不動産トピックス
日本橋特集 街を彩る名店探訪 うぶけや
2020.01.06 11:46
人形町 刃物屋「うぶけや」 江戸創業の老舗「職商人」
東京メトロ「人形町」駅から徒歩2分にある「うぶけや」は、1783年に大阪で創業された老舗刃物屋だ。1800年代に「江戸支店」として日本橋堀留町に店を構え、その後同じ日本橋の人形町に移転し現在に至る。店主の矢崎豊氏は「人形町といえば一大歓楽街だった。明治から大正にかけての商人は『店を銀座に出すか人形町に出すか』迷う人が多かったと伝え聞いています」と語る。
「うぶけや」という名前は、「(ここの刃物は)うぶ毛も剃れる・切れる・抜ける」という客の褒め言葉からとった。現在は腕の良い職人に刃物製作を依頼し、「職商人」として刃物の研磨と販売を同店で行っている。店を構えた江戸は平和的で、食文化も大きく発展した。包丁の種類も増え、「お針(裁縫)」や「華道」といった習いごとや「盆栽」などの趣味が盛んになっていた。こういった背景があり、刃物の需要は高まっていった。
創業当時から現在まで家庭用の刃物を扱う同店。「包丁」「ハサミ」「毛抜き」の3種類は人気が高く、中でも毛抜きの販売数は多い。幾世代に渡り購入される世帯も多くいるのも老舗ならでは。「爪切りなど小さいものから始まり、毛抜き、包丁など様々な刃物に目を向けてくれるようになります」(矢崎氏)。
ネット通販を始めたのは、息子の影響だと言う。「私自身、はじめはネット通販に抵抗がありました。刃物は実際に来店して手に取ってこそピッタリの商品を見つけられるものだと考えていたためです。しかし、ネットだと材質や寸借など具体的な情報を載せられますし、より多くの方に店のことを知ってもらうことができると気付きました。今では日本全国からにとどまらず海外からも刃物を求める方が多く来店しています」(同氏)。
毛抜きは幅「6mm」「3mm」「2mm」「1・5mm」の4種類を扱う。3mmは化粧用として使い勝手がよく、女性の購入者が多いという。職人が一本一本手作りしたものを丁寧に研磨することにより、毛が滑りにくいのが特長だ。一般の市販のものと比べても使いやすさは折り紙付き。研磨は全て同店で行っているため、刃の修理も受ける。
日本橋に店を構えて230年。生まれ育った人形町について矢崎氏は「人々の距離感が心地良い場所」と魅力を語った。