不動産トピックス
日本橋特集 街を彩る名店探訪 吉野鮨本店
2020.02.17 16:28
日本橋 江戸前鮨「吉野鮨本店」 トロ握りの老舗は親しみやすい名店
多くの人々が好む「トロ」。その呼び名は、吉野鮨本店が発祥とされる。同店は明治12年(1879年)に鮨屋台として創業したが、大正に入った2代目の時代にトロを食べた顧客が発した言葉がその端緒となったという。口の中でとろける食感と旨味をストレートに表現したのだろう。「トロ」を注文する顧客と2代目のやり取りを、3代目の吉野昇雄氏はよく耳にしたらしい。その後、同店で「トロ」が多く注文されるようになり全国に広がった。昇雄氏は鮨研究の第一人者でもあったため、「トロ」が他の鮨店で使われていないかを確認したが、名乗り出たお店はなく「トロ」発祥の店とした。
創業から140年以上を経た今、同店の主を務めるのは昇雄氏を祖父に持つ5代目の吉野正敏氏。同業の鮨職人たちも通う特別な老舗ということで、緊張感を持って暖簾をくぐったが、意外や意外、正敏氏の気さくな人柄でイメージが大きく変わった。「本来、お鮨は今でいうファストフード。ネタの順番や食べ方を色々という人もいますが、そんな格式ばったものじゃない。『好きなものを、好きな順番で、好きなだけ』、というのがウチのポリシーです。お値段も一般的な鮨店と比べて大きく違わないはず」と同氏。確かに、昼の握りは1500円から、夜の握りも3000円から(共に税別)なので、ランチ会や懇親会でも利用しやすい。
創業時から受け継がれているのは、「一生懸命やりなさい」という先代からの教え。だからこそ、昔からの伝統を守りながら、嗜好の変化に合わせてアレンジを重ねることも忘れていない。こうした努力が常連客の舌を刺激し、また来たいと思わせるのだろう。
また、同氏は敷居の高さよりも親しみやすさを大切にしているように、街とのつながりも重んじる。「再開発は時代の流れ。ただ、地元で生まれ育った者としては、そこに古くから住んでいる方やお店と良好な関係を築いてほしいですね」と語る。これから再開発が本格化するエリアにおいて、同様のいい関係が築かれることを願っている。