不動産トピックス

クローズアップ 空間活用編

2020.01.20 14:02

 ビルや住居のスペースを利用した空間活用サービスは多くある。そのなかで昨今は「クリエイター」や「ベンチャー企業」など、入居者を限定することもしばしば。入居者を限定することで、特化したサービスや支援が展開できる。直近でもいくつかの企業が参入している。

空間から不動産までをクリエイト オーナー向けサービスをスタート
1年で2つの事業創出 「クリエイター」を軸に
 店舗設計やイベントのディスプレイ空間設計などを行うANCR(東京都渋谷区)。同社では昨年から不動産オーナー向けの事業として「RELAVEL」や「white_space」の展開を始めている。
 「RELABEL」は昨年7月にスタート。解体予定の建物をオーナーからマスターリースしてリノベーションし、クリエイターやアーティスト向けに期間限定で貸し出す事業だ。第1号を原宿で行い、現在第2号を渋谷区・神泉で行う。代表取締役CEOの福島颯人氏は「もともと当社で物件を探していたのがきっかけ」と話し次のように続ける。「そのような場所を探すなかで『若いクリエイターが集まれる場所がない』と思い、空き物件となっていた解体予定のビルを借りきってリノベーションを行いました」。
 一方「white_space」はシェア自転車を中核としたサービス。中長期滞在施設向けにシェア自転車を展開するプレイヤー1(東京都調布市)と業務提携を結ぶことでスタート。ビルやホテルなどのデッドスペースに自転車と地域情報などを配信するディスプレイ、さらにはクリエイターによるアート作品を設ける。「街めぐりの拠点」になるとともに、ギャラリーとして「目的地」としての役割も果たす。ターゲットとするのはインバウンドや地域住民、あるいは建物入居者と幅広い。
 その第1号として開設したのが「RELABEL Shinsen」。低利用のスペースを改装した。このスペースでは3組のパートナーとコラボし、車体アートワークやネオンアートを導入している。インバウンドの利用や、オフィスワーカーなども利用しているという。現在は「AIを組み込んでそれぞれの人にとってスポットをレコメンドするアプリを開発中です」という。
 使用する自転車は英国の有名自転車・バイクメーカー、ETTIndustries(本社:英国)の製品。英国では「ウーバーイーツ」配達員の9割が同社の自転車を使用しているという。ただ日本での展開はこれからだ。福島氏によると「日本国内には6台しかありません。それらは『white_space』やプレイヤー1のネルソン社長が所有しているものになります」という。
 2019年に2つの不動産オーナー向け事業を展開したANCR。今後は「white_space」の展開に注力していく。ビルや空き地、ホテルなどが候補となり、「民泊施設などにもアプローチしていきたい」とする。
 「まずは2020年に都内を中心として50拠点開設することを目標としています。その後は国内の主要都市への展開はもちろんですが、ネルソン氏は台湾やタイ、米国、英国などにもコネクションを持っています。これらの国々への展開も検討しています」(福島氏)
 このサービスはオーナーにとってもメリットがある。自転車が設置できるスペースがあれば可能で、利用に応じて利益を分配する。初期コストは施行デザイン費用や運用後の電気代などだ。
 人が集まる空間ができればテナントビルの価値向上にもつながる。

「OYO LIFE」で漫画家育成
 「OYO LIFE」を運営するOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(東京都千代田区)はクリエイターを支援するクリエイターエージェンシーのコルクとコラボレーションし、クリエイターの住環境を一新させ、創作活動を加速させるプロジェクト「コルク荘 with OYO LIFE」を開始する。
 このプロジェクトは新しい時代の「つくり方」、「届け方」、「作家のあり方」に挑戦していくコルクのインディペンデントなレーベル「コルクインディーズ」に所属する若手漫画家に「OYO LIFE」が住まいを提供し職場に近い住環境を移し、3カ月間漫画家同士の共同生活を通して創作活動を行う、漫画家育成プロジェクト。「ニュー・スマートライフ」をテーマに好きな時に好きな場所に住み、身軽に効率よく生活する新しい住まいの形を提案する「OYO LIFE」の特徴を生かす。
 今回のコラボでは若手漫画家の成長スピードを加速させるために漫画家を目指す人同士が共同生活を行い、互いに教え合い、刺激を与えながら創作活動を行う。参加する若手漫画家はプロジェクトの様子を週刊コンテンツとして発信し、3カ月間の創作活動を行う。




週刊不動産経営編集部  YouTube