標準化に期待し、受注を拡大していく考えだ。

日本エコシステム 太陽発電でデイタイムの電力料金を割安に
 日本エコシステム(東京都港区)が提供する電力サービス「じぶん電力」は現在加入している電力会社と契約したまま太陽光発電システムが無料で設置でき、料金単価が割高となるデイタイムをアシストする新プラン「デイタイムアシストプラン」を先月8日より開始した。
 このプランは既に加入している電力会社との契約は継続可能なため、料金単価が割安となる夜間は今まで通りの電力会社からの電気を利用し、割高となる日中は太陽光発電で発電したでんきを割安な価格設定で利用できるものとなっている。




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