不動産トピックス
ホテル運営会社次の一手を探る
2019.03.25 14:14
広がる「簡易宿泊所」マーケットに着目 専用管理システムで業務効率化促す
この2年間でおよそ10%ずつ増加している、カプセルホテルやホステルなどの「簡易宿泊所」。老朽ビルのコンバージョンとして、従来の運営会社はもちろん、異業種からの参入も多い。このため、専用のシステムも次々と登場してきた。業務の効率化を支援し、伸び盛りのマーケットを後押ししていこうというのだ。
USEN-NEXTグループ ベンチャー企業と協業
USEN-NEXTグループで、ホテル向けシステムを提供しているアルメックス(東京都港区)は、and factory(東京都目黒区)と共同で、民泊・簡易宿所事業者向けの宿泊管理システム「innto(イントゥ)」を提案している。
同システムはUI・操作性はもちろん、使用場所を選ばない完全クラウド仕様にしているのが特徴。ウェブ上で住所・アドレス・名前・クレジットカード情報を入れればすぐにダウンロードできる。スマホやタブレットでも操作が可能で、運営者は自宅などどこでも管理画面を開くことができる。小規模な事業者でも導入しやすい価格を設定した。
主な機能は「予約管理機能」「スケジュール機能」「インジケータ機能」「ゲスト管理機能」「帳票/レポート機能」「プラン/料金設定」「マスタ設定」など。
わかりやすいUIと直感的で使いやすい画面設計が特徴。特別な教育やトレーニングをしなくてもすぐに簡単に使うことができるだけでなく、クラウド型のため、外出先でも家でもインターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる。
故障や障害、使い方が分からない場合は、サポートセンターにて24時間365日問い合わせを受け付けるなど、同社のネットワークを使ってサポートしていくという。
全てウェブ上で完結 スマホ・タブレットで
国内宿泊市場は、訪日観光客の急増に伴う宿泊施設の供給不足を背景に、カプセルホテルやホステルなどの簡易宿所や民泊が注目を集めている。実際、簡易宿所は、3万軒以上にも上るなど無視できない市場になってきている。
こうした事業者は、運営スタッフの確保や煩雑なネット予約への対応を含む運営業務全般の効率化実現など、課題も多い。現在、ホテルでは当たり前のように入っているPMSも既存のシステムは「導入費用が高い」「UIが使いづらい」などの理由で半数以上が未導入であるといわれている。
こうした背景から、アルメックスは民泊・簡易宿所を有望市場と捉え、事業者が抱える、課題の解決を図るべく開発を進めたもの。
一方、全国で700以上の施設で基幹システムを提供しているタップ(東京都江東区)が開発した小規模施設向け宿泊管理システム「accommod(アコモド)」。
同システムもWi-Fi環境があれば利用可能なもので、ホテルはもちろん、旅館、民宿、ペンション、ゲストハウス、民泊まで30室以下、客室単価で1万円以下の施設を対象としている。もちろん、民泊新法合わせた民泊施設にも利用可能だ。現在、旅館業法に基づく施設は約8万軒あるといわれている。内訳はホテルが1万軒、旅館4万軒という計算だ。同社によれば、新システムは残り3万施設がターゲットになるという。
100%ウェブシステムのため、インターネット環境があれば、「部屋の使用状況」「清掃状況」といった日常業務や売り上げ管理・顧客管理がPCやタブレットで行うことができる。チェックイン時では、タブレット内にサインしてもらうだけで宿泊台帳として利用できるほか、チェックアウト時にはプリンターからレシートを発行することで会計をスムースに行うことも可能だ。
また、自社ホームページで直接宿泊プランを販売することもできる。受け付けた予約を転記する必要みなく、ミスを防ぐこともできるようになる。サイトコントローラー経由で宿泊予約も取り込めるため、予約管理にかかる手間を大幅に削減できるという。
予約を受ける際でも、24時間・365日いつでも宿泊予約ができるだけでなく、クレジットの事前決済にも対応するため、直前キャンセルやノーショウの抑制にも繋がる。英語・中国語・韓国語にも対応でき、インバウンド獲得にも効果を上げることも期待されている。
阪急阪神ホテルズ 新ブランドで大阪に
阪急阪神ホテルズ(大阪府大阪市)では、ヨドバシホールディングス(東京都新宿区)が開発する「(仮称)ヨドバシ梅田タワー」に出店する。新たに立ち上げる宿泊主体型ホテルブランド「Hotel Hankyu RESPIRE」の1号店で、「Hotel Hankyu RESPIRE OSAKA(ホテル阪急レスパイア大阪)」の名称に決定した。当初2020年初春の開業予定だったが、計画が順調に進捗していることから、2019年11月の開業を目指していく。
同ホテルは、客室数1032室(予定)で、ダブル414室、ツイン399室、トリプル171室、フォース48室。宴会場のほか、レストラン、フィットネスを併設する。
同ホテル客室内のデザインテーマは「OSAKA Japanese Style」。日本的な質感や大阪らしい空気感を表現する3つのカラースキーム「梅」「田園」「大阪城」の客室を用意する。また、チェックイン・チェックアウト時における一部の手続きを自動化することで、混雑時もストレスを感じることなくスムーズな手続きを行う。館内に無料Wi-Fiを完備するほか、「Alipay」や「WeChat Pay」、「新韓カード」なども利用できるようになる。ホテルのフロント・ロビーは9階に位置し、フロント前のロビーからは日本庭園が見渡すことも可能だ。
客室は19~60㎡と宿泊主体型ホテルとしては広めの客室を設定、特に全客室タイプを2名様以上で利用いでき、ビジネスはもちろんレジャーの拠点として、様々な利用者のニーズに応えるルームバリエーションを用意した。
新ブランドの「RESPIRE」という名称には、心身を癒す「rest」と、感性を刺激し活力をもたらす「inspire」の意味が込められている。また「RESPIRE」には「呼吸する」という意味もあり、「訪れたお客様がほっと一息つける癒しの場所であること、そして大きく息を吸い込むように明日へと旅立つ活力が得られる場所であること。RESPIREはそのような2つの価値を備えたホテルを目指しています」(同社)という。
同社が展開する宿泊主体型ホテルの中でも、主にビジネス客がターゲットとなる立地では、「remm(レム)」を、観光需要やインバウンド需要が見込まれる立地では「Hotel Hankyu RESPIRE」を展開していく計画だ。
JR東日本Gが2棟開業へ
首都圏を中心にホテルを展開する日本ホテル(東京都豊島区)は新たに、東京・秋葉原、新木場に新規開業を予定している。
10月開業の「JR東日本ホテルメッツ 秋葉原」は、JR「秋葉原」駅電気街南口より徒歩1分に位置し、敷地面積約1070㎡、延床面積約6600㎡、鉄骨造地上9階建て。客室は全室バス・トイレセパレートで、約17㎡のダブル153室、約21㎡のツイン43室の合計196室。
ビジネス・観光・訪日外国人などさまざまな人と文化が交差する街である秋葉原にふさわしく、人・時・空間・街が交わることで、そこにしかない価値が生まれるという「Cross Value HOTEL」をテーマにした。
デザインは、デジタル模様を取り入れるなど秋葉原らしさを体感でき、長期滞在でも快適に過ごせるよう工夫を凝らした。
一方、11月開業予定の「JR東日本ホテルメッツ 東京ベイ新木場」は、「新木場」駅より徒歩2分に位置、敷地面積約1981㎡、延床面積約6500㎡、鉄筋コンクリート造、地下1階地上10階建て。客室は約16㎡からのダブル101室、約25㎡からのツイン88室の合計189室(予定)。
同施設が位置する新木場駅は3路線が乗り入れ、台場や舞浜リゾートなどのベイエリアに好アクセスであり、家族やグループ旅行客向けに客室数の半分近くをツインタイプで用意した。特徴的な大小の出窓はデザイン性のみならず、ベンチやデスクとして利用できる実用性も兼ね備えた新しいスタイルの客室を提案する。
同ホテルブランドは、「飾らない上質」をテーマに、「不足なものも余分なものもなく、必要にして十分なものが高い品質で揃っている。心と体はストレスから解き放たれ、リセットされる」といった空間を提供することを重要視している。
「京都」駅前のカプセルホテル改装
大王興業(東京都墨田区)では、自社が運営管理するJR「京都」駅前の「スタイリッシュカプセルホテル、 Smart Stay SHIZUKU 京都駅前」のラウンジフロアをリニューアル、宿泊者以外にも様々なサービスの提供を開始する。
同施設は、2018年4月のオープン。JR「京都」駅徒歩4分に位置する。客室は男性フロア84室、女性フロア66室、大浴場、ラウンジ、レストラン、ランドリーを併設する。
今回のリニューアルでは、好評のマンガコーナーも3000冊以上に増設したほか、コミュニケーションエリアでは、宿泊以外でも、女子会・子供連れのママ友会・サークルの集まりなど、レンタルスペースとしての利用も可能にした。もちろん一人での利用もでき、ビジネス・学習など、コワーキングスペースとしての活用も期待している。
ラウンジ内のレストランでは、豊富なメニューをリーズナブルに提供。オーソドックスなメニューから一品料理、自家焙煎「玉木屋珈琲」の取扱いも開始した。
大江戸温泉が熊本に37店目
大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(東京都中央区)はこのほど、熊本県上天草市にある「亀屋ホテル華椿」を取得した。
同施設は、RC造・S造本館3階建て2159㎡・新館5階建て3055㎡・別館7階建て4606㎡、客室数は70室(定員数314名)。
同施設は「温泉と旅の楽しさをもっと気軽に何度でも」をコンセプトに全国に温泉宿・温浴施設を展開する大江戸温泉物語の37カ所目の施設となる。
今回の「亀屋ホテル華椿」を取得することによ、九州エリアでの施設は3施設になった。同社ではこれまで以上に地元地域および九州エリア全体、ひいては全国の利用客に一層喜ばれ、親しんでもらえる宿泊事業をさらに積極的に展開していきたいという。リニューアルオープンは2019年8月。