不動産トピックス
第19回不動産ソリューションフェアセミナー・パネルディスカッション再現
2017.11.06 17:06
第19回不動産ソリューションフェアセミナー・パネルディスカッション再現
ビルオーナーが直面する課題は多岐にわたる。それゆえ不動産ソリューションフェアではオーナーが関心を持つであろう70以上のセミナー講演を多角的にプログラムしている。今回は聴講者からの人気が高かった3つの講演を紙上再現した。民法改正によるオーナーへの影響、大量供給を控える東京貸ビル市況の今後、そして建替え時のテナント対応など、ビル経営に生かせる充実の内容だ。
テーマ:(続)世界の不動産市場における東京都不動産市況の展望
東京オフィス市況18年末まで悪化せず
海外投資家 東京に注目
金子 当社はイギリス系の総合不動産サービス会社であり、海外投資家が主要なクライアントです。彼らの動向も踏まえ、世界の不動産市場において東京の不動産市況がどのように見られているのか、お話させていただいきます。世界から見た東京の不動産は巨大な市場であり無視できない存在です。特に安倍政権下で政治経済基盤が安定している点は他の主要マーケットとは大きく異なります。市場規模を考えると首都圏の経済規模1・5兆ドル。日本のGDPの3分の1程度とお考えください。多くの国々は首都圏より経済規模が小さい状況です。人口を見ても4000万人弱。カナダやポーランドと同水準です。これだけの経済規模ですから当然オフィス市場も巨大です。東京のオフィス市場は7000万㎡弱あり、ニューヨークを圧倒しています。続いて世界の環境についてお話しますと、ご承知の通り株式が世界中で最高値を更新しており、債権も同様です。高金利国であれば通常7%超の10年国債が現在では3%を切る水準にまでなっており、すべてのアセットが高騰しているといえるのです。その中でなぜ不動産が人気なのか。1つは安定利回り商品だからです。金融危機前は高値転売が主流な取引でしたが、現在の投資マネーは安定利回りが目的です。先進国をはじめとして年金を主な収入にしている方の割合が非常に増えており、利回りを上げる必要があるためです。そして中央銀行がお金を大量に供給していること。さらに中国の経済が成長したことも大きな要因でしょう。昨年との変化があるとすれば金利ですが、超低金利になっている背景は経済成長力が小さく低くなっており資金需要がないため、金利が下がったまま。一方で世界的な金利上昇の予兆がみえてきましたので、良好なマーケットが若干の調整を迎えるとの見方もあり、投資を続けながらも「宴の終わり」に向けて少しずつ準備をされる方もいらっしゃいます。オフィスの賃料については昨年の段階で「オフィスの大量供給が始まるので27年半ば頃から賃料は下がるのでは」という見方をされている方が多かったのですが、当社が調査している東京のグレードAビルに関してはこの9カ月で3%以上賃料が上がっています。昨年末までは米・欧共に政治経済的に不透明であり、中国経済も懸念されていました。しかし今年の第1四半期が終わる頃には世界経済の展望が徐々に見直されたことが背景にあり、日本企業も積極的にオフィス床を確保する状況になってきたと考えられます。来年の展望につきましてはリーシングが非常に好調なため賃料上昇が継続されると考えております。キャップレートは前回のピークより下がっていますが、依然として投資意欲は強く、少しずつ低下していくのではないでしょうか。物件の取引量は増加しており特に米国、アジアの投資家の動きが確認されます。今後の不動産市場の見通しは東京のグレードAビルのキャップレートの推移を見ると前回のピークより利回りが低いことに気づきます。前回より金利が1・5%程度下がっており、イールドギャップで考えると3%近くあり、海外投資家が日本に投資する理由の1つでもあります。東京のグレードAビルの賃料のピークを100とした場合、現行賃料の水準は7割程度です。すぐに100まで戻ることは当然ないとしても85程度までは十分上昇する余地があるのではないでしょうか。
中畑 私は普段オフィス・リーシング部の情報を統括しておりまして空室情報の整理をしております。現在は不動産バブルとなった2008年頃の空室率に戻ってきています。成約賃料の水準では2008年頃の水準には半分にも達していませんが、着実に回復しています。昨年同時期と比較すると確実に空室も減少しています。港区の9月末現在では空室1・19%。昨年同時期は2・91%でしたので約2%改善しています。今年は品川区も含めました。現在1・49%の空室率ですが、去年度は5・78%でしたので4%以上低下をしています。都心五区に空室がないので「品川」駅周辺ではなく、駅から少し離れたビルにも床がない状況にまで至っています。2020年の東京五輪まで大量供給が続き、心配されていると思いますが、下落が始まる時点でまず1つに空室率が上昇する。賃料を生まない空室が増え長期化する可能性があります。また成約させるためにフリーレントや移転費用を負担する等の誘致策が多発してくるということが挙げられます。最後に統計上も成約賃料の下降が始まります。この3つが下落の予兆といえますが、毎月30社以上の不動産会社と情報交換している中、現状このような予兆はございません。賃料の上昇は緩やかですが高稼働を維持しており、最近では中小ビルに関しても空室が減少しています。28年末までは市況悪化はないと思われます。