不動産トピックス

今週の一冊

2017.10.23 12:08

複雑化する脱税スキーム、いたちごっこ続く

 富裕層のバレない脱税 「タックスヘイブン」から「脱税支援業者」まで
 著 者:佐藤 弘幸
 発行日:2017年9月10日
 発行所:NHK出版
 価 格:820円(税別)

 「脱税」といえば1987年に上映された伊丹十三監督の映画「マルサの女」が思いつく。脱税する側とそれを追及するマルサ(国税局査察部)側のだますかだまされるかの頭脳戦はエンタメ作品として楽しめるが、最大の功績は脱税手法をつまびらかにした点にあると見ている。「こんなところに隠しているのか」と子供心に驚かされ「宝探し」のような感覚に浸ったと記憶している。
 一方、本書を一読するとわかるが「マルサの女」で登場した脱税手法はもはや古典的手法に過ぎず、ため息が漏れる。海外不動産に対してファンドスキームを用いた投資手法をはじめ、国をまたにかけて手法が実践されているだけでなく、著者の言葉を借りると「一般に知られていないスキームが山ほどある」のが現状で、国税局VS脱税者の対立構造において脱税者側のほうが有利な状況にあるように思える。
 サラリーマンである評者にとっては脱税をしようにも収入を完全に捕捉されており、脱税するのはほぼ不可能。一方、本書に記す「富裕層」には脱税を指南するブレーンが多数存在し、彼らに巨額の成功フィーを支払いながら、それ以上の税回避を行っているそうだ。あまりにも不公平…と忸怩たる思いもあるが、心のどこかで「脱税したいと思うほど稼ぎたい」と感じる自分がいた。




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