不動産トピックス

クローズアップ VR内覧編

2018.03.26 17:19

 賃貸住宅業界で先行してきたVR内覧だが、オフィスにおける導入を進める動きが出てきている。そのなかでプレイヤーも不動産業界出身者やゲーム業界からの参戦など、多様化している。

シリウス・ネオ 賃貸オフィス業界20年以上の経験を生かしVR内覧を提案
 不動産テックのひとつとして注目される「VR」。ユーザーが多い住宅仲介においては広がりを見せる一方で、オフィスにおいてはまだ浸透していない。
 そのなかで昨年7月に設立したシリウス・ネオ(東京都中央区)ではオフィスビル向けのVR内覧をオーナーなどに向けて提案している。代表の小山弘晃氏は三幸エステートやエム・エス・ビルサポートなどでオフィスビル仲介、PM業務、WEB事業などに従事してきた。不動産業界での経歴は20年を超える。
 その小山氏がシリウス・ネオを設立してVRコンテンツの作成の提案を行っているのには「オフィスを探すユーザーの世代が若返っていくなかで、インターネットはもとよりVRなど新しい形での情報発信の重要性が増してくるのでは」(小山氏)という思いがあったからだ。
 同社のVRコンテンツは「20年以上」の経験を生かしたつくりとなっている。「例えば、オフィスビルに慣れていない人が迷わないように、ビルの案内導線をはっきりさせています」(小山氏)。ビルの紹介ポイントの説明も欠かさない。同社のコンテンツではひとつのシーンごとに解説コメントも掲載している。周辺エリアの説明から、それぞれのビルが持つ特長の説明があることでユーザーの理解度が高まるという。
 「つくって満足ではなく、どう成果を出していくかが重要です」(小山氏)。VRコンテンツはWEB掲載やメルマガといったネットとの相性は良い反面、営業現場での使用には地道な啓蒙活動が必要と考えている。「内覧会をお手伝いします」。参加者に具体的な利用場面をイメージしてもらうことで、VRの有用性と広めていきたいと語る。
 中小ビルにおいては「VRコンテンツと紙資料の作成をセットにしたプランも提案したい」(小山氏)。最新テクノロジーから従来のアナログまで対応することで、オーナーや仲介会社の「かゆいところ」に手が届くサービスを展開していきたい考えだ。
 「また一般企業向けのプランも準備中です。人材採用のためにオフィスを見せる取り組みが本格化していますが、VRは有効な手段の一つになると思います。4月4日~6日に東京ビッグサイトで開催される『先端デジタルテクノロジー展』に出展し、企業向けVRコンテンツサービスの発表を行います」(小山氏)
 「不動産テック」の一翼を担いたいと語るシリウス・ネオ。VR元年の昨年は「ハードの年」、そして今年は「ソフトの年」という声も強い。不動産業界の中で存在感を示せるか、今後も注目してみたい。

ヒストリア ゲームデベロッパーが不動産VRに参入 戸建て、マンション、オフィスに対応
 不動産業界で広まりを見せているVR内覧。そのなかでゲームデベロッパーのヒストリア(東京都品川区)がゲーム開発技術と建築知識を融合し、不動産業界向けのバーチャルモデルルーム事業に参戦した。
 同社が開発、販売を行っているのは建築ヴィジュアライゼーションソフトウェア「Solid Vision」。直近では先月21日にハウスメーカーであるデックス(横浜市都筑区)が展開する「Deccs VR―House」に採用されたことを発表。そのほかにも引き合いも多いなど、これまでになかったVRだけに注目度は高い。
 代表取締役の佐々木瞬氏は「Solid Vision」の事業展開について「法人向けに受注開発を行うなかで、不動産企業からの問い合わせは突出して多くありました。『それならば製品化してみよう』という思いで始めたのがきっかけです」と話す。
 「Solid Vision」は他のVRと比較するとその特長は際立つ。ゲームデベロッパーだからこその技術で、高いグラフィック技術での内覧が可能であるとともに、様々なシチュエーションを想定することができる。
 「たとえば家具や床などを入れ替えて自らのイメージに合った内装にすることが可能です。加えて、これはCGだからこそですが、朝や夕方、夜などの時間選択が可能であるほか、調光などを操作して雰囲気を確かめることもできます」(佐々木氏)
 足もとでは住宅関連の引き合いが多い同社。ただ佐々木氏は「オフィス向け」としての展開も取り組みたい考えだ。
 「実は当社が現在の五反田へ転居してきた時も『Solid Vision』を使用しました」と話す佐々木氏。オフィスを探すため仲介を回っても内覧する物件は当然ながらスケルトン状態。「設計会社からレイアウトデザインを頂きますが、図面ではわかりにくく想像しづらい」のがテナント側の本音だ。「そこで『Solid Vision』を使用して、オフィスレイアウトや家具の配置なども含めて検討を重ねました。当初、会議室は少し狭くレイアウトされていましたが、前のオフィスが広々とした会議室で使いやすかったことから、間仕切りの位置を後ろにずらすなどの改善もできました」(佐々木氏)。
 IT系企業を筆頭に働きやすいオフィス環境へのニーズは高まっている。更に言えば「デザイン性」などのこだわりも各社異なる。それらの要望をくみ取ることのできる「Solid Vision」は不動産業界に大きな変革をもたらすかもしれない。




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