不動産トピックス
第20回不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現
2018.11.19 16:43
「事故物件」とは厄介なものだ。孤独死や殺人事件などの「事故」が生じると、順風満帆と思われていた満室稼働の物件がある日突然、テナントが次々と退去し借り手が現れない状況にもなりかねない。売りたくても買い手がいない。また、購入した物件が実は過去に「事故」があったと知った場合にはどうすべきか。10月16日のセミナーでは事故物件の見分け方と対処法が実際の案件と共に紹介された。
「事故物件」の見分け方と対処法は密接にかぶっており、表裏一体です。一般に「いわくつき物件」、「わけあり物件」と呼ばれているものは専門用語で「瑕疵物件」といいますが、そのうちの1つに「心理的瑕疵物件」があります。
「精神的瑕疵物件」とも言われているのですが心理的に何となく嫌悪感を抱いてしまうというものです。「事故物件」というのは心理的瑕疵物件のごく一部にすぎません。この「心理的瑕疵物件」というのは、同じマンションの別の一室に暴力団の事務所があるなどです。人が亡くなったわけではないので「事故物件」ではなく、「心理的瑕疵物件」ということになります。
窓を開けたらお墓が見える物件、カルト宗教団体の拠点も「心理的瑕疵物件」と呼ばれますが「事故物件」ではありません。注意していただきたいのは、重要なことは「転売しようとした時に買い叩かれてしまうのかどうか」と言う点です。ご自身がどう思うかではなく、一般にどう思われているかと言う事であって心理的に欠陥がある物件は避けた方が良いということです。
「事故物件」とは、「人が死んだ土地、建物」、具体的には殺人事件現場、自殺、火事、孤独死などです。殺人事件、殺しの物件に関しては人が死んでいるわけですし、心理的に嫌悪感を抱かれます。傷害致死も同様です。火事については、人が亡くなっているものに限ります。放火魔は燃えているのを見てストレスを解消しますが必ずしも人が亡くなるわけではない。放火魔がうろついているエリアは嫌でしょうけれども事故物件ではありません。他方で出火、放火でもなく、焼身自殺でもなく、ついつい料理をしているとき火を消し忘れたとか、寝タバコでそのまま寝てしまったというようなときに、1㎡燃えただけで人が死んでしまいます。1㎡の火事は大したことないと思っても当然消防車もたくさん来ますし、人が亡くなるということもあるのでまったくバカにできません。
ただ、重要なことは火事で建替えた物件はどうなるのかというと、「もう建替えたんだから今建物は事故物件ではない」という主張もありますが、当然土地に瑕疵が残る。前にこの土地に建っていた建物で火事が起きて人が亡くなった。今は新築の物件があるということであってもやはりその土地が事故物件で心理的瑕疵も抱かれるので「訳あり」となるわけです。むしろ建替えたと言う事が大きな事件、事故の証であると言う事がたくさんあります。ちょっとした火事ならリフォームで済ませるけれども、何人か亡くなってしまったら建て替えざる負えないということです。建替えたからもうOKということではなくて、建替えたのは酷い事件の証拠と考えてほしい。
そして孤独死ですが、重要なことは、転売するときに買い手がこの事実を知って値下げを要求してくるか、そもそも手を引くかとそういう観点です。前の三者となんら変わるところはない。孤独死のあった物件を大したことはないとは言えません。私の実感としては殺人事件現場より、孤独死の現場の方が酷いです。孤独死というのは、必ずしも病死とは同じではない。ただお年寄りが一人で暮らしていて病気でなくなったと連想させるわけですよね。病気だったと言うケースは確かに多い。なぜ別の言葉を使うかというと、亡くなって発見されるまであまりに長い時間を要してしまうと、病死と断定もできないので、「孤独死」、「孤立死」という言い方をする。グロテスクな状況になっていて、特殊清掃の費用も掛かる。先程申し上げた心理的瑕疵にとどまらず、物理的にも大変な疵を物件に与えてしまう。こういったものが事故物件です。
最近「セルフネグレクト」というものが大変問題になっております。中高年の男性に非常に多いんですけども、リストラされて会社クビになって奥さんにも離婚されてしまって、やむをえず一人暮らしを再び始めることになる。それで毎日昼間から酒を浴びるように飲みんで、体の調子が悪いわけですけども、病院に行く時間はあるのにお金はない、面倒くさい、俺なんて生きていてもしょうがないと絶望して最後は死んでしまう。そうすると医者がみると病死だと診断する。はたしてそれを病死と言い切っていいのかというのがあります。私は病死だから事故物件じゃないとか自殺だから事故物件だとかいう区分けはせずに全部「事故物件」としています。
次に、具体的にどういう見極め方と対処法があるのか。木造アパートであれば火事があったら亡くなったのは1人、火元の部屋は1室であっても結局アパート全体が燃えてしまい、取り壊し建替えとなる場合が多い。鉄筋コンクリートの物件の場合、この部屋だけをリフォームすればいいということになるわけですが、なるべくリフォームの費用を抑えたい。関係ないところは直したくないのがオーナーさんのお気持ちでしょうから、どうするかというと1室だけを変える。どうしても色が違ってしまう。中古で一部だけリフォームしている投資マンションが一棟出ていたら怪しいということになるわけです。絶対もに事故物件と言う事ではなく、あくまでも可能性があるということです。
一部分だけリフォームするというのは2つの意味がありまして、1つは複数の部屋がある中の1室と言う意味。もう一つは例えば、何号室の中で台所やトイレはボロボロなのに、寝室だけあるいはその中のクローゼットだけが新品に取り換えられている、というようなことがあるとそこで首つり自殺があって汚れちゃったからそこだけ変えて、他も取り換えるとお金もかかるからということがあり得ます。
ただ、これは特に批判されることではないと思っています。お金をかけて次の入居者が快適に過ごせるようにとオーナーさんが費用を負担してリフォームしているわけですから、「手口」と言うほど悪い話とは思いません。見分け方としては、色が変わっている、名前が変わっているということです。
対処法としては、お隣さんは永久に覚えてますけど、ちょっと遠くに住んでいる人は「確かこの辺にピンク色のビルあったよね」程度しか覚えていないので、色を塗り替えると効果できめん、名前も変えてしまうと検索したときに引掛かりにくくなってしまいます。特に名前だけ変えるのは郵便物を配る関係で入居者にちょっと迷惑をかけてしまうんですけども、外観・外壁を塗り替えるのと比べてお金がかからないわけですから、ただプレートを掛け替えているだけで誤魔化したいだけだなというふうに考えられます。
ただ、単純に誤魔化したいだけではなく実際、倒産して身売りして手放して事件のせいで大家であることを辞めざる負えなくなってしまった。それで新オーナーの下、心機一転名前も変わるのは当たり前ですから、それは誤魔化したいわけではなく一旦経営母体が変わっちゃった、それに伴う当たり前の名称変更と言う事になるので必ずしも誤魔化しているということではありません。いずれにしても見抜き方にはなりますし、対処法でもあるということです。
次のケースです。マンションの一室で人が亡くなってしまった。「何も事件なんてなかったよ」と誤魔化すことも理屈の上ではありますけど、業法違反にもなりますし、大家は訴えられたら負けてしまいます。どうすればいいかというと、物置にしている。マンションの一室が貸し倉庫みたいになっているわけです。 これは告知義務がなくなります。セミナールームにするとか、他にもゴルフウェアとかスキーウェアとかを置く倉庫にして、月数千円しか賃料は入らない、でも1人しか貸すわけではなくて、小分けに貸すわけですから全体では前の家賃と同じくらい得られるのかなと思います。こういう部屋が一室にあれば怪しいと言う事にもなりますし、同時に物置にすることで告知義務を免れる方法があると言う事になります。
「そんなの家賃を下げれば誰かしら入るじゃないか」と思われるでしょうけども、やはり安直に家賃を下げるのは入居者の質の低下をもたらして、そして酷い場合にはまた事件が起きてしまうということが考えられるので、私はおすすめしません。
最後の物件ですが、ある殺人事件現場。血の付いたところを拭いたり、少しフローリングを工事すれば使える一戸建てだったのですが、壊していました。気持ち悪いというよりは壊すことで記憶から消したいと言う事なのだと思います。ただ、ここで殺しがあった事は事実ですから、土地が事故物件であることは変わりません。それでもその家自体は「ない」と言えるということで壊したんだと思います。更に時間が経ってコインパーキングになってました。コインパーキングにすることで告知義務がなくなります。短時間だけ車を止める人はそんなこと気にしない、というのが裁判所の考え方です。
逆に、対処法であると同時に「見抜き方」で、住宅街の中に突然新しい時間貸し駐車場が出来ていたら、実はそこが事故物件だからだというケースが実際かなりあります。
その後、更に大分経ってから同じ現場に行きました。そうしたら家を建て替えているわけですから、新しい家は事故物件じゃないと言いはりたいでしょうし、仮に正直にここで昔人が亡くなったんですと買う方に正直に言っても気にしない人は結構いると思います。 元の血だらけの家はもうない。それだけではなく期間も何年もかなり経過している。そして「新築なのだからもういいのではないか」ということ。期間をある程度寝かせておく、そして建替えると言うのが対処法であるということになります。
どうしてたくさん実例がある中でこれを選んだかと言うと、これはミニ戸建てです。真相はわかりませんが、単純に余りに値が張ると買い手がつかないから小分けにしたということはいくらでもあるのですが、正真正銘の「非事故物件」と言える小分けに敷地を分割することによって、人が殺されていた場所ではないと言える。ですから売る時も、「別に人が死んでいた土地じゃありませんよ」と胸を張って言える。
良心の呵責を感じることなく嘘をつかずに済ます方法として小分けにするということがあるわけです。対処法でもあります。不自然に敷地分割されていていたら怪しまれますが一つの対処法です。