不動産トピックス
日本橋特集 街を彩る名店探訪 てん茂
2020.01.27 12:07
本町 天麩羅「てん茂」 胡麻油で揚げる天麩羅が魅力
江戸通りから神田方向に一本入った通りに、ひっそりと「てん茂」は在る。1885(明治18)年、初代・奥田茂三郎(もさぶろう)が日本橋において屋台で創業し、1907年に現在地に店を構えた。今の建物は、関東大震災、戦災、近隣火災等による焼失後、1947年に建てられたもの。創業時より胡麻油で揚げた江戸前の天麩羅を守り続け、創業135年を迎えた今も伝統の味で親しまれている。創業以来変わらない昔ながらの胡麻油は、白胡麻を炒ってからしぼった油で、熱に強く酸化しにくい。胡麻の風味がしっかりとあって、油切れもいいから素材をひきたてる。春の白魚、フキノトウに始まり、鮎、キス、メゴチ、アナゴと、四季折々の素材を厳選。特に夏は鮑、秋は栗の渋皮揚げが好評の老舗である。
暖簾がかかる木戸をカラカラと開けると、4代目の奥田秀助氏がカウンターの中から会釈して迎えてくれた。トレードマークの蝶ネクタイがよく似合う。天婦羅のおいしさは折り紙つきなので、それ以外の魅力について尋ねてみた。「初めて訪れたお客様の多くが、こんなに静かだとは思わなかったとおっしゃいます。車の音もあまり気にならないので、日本家屋の風情が残る店内で寛いでいただけるのだと思います」と同氏。天婦羅の達人である同氏は、その静けさの中で天婦羅を揚げている音をよく聴く。温度や揚がり具合を「音」で見極めるからだ。一方の顧客は、その音が一瞬止んで、揚げたてが運ばれるのを待つ。
最近の日本橋についても訪ねると、「ここ数年、日本橋の再開発の影響もあって、街には若い人たちや海外からのお客様が増えました。メーンストリートにあるビルだけでなく、古くからあるお店にもその方たちが訪れてくれることで、街全体の活性化が進むといいですね」とのこと。日本橋料理飲食業組合および、その青年部として発足した「三四四(みよし)会」に所属し、「江戸野菜」を積極的に使うなど、新しいことにも挑戦しながら4代続く名店として日本橋を支えている。