不動産トピックス
第20回不動産ソリューションフェア見どころ紹介「世界の不動産市場から見た東京と東京オリンピック後の展望」
2018.10.09 17:37
講師:サヴィルズ・ジャパン マーケット・リサーチャー 中畑太一氏
ディレクター リサーチ・アンド・コンサルティング部長 金子哲也氏
10月16日 13時~13時50分 D会場
2020年に向け大規模供給続く 今後の不動産市況や如何に
東京オリンピックに向けた開発の反動により、景気の腰折れを懸念する声があります。一方で、オリンピックは通過点に過ぎず、その後の成長の布石を踏まえると緩やかな成長が続く可能性も十分にあると言えます。
機関投資家による不動産投資市場は活況を呈しています。世界中の年金受給者の増加に対応した巨額の資産運用、各国の中央銀行によって供給された過剰流動性が利回りを求め、世界中に資本が溢れかえっています。そのなかで日本は、主要国の中で政治と経済が安定している国で、低金利での借入れも可能な魅力的な市場となっています。また、現政権もあと3年続くであろうと見込まれ、新たな政策期待もあり、一定の期待感が醸成されています。日本のGDPも過去10四半期で1四半期を除いて成長を続けており、インフレとは行かないまでも、デフレからは脱却したといえる状況です。
また、日本は世界の成長の中心地であるアジアに立地しており、アジアのみならず、世界中から投資資金を引き付けています。日本以外の主要中央銀行が引締めに動いていることはトルコショックのように、資本の逆流を意味し、不安材料ではあります。ただ、景気に敏感な中央銀行も拙速な引締めは困難ですし、新興国から安定した先進国への資金の逆流は日本への資金流入の安定化に寄与する側面もあります。
日本全体の人口は減少しますが、首都圏人口は当面増加する見込みです。人口減少社会の日本が成長著しいアジア主要都市との競うには、全面展開は出来ず、東京を中心とした大都市に資源を集約すべきでしょう。東京の繁栄が終わる時は日本の繁栄が終わる時となってしまいかねません。アジアの主要都市の成長と比較すれば、東京一極集中と揶揄される東京への集中投資さえ、東京が辛うじて国際競争力を維持できる水準程度というのが実情でしょう。
日本の不動産取引に外国人の占める割合は着実に増資しています。日本は借入金利が低く、3%近い純利回りがあり、その安定感に魅力があります。オフィス賃料を見ると、まだ金融危機時の7割程度と一段の上昇可能性もありえます。手堅い利回りを狙う海外投資家にとって、日本市場は魅力的なのです。
オリンピックに向けて交通インフラの拡充は進んでいます。例えば、虎ノ門は新地下鉄駅や都心と湾岸部を結ぶバスターミナルの拡充と、競争力を一変させる開発が続きます。 オリンピックにより訪日観光客数の基盤は増加し、オリンピック後も、例えばカジノが巨額の経済効果をもたらすでしょう。リニア新幹線が2027年に開通すれば、名古屋まで40分と通勤圏になります。更に大阪まで開通すれば6500万人の巨大人口圏が通勤圏になり、巨大都市群の魅力は維持されうるでしょう。
大都市圏以外は人口減少を克服する産業育成が必要となりますが、関西では、大阪のオフィス賃料や訪日観光客数が非常に伸びています。関空の稼働率を考えると、大阪圏の成長余力は高いでしょう。
もちろん、金利上昇に加えて米中の対立激化、欧州の混乱、新興国の経済不安等多くのリスク要因があります。日本では、消費増税、長期間に及んだ好景気の腰折れ懸念も考えられます。一方で、前述の成長に向けた施策もあり、緩やかな成長を続ける可能性も十分にあるのです。
講演では2020年に向け大規模な供給が続くオフィスの最新動向も合わせて、不動産市況の動向についてお話をさせて頂く予定です。