不動産トピックス

今週の一冊

2017.12.11 17:34

同族だから実現できる企業の成長、そして争い

あの同族企業はなぜすごい
著者:中沢康彦
出版:日本経済新聞出版社
発行:2017年11月9日
価格:850円(税別)


 同族経営についてメディアで取り上げられる際、著者は大きく2つの視点から語られることが多いとする。1つは親子間や兄弟間で経営権をめぐって起きる争いなどといったマイナスイメージを伴う視点、もう1つは創業から100年や200年を超える長寿企業の学ぶべきビジネスモデル。後者はプラスの要素として受け手に伝えられる。本書は「同族企業の経営者が語るファミリービジネスの真実」と「最新のアカデミズムの成果を通じた同族経営の分析」という2部で構成。同族経営だけに経営手法やその裏側にある各者の思惑などはあまり表に出にくいが、本書は同族企業の事業承継や経営権委譲の際のエピソードなどを交えながら、同族企業の実態に踏み込んで論じている。
 本書で紹介されているのは星野リゾート、「獺祭」で知られる旭酒造、「ホッピー」でおなじみのホッピービバレッジなど。通信販売会社・ジャパネットたかたの前社長・高田明氏の社長退任に関するエピソードでは、息子・旭人氏に社長の座を譲るという前提ではなかったとしつつも、自身とは異なるアプローチから業績回復やスタッフの士気向上に努める姿に心を動かされる様子が文章を通じて現れている。語られることは少ないが、同族企業が地域や社会に果たしてきた役割大きさを感じる一冊である。




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