不動産トピックス
クローズアップ 防災編
2020.02.10 14:50
東日本大震災の発生から間もなく9年を迎えるようとするなかで、近年は気候変動による大雨や台風による水害も多く報告されるようになった。災害に対する国民の意識は以前に比べ高まっており、不動産経営者としては入居企業や建物利用者の安全を守るための防災アイテムの常備はもはや必須の取り組みといえる。
畑製作所 非常用発電機・災害用救助キットを販売 平時から災害への意識呼びかけ
機械部品の製造などを手掛ける畑製作所(東京都品川区)では、近年相次いで発生している大規模災害への備えとして、非常用発電機や災害用救助キット、非常食セットなどの販売を行っている。企業への販売活動のほか、個人向けの販売も行っており、地震だけではなく台風や大雨による水害への対策を目的に購入する利用客が増加しているという。
「災害で停電が発生してしまった際、非常用発電機や燃料を常備して有事に備えているのは大規模施設などの一部に限られています。中小ビルなどではコストや設置場所の問題などから独自に非常用発電機を設置するのは困難です」
そう語るのは、同社代表の畑誠文氏である。同社では持ち運び可能なサイズの非常用電源ユニットの販売を行っており、中小事業者に対して設置を呼び掛けている。非常用発電ユニットは室内の一般的なコンセントから充電が可能であるほか、自動車のバッテリーからも充電が可能。停電が発生した後でも充電し、照明やスマートフォンなど、災害時の安全確保や情報収集に必要なツールの電源供給に活用することができる。畑氏は「地域住民の会合などを通じて防災への意識啓発や防災グッズの必要性について講演を開いています。災害が起きてから対応するのではなく、日常の中に防災への意識を組み込むことで実際の災害が起きてもあわてずに適切な対応をとることができます」と話す。
メディアキャスト テレビ・スマホで防災無線を受信
メディアキャスト(東京都品川区)は、各自治体などが発信する防災行政無線とテレビやスマートフォンを連携する「防災行政無線連携システム」を開発した。
「防災行政無線連携システム」は、複数の防災行政無線の音声をケーブルテレビのコミュニティチャンネルなどのデータ放送に送出。これにより視聴者は明瞭な音声で何度でも繰り返し防災情報を聞くことができる。また、スマートフォンアプリにも同時自動配信が可能で、停電でテレビが使用できないときや外出時に強制プッシュ通知で情報伝達が行われる。
近年多発する自然災害時に、行政は防災無線を使用して緊急避難情報などを伝えているが、集合住宅の高層化や建築構造の密閉化などの背景もあり、住民からは「屋外スピーカーの放送が聞こえにくい」という声が増えていた。そこで現在ではケーブルテレビ局が地域密着情報を提供するコミュニティチャンネルのデータ放送で「緊急情報」、「避難勧告」、「避難指示」などの防災行政無線を聞けるようにする取り組みが各地で行われている。
データ放送専門会社である同社では、これまで多くの実証実験や特注システムによる商用化実績があり、今回の「防災行政無線連携システム」は、これらから得られたノウハウとともに多くのケーブルテレビ事業者からの要望により商品化された。
「防災行政無線連携システム」はテレビ画面へ強制表示し、視聴者へ注意喚起と発報告知するが、複数地域の防災行政無線と同時連携が可能で、広範囲の地域をカバーするテレビ局でも、地域ごとに適切な情報を届けることができる。
東レ合繊クラスター 災害時に役立つウェア・ポンチョを開発
東レ(大阪市北区)をはじめとする繊維関連企業で構成される企業共同体の東レ合繊クラスターでは、災害時に必要とされる機能を付与した高視認ウェアとポンチョを開発した。
高視認ウェアは高密度な織物を使用することで軽量性とコンパクト性を実現したビブス、生地組織の特殊な構造により通気性と伸縮性を付与したたすき型ビブス、一般衣料用の素材を裏面に使用することで平時から日常的に着用できるリバーシブルベストなど、幅広いバリエーションをラインアップ。また、ポンチョは高い防水機能を持つ製品に加え、避難所での目隠しなど様々な場面で活用できる高機能製品も用意している。