不動産トピックス
クローズアップ リノベーション編
2020.03.09 16:19
リノベーションや改修といった事例はいくつも取り上げてきた。しかし「事前に初期投資の費用を用意」や「各業者とのすり合わせが多く手間がかかる」等の負担が多い。そんな煩わしいことの嫌いなオーナーに応えるサービスがある。
リノベーション付きサブリース事業「カリアゲール」開始
2017年4月から京浜急行電鉄(横浜市西区)は、京急不動産(横浜市西区)および京急リブコ(横浜市西区)、ルーヴィス(横浜市南区)と協働で不動産の再生事業「カリアゲ 京急沿線」を展開してきた。着実に実績を積み重ねてきたなか、昨年8月には京浜急行電鉄と京急グループに加わったRバンク(東京都渋谷区)が連携し、リノベーション付きサブリース事業「カリアゲール」を開始した。
元々「カリアゲ 京急沿線」は、京浜急行電鉄が沿線の未活用の空き家や空き物件を所有者から借り上げ、自ら費用を負担しリノベーション。後に一定期間転貸・運営する事業である。サブリース方式で期間は6年間。京浜急行電鉄が査定した賃料の10%を稼働状況に関係なく物件所有者に支払うことで、空室保証をする。また京急不動産がオーナーの募集や賃貸管理を、ルーヴィスが入居者の募集を担当し、リフォーム・増改築を主業務とする京急リブコと東京23区を中心に500戸以上の改修実績を持つルーヴィスが空き物件の設計・施工を担当する。
実際、開始以前から京急線沿線でも空き家や空き物件の増加が問題視されており、今後も増加を続けると予測されていた。それも大半は、不動産所有者が高齢で改修等々の資金的余裕がない。また相続の関係から現在の不動産所有者の特定が難しいことも挙げられた。そうした点を考慮し「カリアゲ 京急沿線」はオーナーの自己負担不要で、安定した保証賃料とエンドユーザーを的確に捉えるリノベーションを強みにスタートした。
開始から約2年弱が経過し、実績も徐々に増えてきたが課題もいくつか露わになった。まずエンドユーザーを意識したリノベーション。借り上げる物件は立地するエリアの不動産市況や潜在的ニーズを意識してリノベーションしなければならず、施工側は幅広い層のユーザーを見込んだケースや反対にターゲットを絞るといった多様な施工が求められてきた。多様なニーズに応えること、また従前取り扱ってきた空き家や空室(一戸単位)以上の規模への需要、サブリースの期間も6年間以上を求める声もあるなど、テコ入れの必要も迫られていた。
これらも踏まえ、昨年スタートしたのが「カリアゲール」。2018年に京浜急行電鉄の子会社となり、東京23区を中心にリノベーション・コーディネート事業を展開し、約70棟の実績を持つRバンク(東京都渋谷区)と組んだことから、今後はビル1棟や中規模クラスの住居・店舗複合物件への対応も可能となった。昨今需要が高まっているシェアハウスやホステル、女性専用物件などへの転用も可能とし、客付けもスムーズに進むことが期待される。仕組みとしては京浜急行電鉄が借り上げ・改修費用を負担し、Rバンクがリノベーションやリーシング、かつ賃貸管理を行う。
生活事業創造本部の増尾香梨氏は「『カリアゲール』は開始間もない事業ですが、需要が高く既に第1弾のプロジェクトは進行中です。またRバンクは従前、女性を対象としたシェアハウスへ築古物件をリノベーションした事例を持ち、単に空き家を改修するのではなく、自然や街並みにあった特色がある物件に生まれ変わらせると共に新たなライフスタイルの提案を行っています。ホステル運営事業を行う同社では、空きビルからホステルへの転用も検討できるため、リノベーションの可能性も広がると思います。『カリアゲール』の始動によって、沿線の活性化と未活用不動産の再生を目指してまいります」と語った。
同社グループとルーヴィス協力 設備機能の改善と室内デザインを新調
「カリアゲ 京急沿線」では、テナント物件の再生事例に横浜市金沢区の能見台駅前に立地する店舗物件、住居物件があります。築約45年で、RC造の地上4階地下1階の貸店舗、住居物件の1室。その空きビルにはオーナー自身の住居も含まれていた。築年数の経過による劣化やデザイン性の古さもあり、抜本的な改善が必要でした。同社グループとルーヴィスにより古くなった設備機能の改善と傷んだ室内デザインを新しくしたことにより、現在はどちらも稼働中です。(京浜急行電鉄 生活事業創造本部 まち創造事業部 増尾香梨氏)
東日本旅客鉄道/ジェイアール東日本都市開発 JR東日本の旧社宅をリノベ
東日本旅客鉄道(東京都渋谷区)とジェイアール東日本都市開発(東京都渋谷区)は、リノベーション賃貸住宅ブランド「アールリエット」を展開。2026年度までに管理住戸3000戸を目指し、「提案型賃貸住宅」を展開していく姿勢だ。
今月5日には両社で連携し「アールリエット武蔵境」を開発。同物件は築56年の旧社宅をJR東日本都市開発がリノベーションを行い、ファミリー向け賃貸住宅として2棟合計60戸(1棟30戸)の住戸として提供する。JR東日本都市開発が手掛けるリノベーション賃貸住宅では9件目。JR「武蔵境」駅から徒歩7分に位置し、RC造の地上5階建て。延床面積は2棟合計で3502・6㎡。敷地面積は2021㎡。ちなみに設計・施工・管理は第一建設工業(新潟市中央区)が担当した。