不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.04.06 11:57

アパホテルグループが中期経営計画を発表 2025年11月期までに連結売上高2000億円目指す
 アパグループ(東京都港区)では、新たに2020年4月1日よりスタートした次期中期5ヵ年計画「SUMMIT 5―3.(第三次頂上戦略)」を発表した。「国内ホテルチェーンで圧倒的No.1の存在となる」を旗印に、2025年11月期のグループ連結売上高2000億円、経常利500億円。ホテル客室数では、直営・FC含めたアパホテルブランドで10万室、パートナーホテルを含めたアパホテルネットワークで客室数15万室を目指す。
「SUMMIT 5-Ⅲ」始動 全国25万室体制へ
 2015年4月よりスタートした「SUMMIT 5―2.」では、提携ホテルを含むネットワーク客室数10万室を目標に掲げ、3月30日現在で10万756室と目標を達成。また2019年11月期の連結決算では、売上高1371億円と過去最高売上を更新するともに、経常利益は335億円と、3年連続で300億円を超えた。
 現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、オリンピック延期、インバウンド激減はもちろん、国内でも人の移動が制限され、イベントの開催は自粛、多くのレジャー施設が休業するなど、ホテル業界は非常に厳しい状況に置かれている。「このような中でもアパグループは、中長期的には日本が観光大国となるとの予測のもと、積極的にホテル事業を拡大していき、百花繚乱から寡占化へと向かっていくホテル業界において、日本で圧倒的No.1の地位を築き、寡占化一番乗りを目指していく」(同社)という。
 具体的な施策として、「客室数及びホテルネットワークの拡大」、「集客力強化」、「オペレーションの効率化」、「ホテル関連収益の多角化」、「人事政策」、「海外戦略」、「環境・安全への配慮」、「総合都市開発事業」の8つを推進する。  「客室数及びホテルネットワークの拡大」では、新規開発やM&Aによる直営ホテルの拡大や、既存ホテルの加盟・新規開発によるフランチャイズの拡大、パートナーホテルの加盟強化とホテルチェーンとの新たな提携の模索、「アパ直」と呼ばれる自社サイトのOTA化に注力する。
 「集客力強化」では、大量広告による認知度の更なる向上とアパ直への誘導、異業種とのコラボレーションによるブランドアップ、IT化による利用客の待ち時間短縮、複数ブランドによる多様な顧客層の獲得、OTAサイトの口コミ評価アップへの取り組み、リニューアルなどを推進する。
コロナの影響あっても将来は観光産業拡大
 「オペレーションの効率化」では、自動チェックイン機、エクスプレスチェックアウトボックスの設置拡大と機能向上、ネット管理、レベニューマネジメント等ホテルオペレーションの本部集中化、スマートホテル構想の実現化などに取り組む。
 「ホテル関連収益の多角化」では、知財戦略強化によるノウハウの収益化、ホテルコンサルティング業務の強化、新築FCの設計・建設業務の請負など。
 「人事政策」は、本部集約型のオペレーションに即した組織改編や、グローバル人材の育成・外国人人材の雇用といった多様な人材の活用、女性の管理職及び役席者への積極的登用、定年制度の見直しを含めた高齢者人材の活用と再教育を挙げる。  更に「海外戦略」では、グループのコーストホテルの拡大、東南アジアにおけるホテル展開のパートナーの発掘。「環境・安全への配慮」では、ホテルの省エネ化の更なる推進、アメニティの見直しなど。そして「総合都市開発事業」として、ホテルとマンションを核とした総合都市開発事業の展開、といったものに取り組んでいく方針だ。
 これらの施策により、同社では、ホテル部門の売上高を2025年度までに1800億円、ダイレクトチャネル予約率を50%。2024年度までに訪日外国人宿泊人数800万人。一方、住宅部門の売上高は、同200億円、マンション管理戸数3万戸、賃貸事業での自社保証物件入居率95%、全体入居率90%以上を目指していく。

小田急電鉄 「源ホテル鎌倉」オープン
 小田急電鉄(東京都新宿区)では、Keeyls(東京都渋谷区)と連携し3月26日、神奈川県鎌倉市内で「源(GEN)ホテル鎌倉」(神奈川県鎌倉市)をオープンさせた。
 同ホテルはJR「鎌倉」駅より徒歩6分。客室はファミリータイプ3室、和室タイプ4室、モダンタイプ8室の合計15室。
   同ホテルは、2017年3月に竣工した地上3階建ての既存物件の2・3階部分を小田急電鉄が賃借し、ホテル仕様にコンバージョンして運営者であるKeeylsへ賃貸するサブリース方式により運営するもの。
 鶴岡八幡宮から徒歩1分、若宮大路に面する同ホテルの客室は洗練されたジャパニーズモダンをテーマとした内装で、ツインルームから最大6名まで利用できる約50㎡のファミリールームまでの3タイプ、全15室で構成。北条氏の屋敷があったとされるエリアの一角で、また江戸時代後期以降のものとされる出土品も多数あることから、敷地内には当時に使用されていた井戸や鳥居、稲荷を再現しており、自由に参拝できるという。
 ホテルの名称である「源(GEN)」は、鎌倉幕府をひらいた「源氏」の姓、同施設の敷地から井戸が発掘された背景から「水源」、歴史的なエリアの一角であることから鎌倉の「起源」、これらを踏まえて名付けた。また、各客室名は「YORITOMO」や「MASAKO」など、鎌倉の歴史にちなんだ名称にしている。
 同社とKeeylsは、既に小田急線「下北沢」駅・「町田」駅へ鍵の予約から受渡までを無人で繋ぐシステム「KEY STATION」に連動したキーボックスを設置することで連携している。同ホテルでも同システムを使用した無人チェックインサービスを採用することで、広めのラグジュアリー空間を実現するとともに、働き手不足の中でも、高効率で安定したホテルオペレーションを行っていく。
 Keeylsが提供する無人チェックイン・鍵管理システム「KEY STATION」は、本人確認システムである「KS check in(ケーエス チェックイン)」と鍵の受け渡し用のキーボックスがセットになったもの。都内コンビニエンスストアを中心に展開しており、旅館業及び民泊新法に対応したホテル・民泊運営のフロント業務のソリューションとして活用することが可能なほか、貸し会議室・スペースの鍵受け渡し、家事代行などの鍵受け渡しサービスとして利用可能だという。

バリューマネジメント 築90年の古民家を改修
 バリューマネジメント(大阪市北区)では、福岡県八女福島の伝統的建造物群保存地区内に、築約90年以上の古民家2棟を高級ホテルに改修した「NIPPONIA HOTEL 八女福島 商家町」(福岡県八女市)をオープンさせる計画だ。
 同ホテルは2棟7室計23名。開発は、八女市の人口減少に伴う地域経済の衰退を懸念した八女商工会議所が、平成29年からスタートした「八女福島観光プロジェクト」で方針を定め、八女市商店街連合会や八女タウンマネジメントらと共に官民一体で連携を図りながら進めたもの。
 今後同ホテルを拠点として、八女エリアの魅力を開発・発信し、交流人口の増加、地域経済の活性化を目的としたまちづくりを実践する予定。
 同社のグループブランド「VMG HOTELS&UNIQUE VENUES」のホテルはこれまで、兵庫県の丹波篠山市を起点に全国8地域に展開。2020年以内に、更に4地域への展開を予定している。

東急ステイが初の観光型施設
 東急不動産ホールディングスグループの東急ステイ(東京都渋谷区)と、ホテル運営を担う東急ステイサービス(同)では4月1日、「東急ステイ飛騨高山 結の湯」をオープンさせた。
 同ホテルは、「旅人と飛騨高山がつながるホテル」をコンセプトとした、旧来とは異なる観光型の“新・東急ステイ″になるという。
 従来の東急ステイの快適性や長期滞在可能な「暮らすように泊まる」ことのできる機能はそのままに、地元のご当地料理を取り入れた夕食の提供や、檜と石造りの庭園温泉大浴場、北アルプスの絶景を望む特別室などを提供する。また、ホテルの内装、什器、土産の一部は、地域工房とのコラボレーションで制作する。
 デザインは高山の町の二面性を表す「モダン」と「クラシック」の2種類。最上階には北アルプスの絶景を望む特別室を配置。インテリアやアートワークの一部は高山の職人が担当した。客室内には、洗濯乾燥機やミニキッチンを設置した部屋も用意する。
 2階には檜と石造りの庭園温泉大浴場、最上階の9階には3つの貸切露天風呂と足湯を用意する。
 同ホテルでは、「工房プロジェクト」と題し、ホテルの内装、什器、土産の一部を、地域工房とのコラボレーションで制作する。3~8階の各階には、各工房をテーマとしたギャラリースペースを設置する。備品には飛騨木工や飛騨さしこ、飛騨春慶など高山の伝統工芸を使用する。その他、1階で高山で作られたものだけを置いたショップや、今後の展開として、館内工房連携をきっかけとしたコラボ商品の販売・イベント等も行っていきたいという。
 東急ステイは、「ビジネス」から「観光」、「転勤等の一時住まい」まで、海外からの旅行者も含め、中長期滞在客をメインターゲットに、「1泊でも中・長期滞在でも快適な空間」を提供することをコンセプトとして洗濯乾燥機・電子レンジ・ミニキッチンなどを客室内に設置したホテル。現在、全国で27店舗4309室を展開している。




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