不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2017.11.27 11:44
ベッセルホテル開発 新規出店九州エリアに注目 2020年30店舗体制に向け着々
2020年30店舗体制に向け着々
「ベッセルホテル カンパーナ」、「ベッセルホテル」、「ベッセルイン」の3ブランドで全国20施設を展開しているのがベッセルホテル開発(広島県福山市)だ。同社は現在、2020年まで30店舗の開業を目指しており、今後も出店を加速させていく考えで、九州地区も重要エリアとして位置付けているという。
福岡・長崎・熊本・鹿児島 既存店との相乗効果期待
同社が来年以降、出店を計画しているのは10月の「ベッセルホテル カンパーナ名古屋駅前(仮)」(愛知県名古屋市)、11月「ベッセルイン名古屋錦三丁目(仮)」(同)、2019年2月の「ベッセルイン千葉駅前(仮)」(千葉県千葉市)、5月「ベッセルホテル カンパーナすすきの(仮)」(北海道札幌市)。
瀬尾吉郎社長は話す。「昨年は『仕込みの年』」と捉え、全国各地に出店の布石を打ち、今年は徐々に形になってきましたが、3年後までに全国の政令指定都市、中核市に30店舗という目標に向かって、出店用地の情報を求めていきます」。
例えば九州エリアでは、福岡市・長崎市・熊本市・鹿児島市が重点エリアだという。同エリアには、「ベッセルホテル苅田北九州空港」、「ベッセルホテル福岡貝塚」、「ベッセルホテル博多中洲」、「ベッセルホテル熊本空港」、「ベッセルホテル都城」と展開しているが、更なる強化を図っていく考えだ。
同社が展開している3ブランドは、それぞれ客層に合わせた特徴を持つ。「ベッセルイン」は、女性向けのサービスの充実化、12歳以下添い寝無料。「ベッセルホテル」は、シングル21㎡・ツイン26㎡、無料朝食の提供、18歳以下添い寝無料。「ベッセルホテル カンパーナ」は、全室シモンズ社製ベッドなど。
出店に際しては、新築だけでなく、既存ホテルの取得、賃貸借、運営受託など多岐にわたる。エリアは、既存ホテルならば、人口30万人以上の都市、客室数80室以上が基準になる。新築ならば、主要駅から徒歩5分圏内で、客室数130室などが条件だ。
「多店舗化すれば、チェーンとして市場のインパクトが違いますし、ブランド力も上がります。企業としての評価も変わるでしょう」(瀬尾社長)
大企業との連携進め優良な土地情報取得
ベッセルホテル開発を中核とするベッセルグループは、1924年に創業された建設会社がルーツ。ホテル事業は、1974年開業の福山キャッスルホテルからスタートした。その後ロードサイド店を中心に展開してきたが、2010年に「ベッセル」ブランドに名称変更して以降、全国への進出を本格化した。
大きな転機となったのは一昨年。NTTグループの土地を賃借して開業した「ベッセルホテル カンパーナ 京都五条」(京都府京都市)だった。このホテルは開業2カ月で稼働率90%を実現し、現在も好調を維持している。このプロジェクトの成功が、大企業への信用力に繋がったのだった。
その後、ゼネコン・不動産会社・鉄道会社・投資ファンドなどとのパイプを固めたことで、優良な土地の情報が入手できるようになり、これが出店スピードを速めることとなった。実際、今年開業した「ベッセルイン滋賀守山駅前」は、近江鉄道がオーナーで、JR守山駅前の複合商業施設に入居するもの。またこのほど着工した「ベッセルホテル カンパーナすすきの(仮称)」は、JA三井リース建物とサンケイビルとの協業によるものだ。
「NTTグループのような日本を代表する企業が、いち地方企業である当社と取引したことということが、企業としての信用力向上に繋がってきたわけです」(瀬尾社長)
優良人材育成にも注力 宿泊業で「カイゼン」
ベッセルグループは、ドトールコーヒーのフランチャイジーや印刷業、建物メンテナンス業など多様なビジネスを展開している。中でもホテル事業は、今後も成長戦略を描くうえで重要な位置を占めているという。実際、グループの年間売り上げのうち、50%以上をホテル事業が占めているほど。
このため優良な人材の教育は大きな経営課題だ。そこで同社はサービス向上のため顧客満足度と従業員満足度を向上させる活動、いわゆるQC活動を推進。トヨタ自動車で有名な「カイゼン」のように製造業で取り組むケースが多いが、サービス業、とりわけホテル業では珍しい。
具体的には、個人・グループに分かれ、日々の業務に創意工夫を加えた提案をし、実行。その成果を1年ごとに評価する。内容は集客方法や料理、客室清掃など多岐にわたる。毎年発表会を行い、最優秀賞から金賞、銀賞、銅賞を決め、その効果に見合ったインセンティブを社員に支給するもの。
目に見える効果はもちろん、無形効果として、組織の活性化や顧客満足度の向上、スタッフのスキルアップなどを生み出しているのだ。
「当社が意識するのは、各予約サイトでの口コミ評価です。常に5段階で4以上の評価を維持していくために、利用者アンケートは幹部全員が目を通すようにしていますし、口コミサイトでの評価も常に見ます。現場の課題は、独自のQC活動によってスタッフがすぐに解消する手立てを考えるようにしているのです」(瀬尾社長)という。
KPGが大前研一氏とコラボでリゾート施設
総合レジャー事業開発を手掛けるカトープレジャーグループ(KPG 東京本社・東京都千代田区)は、新たに「ATAMI せかいえ 月の道」(静岡県熱海市)を開業させた。
同施設は2015年4月より運営している「ATAMI せかいえ」の隣接地に、新棟として稼働させるもの。オーナーはビジネス・ブレークスルー(東京都千代田区)。デザインはTKN・ARCHITECT、建築設計は石井建築事務所が担当した。敷地面積は3191・37㎡、延床面積1960・87㎡で、建物は鉄筋コンクリート造。客室13室で、飲食施設とカラオケ施設を併設する。
「客室は全てバトラー制で、最上階のペントハウスには、様々な料理に対応できるよう設計された専用のカウンターキッチンをご用意し、和食、天ぷら、鉄板、特別会席など、あらゆるご要望にお応えする、1組様のためだけの専属シェフをご準備いたします」(加藤友康社長)
客室は既存棟と合わせて25室になるが、全客室共通でデッキに源泉掛け流しの露天風呂を用意する。
フルオープンキッチンのレストランは、相模湾を一望できる一方、間仕切りにより徹底したプライベート空間を演出する。コーナーウインドウにはテーブル席を設け、二名利用はもちろん、グループでもニーズに合わせて利用することが可能だ。「また、パーソナルケアに特化したラグジュアリーリゾートとして、『持ち帰れる健康』をテーマにせかいえオリジナルのコンディショニング施術をご提供するサロンを設けました。特別なご要望にもお応えするパーソナルメンバーシップを実現いたします」(加藤社長)。
「ATAMI せかいえ」は、日本を代表する世界的コンサルタント大前研一氏とのコラボレーションによるもので、エグゼクティブ研修施設とスモールラグジュアリーリゾートの融合施設。「トレーナーによるパーソナルケアの提供や、ローカルハラル認証を取得するなど、健康をテーマのひとつに掲げ、2015年の開業以来、ビジネスエグゼクティブの皆様を中心にご好評をいただいております」(加藤社長)という。
同グループは1962年の創業以来、「総合的なレジャー事業開発の実現」をコンセプトに、ホテル・旅館はもちろん、リゾート・フードサービス・スパ・エンターテイメント等を手掛けてきた。事業は多岐にわたるが、一貫して「トータルプロデュースシステム」にこだわる。
これは、クライアントからオファーに対し、事業計画からオペレーション、収益に至るまで全てのプロジェクトに責任を持つ、という姿勢に基づくもの。
同社は今後も、高級旅館の多店舗化、新業態のバケーションレンタルなど、更なる拡大を目指していく計画だ。
サクレン神保町 「レトロモダン」をコンセプトに
リヴホテル(東京都港区)は、レトロモダンホテルをコンセプトとした「SAKU REN JIMBOCHO(サクレン神保町)」(東京都千代田区)を2018年2月1日に開業する。
東京メトロ半蔵門線「神保町」駅に位置し、建物は地上12階、客室は5タイプで全32室。フロントスペースには様々なジャンルの本とレコードを陳列する。
和のインテリアとクラシカルなイメージを融合させた5種類の部屋を用意。「訪れる人が肩の力を抜いて、心身ともにリフレッシュし、気持ち新たにスタートを実現できるホテルサービスを目指し」(同社)、客室には広めのバスルームや、カスタムメイドのシモンズ社製マットレスを採用。畳や障子などの和の要素を要所に取り入れた。
インテリアデザイン及びコンセプトメイクは、100件以上のホテルや旅館の経営コンサルティングを手掛けてきた咲楽(東京都渋谷区)が担当し、ホテルの運営管理は、ケラススホテル&リョカン(東京都渋谷区)が担当する。
同社ではこの施設で年間目標平均室料1万9500円、年間平均稼働率87%を目標にしている。