不動産トピックス

クローズアップ 不動産IoT編

2018.11.19 16:02

 不動産業界内でIoT化が進む。住宅向けが主力ではあるが、その一方でオフィス向けのサービス展開も着々と進む。また最近になって、本場・米国の製品サービスを日本に輸入して、展開する方式も見られる。「黒船」は業界を変えるか。

アクセルラボ「alyssa.play」で消費者向け展開 オフィス・店舗向けの新規事業も
 不動産デベロッパーのインヴァランス(東京都渋谷区)の子会社であるアクセルラボ(東京都渋谷区)は先月15日より、2つの新サービスを開始した。
 ひとつはコンシューマー向けIoT製品事業「alyssa.play」の開始だ。これまでスマートホーム機能を備えた不動産総合サポートアプリ「alyssa.」やスマートホームAI「CASPAR」を展開。2018年6月からは不動産会社・管理会社向けに「alyssa.cloud」としてOEM提供を行ってきた。
 今回、「alyssa.play」として初めて消費者向けに販売する。その舞台として選んだのはクラウドファンディングサイト「Makuake」だ。取締役COO兼CPOの新貝文将氏は「将来的には量販店なども視野にいれているが、まずは個数を限定して出すことでテストマーケティングを行いたいと考えた」と話す。
 ペースは順調だ。目標金額200万円だったのに対して、11月14日現在で358万2600円、すでに達成済み。残り76日間あるため、更なる上積みを図っていく。
 「結果が出てくる来春以降、さらに検討を重ねて、よりよい製品に仕上げていきたい」(新貝氏)
「Alarm.com」を日本へ 管理・運営を効率化
 一方、オフィス・店舗向けの事業展開も図っていく。その皮切りとなるのが店舗・中小規模オフィス管理プラットフォーム「Alarm.com」だ。
 米国ナスダック上場のALARM.COM社(米国バージニア州)が展開するプラットフォーム。スマートロックやセキュリティカメラ、空調などのIoT製品をつなぎ、遠隔での管理・運用を可能にする。
 「製品・機能の運用はもちろんのこと、空間の状況の把握や空調、エネルギーマネジメント、入退室の管理が可能です。米国ではホームセキュリティとしても導入されていて、世界各国累計で600万世帯に導入されています。当社ではこれをまず、店舗やオフィス向けに展開していきたいと考えています」(新貝氏)
 実際に店舗運営などで大きく貢献しそうだ。「チェーン店ではエリアマネージャーが多くの店舗を見て回っているが、『Alarm.com』があればタブレットひとつで店舗の状況を確認することができます。お客さんの入り具合などをワンタッチで確認できることで、より効率的な仕事につながっていくのではないでしょうか」と話す。
 このような複合的なプラットフォームはこれまで皆無だったために、米国内でも需要は強い。新貝氏は「今後は当社が先頭に立って日本での需要を開拓していきたい」と意気込む。

大崎電気工業/センスウェイ 共同プロジェクト推進
 大崎電気工業(東京都品川区)とセンスウェイ(東京都中央区)は、今月8日に開設した「NEXT100teXLab(ネクストヒャクテックスラボ)」において、「LPWAに対応した次世代スマートメーター活用プラットフォームの共同開発プロジェクト」を始動する。
 IoT市場は今後もますます活発化するとみられ、IoTデバイスから取得できるデータの価値も更に高まると考えられる。現在、建物に設置されている市販領域の電力量計は、今後室内のデータ収集・蓄積・遠隔制御を可能とするゲートウェイとして活用することで、業務効率化や様々な付加価値サービスの実現が期待されている。
 今回2社が推進するプロジェクトは、スマートメーターにオフィス空間・居住空間の周辺環境で活用可能なアプリケーションの提供およびデータの取得ができる機能を搭載するとともに、センスウェイが持つ技術を活用し様々なセンサーによるデータの通信を可能にすることにより、これまで取得困難であったデータの取得を実現する。同プロジェクトは、本年9月に三井不動産(東京都中央区)の協力のもと開始された東京・日本橋での高層ビルにおける「IoT向け無線通信技術を活用したスマートメーター設置」の実証実験をもとに、AIを搭載したスマートメーターリングシステムの更なる可能性を追求し、発展させたものである。

東急住宅リース IoT機器同士を連携 遠隔操作等が可能に
 東急住宅リース(東京都新宿区)はマウスコンピューター(東京都中央区)と提携し、同社が管理する約8万9000戸の賃貸住宅の入居者に「mouseスマートホーム」製品の紹介及び提供を先月から開始した。
 「mouseスマートホーム」は、スマートフォンにアプリをインストールし、IoT機器同士を連携させる「ルームハブ」を室内に設置することで、このルームハブと「mouseスマートホーム」製品機器や手持ちの家電が連携。アプリによるエアコン・テレビの遠隔操作やスマートLEDライトの点灯・消灯、ドアセンサーによるドアや窓の閉め忘れの感知と通知、モーションセンサーによる人や動物の動きの感知と通知などが可能になる。全ての機器において取付工事が不要なため、賃貸住宅においても安心して設置することができる。
 同社が管理する賃貸住宅のうち、約7割が東京都に所在していることや40㎡未満のシングルタイプの部屋が全体の約5割を占めていることから、単身世帯の入居者が都会でより便利で快適な生活を送るためのサポートを検討し、「mouseスマートホーム」の提供に至った。

JLL 不動産テック企業を買収
 総合不動産サービス大手のJLL(本社・米国シカゴ)は、米国とインドでIBM社製のソフトウェアの統合とコンサルティングサービスを提供しているValuD Consulting(本社・米国テキサス州)の買収を発表した。この買収により、同社は次世代の革新的なテクノロジーの強化を図り、より充実したサービスの提供を目指す。
 今回の買収は、JLLが推進する不動産テック及びデジタル変革への取り組みの一つ。ValuD社が独自に大学と提携し、そこで研修を受けた専門家300名を「JLLテクノロジーソリューションチーム」に迎えることで、より迅速かつ十分な情報に基づく不動産取引の決定や、ビジネスパフォーマンスを改善させる最先端のテクノロジーシステムを顧客に提供することが可能になる。




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