不動産トピックス

クローズアップ 建物修繕編

2018.11.12 16:06

収益を生み出してくれる賃貸ビルや賃貸マンション。オーナーにとっては一日でも長く稼働してもらいたいと考えるもの。そのためには計画的な修繕を適切に行うのが不可欠である。大規模修繕には多額のコストを必要とするだけに、入念な準備と調査が求められるのだ。

「分散修繕」で100年経営を目指す 既存ビル・マンションオーナー向け無料セミナー開催
 ビルオ(東京都渋谷区)は今月19日、築30年以上の中小ビル・マンション所有者を対象とした無料セミナー「分散修繕で築50年の壁を乗り越える」を開催する。
 ビルやマンションは建築から50年程度が経過すると、躯体に問題が見られなかったとしても、電気や給排水など建物の稼働に欠かすことのできないインフラ設備の老朽化が顕著となる。しかし、これらの設備を同時期にまとめて改修するためにはコストが高額となってしまい、現実的な施策とは言い難い。ビルオの代表取締役を務める江本真弓氏は、元不動産アセットマネージャとして豊富な設備工事の経験を有するのみならず、ロンドン大学キングスカレッジの物理科を卒業し、欧州で既存建物における設備工事の現場を20年以上にわたり見てきたエキスパート。同社では「ビル・マンションは、丈夫な躯体を生かし、建物設備の延命更新を繰り返し、時代に合わせた機能を提供しながら、長く使うもの」という欧米式の考え方を取り入れ、無理のないインフラ設備等延命更新取り組み方法として、「分散修繕」を提唱している。
 今回の無料セミナーは10月23日、11月6日に続き3回目の開催となる。「建物インフラ設備の延命更新とは」、「無理のない30年分散修繕の計画」の2部構成となっており、希望者にはセミナー終了後に個別相談も受け付ける。江本氏は「過去2回の開催を通じて、参加者からは『設備の重要度』、『修繕と延命更新の区分』、『業者の選択についての要件』などで参考になったとのご意見を頂きました」と述べる。
 今月19日に予定されている無料セミナーの開始時間は13時30分、会場は渋谷区渋谷の「TOC第2ビル」となっている。また第4回目は、12月5日15時30分から開催する。なお参加申し込みは同社ホームページから。

野村不G マンション大規模修繕の長周期化を推進
 野村不動産(東京都新宿区)と野村不動産パートナーズ(東京都新宿区)は、分譲マンションにおける大規模修繕の長周期化への取り組みとして「アトラクティブ30」を導入する。
 「アトラクティブ30」とは、新築時の高耐久部材・工法の採用と、野村不動産パートナーズが手掛ける大規模修繕工事「リ・プレミアム」を組み合わせ、大規模修繕の長周期化を実現。30年間で提示している長期修繕計画以降も含め、長期間の負担を減らすことで魅力的な建物を維持し、「後(アト)」の負担が「楽(ラク)」になり「アクティブ」な生活を楽しむことを目指すことから命名された。具体的には、外壁タイルへの「有機系接着剤張り工法」の採用、塗装材及びシール材への耐久性に優れた材料の採用、屋上防水での15年保証の仕様採用など。「アトラクティブ30」は横浜市都筑区の「プラウド港北センター北」、千葉県市川市の「プラウド市川マークス」で導入が開始され、順次ほかの物件でも導入を進めるとしている。

ザイマックス不動産総合研究所 「ビルオーナー実態調査2018」の調査結果発表
   ザイマックス不動産総合研究所(東京都港区)は先月25日、「ビルオーナー実態調査2018」の調査結果を発表した。これは早稲田大学建築学科の小松幸夫研究室と共同で実施し、中小規模のビルを所有するオーナーに対してアンケートとヒアリングによって調査を行ったもの。大阪市を除く全国の政令指定都市が対象で、有効回答数は561社にのぼった。
 これによると、賃貸ビル事業における重視項目として「テナントの要望への対応」、「ビルの改修やリニューアル」、「省エネ対策」などが挙げられ、実際にこれらの対策を実施したオーナーの割合も多いことが分かった。しかし、「中長期の修繕計画の作成」や「法改正に伴う既存不適格の改修」、「耐震対策」に関しては重視する向きが強いものの、実際に何らかの対応を行っているオーナーの割合が低いという結果であった。
 今後の賃貸ビル事業における不安について「築古に伴う修繕費の増加」、「空室の増加」、「賃料の下落」といった収入・支出に関する項目が上位を占めており、中長期的な修繕の必要性を感じながらも必要な対策を講じることが困難な状況にあるオーナーが多いことが、調査結果から推測される。

スマホで工事の情報共有を簡単に エム・ソフトがAR活用したアプリ開発
 エム・ソフト(東京都台東区)は、スマートフォンを活用するARソリューション「空間メモアプリ STag(スタッグ)」を開発した。
 同製品は、空間上のどこにでもAR(拡張現実)でメモを残すことができ、場所に応じた情報共有を簡単に行うことができる。スマートフォンの画面を通じて空間に付箋を貼り付けるような操作を行い、共有した情報を位置とひもづけて保存できるというのが特徴だ。建物の点検作業などであれば、点検個所に直接メモを残すことができ、点検の漏れやミスを防ぎ、知識を持ったベテランの作業員が持つノウハウを知識の浅い作業員も共有することができる。
 メモを受け取る側のユーザーは同製品のアプリを通じて空間に貼り付けられたタグを確認できるが、タグには光が舞うような描画エフェクトが採用されており、見落としによるミスが発生しにくいのも特徴となっている。




週刊不動産経営編集部  YouTube