不動産トピックス

今週の一冊

2018.06.18 16:38

人間相手だからこそ起きる「想定外」

賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド
著書:太田垣章子
出版:日本実業出版社
発行:2017年12月20日
価格:1500円(税別)

 本書はこれまで家主側の訴訟代理人として延べ2000件以上の賃貸トラブルを解決してきた司法書士・太田垣章子氏の書籍。住宅からオフィス・店舗物件まで、31のケースから同氏自身がどのように対処したのか、その顛末、そして予防法と解決策を記している。
 オーナーからしてみたら、賃料滞納などのトラブルは避けたいところ。あるビルオーナーは「利用している管理会社では問題のある入居者、テナントははじかれるようになっているようです。データベースが充実している証でしょう」と話す。ただ「絶対」はない。「想定外」のリスクにも備える必要がある。
 たとえば本書で紹介されている「想定外」が「ゴミ屋敷」。建物にダメージを与えかねないので早めの一手が必要。ただ賃借人が生活保護者であり、役所からの代理納付によって賃料の支払いに影響はなかった。役所に事情を伝え代理納付をストップ。滞納が3カ月になったところで法的手続きに移行したという。オーナーにとって事前に予防策を講じておくことはもちろん、対処法もケーススタディで学べる。
 ただ「ハウツー本」だと紹介するのはいささか言葉足らず。著者はオーナー側の立場に立ちながらも、滞納者にも寄り添う。その独特の視点から綴られた本書は31の短編からなる「人間ドラマ」とも言えそうだ。




週刊不動産経営編集部  YouTube