不動産トピックス
今週の一冊
2020.04.20 16:09
収益を欲する前に知るべき市場理論
不動産の価格がわかる本
編著:大和不動産鑑定
発行日:2020年1月14日
発行所:日経BP
価格:3200円(税別)
「不動産の価格」とはまったくつかみどころがないものだ。投資の対象になる以上、価格は市場で決まる。適正価格などあるわけがないのだ。あるのはただ、市場が求める価格だけだ。しかも、他の市場とは全く違う動きをする厄介な市場だ。同じ物件はひとつとして存在しない不動産、その価格をどうすれば「わかる」だろうか。
本書はまず、不動産市場のサイクルから解説する。「過去を知って未来を読む」とのことで「失われた10年」、「不良債権処理」といった懐かしささえ覚えるキーワードから、ファンドバブルにリーマンショック、アベノミクスに至る流れから今後の不動産市場を丁寧に説く。
「重要なことは、収益は過去の実績ではなく、将来を予測して評価すること」と、当たり前のようではあるが、まさに「不動産価格」を言い表しているではないか。
モノの価格の変動を考えるとき、つい過去の値動きなどにとらわれてしまいがちだが、不動産に限っては将来の予測のみ。過去の実績を欲しがっても無意味だろう。
インフラアセットや土壌調査など広範囲にわたる内容の深さはさすが不動産鑑定プロの書籍。きちんと読み込めば非常に有益な一冊。