不動産トピックス
今週の一冊
2018.01.15 11:24
不動産売買の力関係是正を目指す
不動産屋にだまされるな 「家あまり」時代の売買戦略
著者:山田寛英
発行日:2017年1月17日
発行所:中央公論
価格800円(税別)
「不動産屋は信用できない」という印象を持つ方は少なくない。公認会計士・税理士である著者は不動産業界で業者と顧客との力関係に、圧倒的な差異が温存されている現状に警鐘を鳴らしている。
「発生するトラブルの再発防止策を進めるのは業者側の責任だ」とし、業界の制度的な欠陥を指摘している。専門家と一個人という知識や経験の差だけが原因ではない。不動産業界全般のコンプライアンス意識の低さであり、更に売主買主の双方から手数料を取るいわゆる「両手」仲介や「双方代理」、業者自身が不動産を購入できるシステム、コンビニの2倍以上の業者数、「国のしばりのゆるさ」にも問題があるという。レインズ(不動産売買情報ウェブサイト。現在のところ業者しか閲覧できない)等の情報格差の問題にも切り込んでおり、「プロとアマが戦う世界」という表現もなかなか過激だ。だがそれだけ弱い個人の被害者が多いということだ。巧妙になった「囲い込み」手法など「あくどくするほど儲かる」という見方をしているが、それだけ業界の問題の根は深いのか。良心的な不動産業者も存在する点にも目を向け、本書の結論は、悪質な不動産屋にだまされないためには「業者を見極める目を養うこと」という。個人が安心して「一生に一度の買い物」ができるようになるためにも、このような書籍が今後も出版されればと願う。