不動産トピックス
第19回不動産ソリューションフェアセミナー・パネルディスカッション再現
2017.12.18 16:32
不動産ソリューションフェアのセミナーで、例年多くの聴講者を集める士業関連セミナー。今回はその中から、弊紙コラムでも執筆中の渡部和弘税理士、児玉譲弁護士のセミナーを紙上再現する。いずれも不動産経営者にとって身近であり、悩ましい問題をテーマとしており、当日は多くの聴講者を集めていた。
テーマ:建て替えのための対テナント立ち退き請求における諸問題
正当事由の積み重ね、建替え計画の有無が分かれ目に
昨今建て替えのための諸問題において判例が出ています。ビルオーナーや管理会社の立場から見て世代交代の時期や耐震診断で建替えるなどです。耐震などでは補助金もありますが、一方で建築コストだけでなくテナントに立ち退いていただく保償のコストが国からカバーされてない。加えてその立ち退きコストについて色々な裁判例がでてますが基準が明確ではありません。複雑な中で個々の凡例を掛けてそれなりの基準を見つけるしかありません。まず、「昭和50年竣工ビルのオーナーA社はテナントB社に事務所の用途で1フロアを賃貸していたところ同ビルは耐震診断の結果耐震強度は新耐震新基準をおおよそ満たしていないことが判明したのでこの機会に新耐震基準をみたすビルに建て替えすることをB社に対して期間満了の7カ月前に期間が到来しても更新を拒絶する内容の通知を出した。しかしB社はそれを無視して期間満了後も明け渡しをしないで事務所使用を継続している」というケースを考えましょう。最初の問題「賃貸人は旧耐震建物のテナントに対して耐震改修する義務があるか」は平成22年の東京地裁の判決等いくつかの判決が出ています。結論を言うと、オーナーに義務はないという判断が出ています。「賃貸人の更新拒絶に対してテナントは待機明け渡しの義務はあるか」という問題は一番のポイントです。まず期間の定めがある場合、期間満了前の6カ月ないし1年の間に更新拒絶の通知を出します。ただその場合、その契約を終わらせる行為について正当理由が必要になります。また賃貸借契約についても期間の定めが無い場合とでてきます。こういった場合解約申し入れをして通常6ヶ月後に終了しますがその場合も正当理由が必要です。耐震強度不足や老朽化などでもって建て替えをする必要があるということ、建て替えする必要があると認められるとオーナーにとって有利です。建替え計画が具体的にできていることが大事になってきます。あと契約の経緯ですね。建物はいつ取り壊す予定かという事をテナントに告知していた場合もオーナーにとって有利です。オーナーにとって有利な状況が積み重ねた上で最後に立ち退き料の提供となります。ただ正当事由が否定された例もあります。多いのはテナントに待機明け渡しをさせて建替えをする目的で物件を取得した場合いわゆる地上げ目的正当事由ですが次のような事例でも正当自由ではないとの判断が出ています。平成25年東京地裁の例です。テナントはレストランでした。賃貸借1年後にオーナーチェンジ、数回の更新を経験したが、あるとき更新拒絶した。ここでは自己使用の必要性での比較で賃貸人は耐震性能の問題から取り壊して駐車場利用したいということを主張していますが、具体的な計画の提出が無い。差し迫った自己主張の必要性が認められないとい裁判所は判断しました。耐震性能についても取り壊しが不可避だとは認めがたく、取り壊しまでの必要がないと裁判所は判断しています。賃貸人は本件の建物を使用する積極的な需要は認められないがテナントは本件建物を必要とする切実な事情があると認めた例です。
テーマ:相続対策・不動産オーナーの注意点
節税ありきで相続を考えないよう注意
相続対策の考え方について語る上でよく誤解されるケースに、いきなり節税対策に入る人がいらっしゃると思います。「税金が安くなるからしよう」と始め、色々行うのは良いが、後に家族内で揉める原因を作ることがあります。これでは本末転倒なので、節税対策ありきでないこと先に忠告しておきたいと思います。税金の枠内で可能な節税対策として3つが挙げられ、1つ目が贈与の形で生前に被相続人へ財産配分すること。2つ目が賃貸住宅の建設。3つ目は相続時精算課税を利用し、収益を生む不動産・有価証券の贈与となります。例えば、とある家庭の財産総額が2億円、うち不動産(自宅とする)が1億円で現預金が1億円とします。また、もう一つ前提で相続税額を申告した際に配偶者(奥さん)は税金の軽減適用前とします。この2億円の財産があった場合2700万円の相続税が掛かります。実際は多少配偶者(奥さん)が財産を受け取ると思いますが、税金の軽減適用前なので半額の1350万円を納めるのでなく2700万円の相続税が発生します。一方、預金は1億円あるので2人の子供に毎年250万円ずつ贈与すると、期間は20年間に成ります。この贈与を続けると相続税額は720万円になり、財産を生前贈与した際にかかる税金「贈与税」が630万円となります。この相続税の計算ですが、取得財産から債務葬儀費用を引き、さらに基礎控除を引くと残った額が課税遺産の総額はそこから人数によって分割するということになっています。法定相続割合はあくまでも税金の計算であって、実際に相続するのは法定相続に従わなくても構いません。相続人の間で同意があれば自由ですが、それによって税額が変わることを念頭に置いておいてください。実際の総支払額は配偶者の相続額によって決定します。では配偶者がすべて相続した場合はどうなるのかといいますと、1次相続時には支払う額が安くなりますが、配偶者が亡くなった時の相続額が大きくなります。相続税には特例がありますが、例えば小規模宅地の特例には3種類あり、特定事業用の宅地の特例、特定居住用宅地の特例、貸付事業用宅地の特例があります。次に相続対策についてです。生前に相続対策した場合に贈与税が発生します。生前に財産分与をしたいという相談を受けますが、贈与税の実効税率が相続税を下回る場合は生前贈与をしたほうが良いです。ただし贈与には一括と分割がありますが、累進課税を適応しています。また、将来の税制改正や財産価値の変化については贈与税では織り込むことはできません。贈与時には贈与契約書を結ぶことが重要です。民法上では口約束でも結べますが、証明ができないので、きちんと贈与契約書を残しておくべきです。分割の場合は一括分の税を請求される可能性もあるので、毎年契約書を交わしておくことです。相続対策として賃貸住宅をという話もありますが、相続税のみを考えると建てたほうが安くなります。相続時精算課税の利用事例ですが、2500万円までは贈与時の課税はありませんが、被相続人が亡くなった場合に課税が発生します。相続時の価値で評価されるので、将来的に価格の上昇が見込めるならメリットであるといえます。