不動産トピックス

クローズアップ VR編

2019.12.09 14:19

 不動産の現場において活躍の機会が増えているVR(バーチャルリアルティ)。よく聞く事例が、VRを賃貸用の部屋の内覧に活用すること。部屋を探す人(側)は、遠隔地から好きな時間帯に入居先の内覧ができる。これを部屋の内覧だけでなく、社員教育や現場作業を遠隔地から把握することにも役立てられる。オフィス業界で普及する可能性も高い。

新入社員研修にVRを活用 早期習得とレベルアップの均質化
 住友林業(東京都千代田区)は先月27日、住宅の若手設計・生産(工事)担当者を対象に、VRを活用した研修の開始を発表した。グリー(東京都港区)と共同開発したVRを活用し、実際の建築現場で受講しているような体感を通じて業務プロセスの理解を図る。
 従来の設計・工事業務研修は実際の建築現場へ出向く実地研修を中心としていた。バス等で現地へ移動し、半日を要して合同での研修会を実施する。時間や手間が掛かり、参加人数も限られてしまう。実地研修を行うたびに事前の準備が社員への負担になるため、従前から研修内容の効率化が求められていた。今回のVRを活用した研修によって現場での実地研修等の効率化に加え、VR動画を活用することで、受講生一人ひとりが建築に必要な知識を素早く習得できることとなった。また理解の均質化や効率的な研修プログラムの展開、研修期間の短縮と実地研修のバランスが調整できたことによって、研修の更なる質向上を目指す取り組みにも挑戦できる環境が構築できた。
 主な研修内容は「建築計画研修」や「仮設計画研修」、「安全管理研修」、「建築施工現場研修」など。「建築計画」では建築計画の基本スキル習得を目標に、建築計画をたてる上での敷地解析(建築する敷地の特徴の把握から、建築現場の周辺環境、近隣状況を読み取る作業)の手法をVRで学ぶ。また「安全管理研修」は、安全管理の知識習得を目指し、建築作業中の現場(VR動画)から自発的に危険箇所を抽出し、その危険箇所から想定される災害内容を疑似体感する。安全基準の知識を習得し労働災害への理解を深める内容だ。
 住友林業の住宅・建築事業本部 人財開発部長の丸島敬氏は「今年9月に先行してVRを活用した社内研修を実施しました。今年度はまずトライアルで導入し、2020年4月以降の新入社員研修より住宅営業職や技術職を含めた住宅・建築事業本部の若手社員を対象に本格的に運用を開始します」と語る。
 またGREEの開発本部・XR事業開発部マネージャーの石田正浩氏は「教育・研修の分野においてVRは更に広まっていくと確信しております。まだスタートしたばかりですが、今後は業種を絞らず様々なフィールドで展開を図っていきたい」と語った。

VR連動も実現 「goodroom」への連動が可能に
 不動産業に特化した業務支援サービス「いえらぶCLOUD」を提供する「いえらぶGROUP(東京都新宿区)」は先月28日から、グッドデイズホールディング(東京都千代田区)の100%子会社であるグッドルーム(東京都渋谷区)が運営する賃貸ポータルサイト「goodroom」への物件連動サービスを開始した。「いえらぶCLOUD」に入力された物件は、ワンクリックで「goodroom」に連動可能となり、業務の効率化に貢献する。
 「いえらぶCLOUD」は、不動産会社の日常業務を支援するクラウドサービスで、全国1万2000社以上で利用されている。一方の「goodroom」は、大手管理会社を中心に現在約100社が物件を掲載。首都圏・関西圏・名古屋・福岡・広島・札幌の6エリアで、月間70万人のユーザーが利用している。
 今回の連動サービスにより、「いえらぶCLOUD」から「goodroom」へVRの連動も可能になった。「goodroom」では、VRを用いた物件紹介記事が掲載可能。VRの導入により問い合わせ率が1・5倍になったという効果も出ている。「いえらぶCLOUD」を利用する不動産会社からはVRの連動を希望する声が多く、そうした声を受けVRも含めた物件連動が実現した。

 サンワサプライ(岡山市北区)は、スマホをセットするだけで簡単にVR体験できる折りたたみ式VRゴーグル「MED―VRG5」を発売した。
 「MED―VRG5」は、スマートフォンを使って簡単にVRを体験できるVRゴーグル。同製品にスマートフォンをセットし、ゴーグルを頭に装着するだけ。YouTubeなどで公開されている全天球動画(360°ビデオ)や、3D映像対応の動画を楽しめる。また焦点距離と左右の瞳孔間距離を調節できるため、使う人が自分好みに合わせて使用可能。頭への装着も、調節可能なゴムバンドでしっかりとフィットできる。横幅13cmまでのメガネであればゴーグルを装着可能。ゴーグルのままイヤホンやヘッドホンも使用できるため、周囲を気にせず音楽も聴ける。
 ゴーグル本体は、レンズを中に収めながらコンパクトに折りたたむことができるので、持ち運びや収納も簡単。幅広い業界で、様々な利用ができそうだ。




週刊不動産経営編集部  YouTube