不動産トピックス
今週の一冊
2020.03.16 11:30
歴史上の為政者たちの土地政策を知る
「土地と財産」で読み解く日本史
著者:大村 大次郎
発行日:2019年12月11日
発行所:PHP研究所
価格:1500円(税別)
元国税調査官である著者は、バブル経済後に登場したIT系新興企業の勝ち組「ヒルズ族」を「少し気の利いたネットスキルを開発したという程度のもの」という。思わず膝を打つ。 だが彼らがなお日本社会で幅を利かせているのはなぜか。今の格差社会はなぜあるのか。
目新しさと誤魔化しテクニックに長けた勝ち組ベンチャー群や投資家、億単位の役員報酬の層が生まれる一方、貧困層は広がった。まじめに働いてながら脱することができない年収200万円台の非正規公務員、いわゆる「官製ワーキングプア」を始め、生活保護受給者よりも貧しい暮らしを余儀なくされる超低収入の国民はなぜ増えたのか。
本書は「貧困者ほど負担が増す」税の仕組み、さらに、古代日本からの「土地」の存在価値やその変遷を分かりやすく解説。鎌倉幕府の土地改革、信長の革新的な土地政策と、サイドからみた日本史は興味深い。間違いなく良書。
土地制度が変わって国も変わったという。現代の日本は格差は更に広がり、一部のベンチャーや投資家の場違いな台頭はどこまでいくのか。本書から本来の日本のあり方をじっくり考えたい。