不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2018.12.03 16:53
TKPが本社に「キャビンホテル」併設 貸会議室利用との相乗効果を見込む
「ファーストキャビンTKP市ヶ谷」11月15日に
ティーケーピー(TKP、東京都新宿区)は11月15日、同社本社ビルにコンパクトホテル「ファーストキャビンTKP市ヶ谷」を開業させた。
同施設はファーストキャビン(東京都千代田区)との提携により、TKPが空間再生流通事業の一環として、TKP市ヶ谷本社ビルの本館と別館のうち、執務スペースや会議スペースとして活用していなかった不稼働スペース1767㎡をホテルへとコンバージョンしたもの。
飛行機のファーストクラスをイメージした全165室のキャビンスタイルホテル。従来のファーストクラス15キャビン、ビジネスクラスキャビン44キャビンに加え、2段式のエコノミークラスキャビン106キャビンを導入した。
大浴場のほか、ワーキングスペースとしても利用可能なWi|Fiやドリンクを用意したロビーラウンジも備えており、ビジネス利用に便利な環境を提供しているのが特徴。
またこの施設には「体重を押し返す力が強いため、身動き・睡眠時の寝返りが楽に、「優れた体圧分散で、体に負担がかからない」、「通気性抜群で、夏は蒸れにくく冬は暖かい」といった特徴を持つ「エアウィーヴ」のマットレスをファーストキャビンで初めて採用、ビジネスパーソンの良質な睡眠をサポートしていく。
「今回、当社が本社ビルにコンパクトホテルを開業させた狙いは、働き方改革に伴う従業員向け福利厚生施設として、都心部での宿泊研修として、個人向け宿泊として、といった3つです」
TKPの河野貴輝社長はこう話す。
福利厚生施設としての活用は、社員の生産性向上を目的とするもので、従業員の健康や時間の効率化をサポートするための朝食の無償提供や昼食の提供、客室・シャワーブース・大浴場を使えるようにするなど。「まずは自社で『働き方改革』の実験的な新しい取り組みを行います」(河野社長)。
残業ありきの働き方を見直すにあたり、朝食の無償提供することで朝型勤務を推進し、また日中の思い切った仮眠を促進することで作業効率の向上を目指していく。今後は近隣の企業に対しても同様の福利厚生サービスとして提供していく予定だ。
同施設のあるTKP市ヶ谷本社ビルは、「TKP市ヶ谷カンファレンスセンター」として全53室・4845席・1948坪の会議室があり、通年で高い稼働を維持している。同社はこれまでも利用企業に向けて「10回に1回は泊り込み研修を」と提唱をしており、会議や研修の利用とあわせ出張などを伴う事務局・参加者の宿泊需要に応えていく。
「宿泊施設を館内に併設することで、従来からあった会議室を24時間いつでも稼働させることが可能になります」(河野社長)
ワーキングスペース・コミュニケーションスペースとしても利用できるロビーラウンジも併設する。
また、今回新設された厨房はキッチンのサテライト化第1号店になる。これにより宿泊客の朝食のみならず、会議利用者にも温かい料理を提供し顧客満足の向上を図る。
もちろん同施設は、JR総武線、東京メトロ・有楽町線、南北線、都営地下鉄・新宿線の4路線が乗り入れる「市ヶ谷」駅に近く、「東京」駅から15分、「新宿」駅から10分、と交通至便な立地にあることから、ビジネスパーソンをはじめ一般の国内旅行者やインバウンドの宿泊用途も見込む。同時に遠隔地からの東京ドームのコンサート客や、ランニングをする方のランニングステーションなど様々な宿泊・休憩用途を取り込んでいきたいという。
同社はファーストキャビンとの協業とともに、ホテル事業としてはアパホテルのフランチャイジーとして、10月に開業した仙台はじめ、札幌、東京、川崎、大阪、福岡でもホテル運営・計画をすすめており、2020年には全10棟・2003室となる予定だ。
「変なホテル」首都圏での出店を加速
エイチ・アイ・エス(H.I.S. 東京都新宿区)のグループ会社であるH.I.S.ホテルホールディングス(H.H.H.、同本)では、「変なホテル」の出店を加速させる。
最新技術のロボットやシステムを活用することで、生産性を向上させた世界一のローコストホテル(LCH)の実現を目指す「変なホテル」は、2015年3月にハウステンボス(長崎県佐世保市)で1号棟をオープン、2017年3月には舞浜(千葉県浦安市)、同年8月にはラグーナテンボス(愛知県蒲郡市)と相次いで開業させた。
同年12月には、東京都江戸川区に客室数100室規模の「変なホテル東京西葛西」の開業を皮切りに、2018年2月には、98室規模の「変なホテル東京銀座」(東京都中央区)、4月には118室の「変なホテル東京浜松町」(東京都港区)、7月には、145室の「変なホテル東京浅草橋」(東京都台東区)を開業させた。
同社は、東京都内をはじめ、大阪、京都、福岡など日本各都市に、訪日旅行者を含むレジャー層をターゲットとした都市宿泊型ホテルを計10軒開業する計画だ。
都市部のホテルは、海外からの訪日旅行者を含むレジャー観光客層をコアターゲットとし、宿泊特化型に多い1名1室利用の客室比率を下げ、2名以上で1室利用が可能な客室を増やすことを特色としている。
また、訪日旅行者に利便性の高いhandy Japan社の「handy」やGoogle社の「Chromecast」、LGエレクトロニクス社の「49インチ液晶4Kテレビ」などを揃えるなど、最新の設備を導入。利用者数が多く見込まれるビジネス出張者向けにもLGエレクトロニクス社の「LGスタイラー」を導入することで、リピーターの獲得にも力を入れていく。従来のエンタテインメント性の高い「ロボット」に加え、先進的で機能的な設備を掛け合わせることで、今まで以上に進化したホテルを提供していく計画だ。
訪日旅行者の予約チャネルとは、オンラインからの予約だけではなく、H.I.S.グループの海外拠点からの日本への送客力を活用し、H.I.S.グループ内のシナジー効果を最大限に高められるよう連携を強化する。
富士山麓に「Dot Hostel&Bar」オープン
ビックデータを活用した宿泊施設の開業支援・運営を手がけるVSbias(東京都港区)は、新しい価値観との出会い「meet new!」をコンセプトにした「Dot Hostel & Bar」を、2019年1月にオープンする。
同施設は、富士山の麓、 富士河口湖町に位置し、 同社の宿泊施設ブランド「Dot」の第一号施設となる。
近年、訪日外国人観光客の数が急増し、東京などの都心部だけでなく、地方都市にも足を運ぶ傾向が強まってきている。この施設がある山梨県でも「富士山」が世界文化遺産に登録された2013年頃から外国人観光客が年々増加している。
同社では外国人観光客はもちろん、友人・家族など複数人の旅行ニーズの増加を見込み、2017年12月に同エリアに10人で1棟貸切が可能な宿泊施設をテスト的にオープン。
同施設がある富士東部エリアでは、4人以上での宿泊比率が全体の5割程度と非常に高いことから、ビジネスホテル、リゾートホテルでは提供できない大人数部屋の需要を見込んでいた。現在では稼働率、収益共に当初予定していた数値をはるかに上回る結果となった。今後、受け入れる施設の設備や体制が利用者増加の鍵となり、このエリアの宿泊事業の可能性を高く感じているという。
そこで、同エリアでの需要に合わせ、コンセプト、レイアウト、デザイン、インテリア、細部のコンテンツに至るまで、同社のデータ分析、運営で培ったノウハウを基に自社で企画を行い、この度ホテルを開業することとなったもの。
同社はメタップスのグループ会社で、「テクノロジーによる空間価値の最大化」というミッションを掲げ、テクノロジーの力を駆使し空間資産を運用する顧客と空間を利用する顧客をサポートする。
札幌プリンスホテル客室改修
札幌プリンスホテル(北海道札幌市)は、今後さらに増加が見込まれる訪日外国人や国内外のMICE需要に合わせ、5~12階8フロア252室の客室をリニューアルする。
今回は、フロアごとにターゲットを明確にし、多様化する利用客のニーズへの対応を強化していく。5~12階の客室は、個人旅行化が進む東南アジア圏を中心とした訪日外国人グループやファミリー層、またスポーツイベントなど団体の利用を見据え、トランドルベッドを導入し、3名で利用できるトリプル対応客室を48室新設する。デザインには、北海道の銀杏並木をモチーフにしたイエローをキーカラーにし、木のぬくもりを感じる親しみやすい空間を演出していくという。
国内有数の観光都市、北海道の中心である札幌市に位置する札幌プリンスホテルは、中心部にありながら四季折々の季節が感じられる大通公園の至近にあり、都会でありながらリゾート気分を味わえるシティホテル。今後、北海道では7空港の民営化や北海道新幹線の延伸などインフラの整備が進むとともに、札幌を中心にMICE受入れの新施設整備や国際的なスポーツイベント誘致など、街のさらなる発展が見込まれる。
京急が簡宿を開始
京浜急行電鉄(東京都港区)は京急線「日ノ出町」駅と「黄金町」駅間の高架下に、タイニーハウス(トレーラーハウス)による宿泊施設やカフェラウンジなどの複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho(タイニーズ横浜日ノ出町)」を開業した。
高架下の敷地にトレーラーを配置。3棟の宿泊施設「タイニーズホステル」と、カフェラウンジ「タイニーズリビングハブ」、大岡川の水上アクティビティー拠点「パドラーズプラス」を設けた。