不動産トピックス
日本橋特集 街を彩る名店探訪 伊勢重
2020.02.03 16:01
小伝馬町 すき焼き「伊勢重」 都内に現存する最古のすき焼き店
伊勢重の創業は、明治2年(1869年)2月。幕末から明治にかけて、維新を成し遂げたヒーローたちが活躍していた頃だ。牛肉を食べることがまだ一般的ではなく、高い塀で外からの視線を遮断した店構えであった。
記録によると、明治天皇が初めて牛肉を食されたのが明治5年1月。それを機に牛肉の食文化が人々の間に浸透し、伊勢重も商売の基盤を確立していく。創業から150年もの年月が流れた今、東京都内に現存する最も古いすき焼き店として、昔から変わらない味を伝えている。
同店では、熟練の料理人が一枚ずつ肉を切り出し、水を張った火鉢に炭火を入れた「水火鉢」ですき焼きをつくる。創業時から変わらないスタイルだというが、「水火鉢」はもう生産されていないため、割れた場合などは特注するという。牛肉はA5ランクを厳選。代々受け継がれてきた秘伝の割り下で火を通す。甘さを抑えた味付けが肉の旨味を引き出し、野菜や白滝との相性もいい。
そして、同店にはもう一つ、牛佃煮という看板メニューがある。冷蔵庫の無い時代、牛肉を長期保存できないものかという思いから生まれたものだ。ご飯に良く合う醤油ベースの味付けで、常温保存ができることから贈答品としても喜ばれている。
6代目である宮本重樹氏は、「香味・吟味・妙味の三味一体を守り、その上で日本人の口福(こうふく)につながる牛肉料理をお届けしたいと思っています」と穏やかな口調で話す。「日本橋料理飲食業組合の役員も務めましたが、再開発において昔からのお店の存在を忘れない気遣いがあることを嬉しく思っています。また、新しくできた商業ビルが入居テナントをまとめる形で組合に参加してくれています。もともと日本橋にあるお店と、新たに日本橋にできたお店が共存できないと意味がありません。共存によって発展する日本橋に期待しています」(宮本氏)