不動産トピックス
今週の一冊
2018.03.12 11:35
喫緊の課題を詳細にリサーチ
人口減少時代の土地問題 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ
著者:吉原祥子
発行日:2017年7月25日
発行所:中央公論新社
価格:760円(税別)
我が国はこれほど杜撰な国だったのか。日本の私有地の20%で所有者不明、登記簿上の土地所有者の半分近くに官庁の通知が届かない。外国人の土地買い占めが話題になって何年になるだろうか。高齢者問題に我々が気づいたのはいつ頃だったろうか。
外国人所有者の相続が海外で発生した場合、新所有者の把握は困難だろう。また高齢者問題は相続問題につながる。相続登記義務がない以上、所有者不明の不動産が増加するのは予想できたはず。
時間の問題でいずれ立ち行かなくなると気付きながらもほぼ無策で時は過ぎ、「空き家」という目に見える弊害が現れやっと事態の深刻さが不気味に広がっているのが今の状況ではないか。「土地問題」という大きなカテゴリーが膨張し重くのしかかる現状を本書は綿密な調査により明らかにしている。そして解決の見通しの遠さ。東京財団の研究員である著者は「民間・独立の政策シンクタンクだからこそこのテーマに取り組むことができた」と述べているがそれは望ましい在り方なのか。方針次第では国家の根本を揺るがしかねないというのに行政を動かすことは何と難しいことか。
発行以来、本書が版を重ねている事実は我々の間の危機感の広がりの現れだ。切実な認識が広がれば解決の兆しも段々と見えてくるだろう。