不動産トピックス

今週の一冊

2020.08.11 14:19

コロナ禍でコスト削減か環境投資か

ESG思考 激変資本主義1990-2020 経営者も投資家もここまで変わった
著者:夫馬 賢治
発行日:2020年4月13日
発行所:講談社
価格:880円(税別)

 この数年で頻繁に目につくようになったESG(環境・社会・企業統治)。企業へ対する「収益以外の活動」への期待度は増すばかりだ。背景にはもちろん、地球の環境悪化があげられるが、ESG思考はそう単純なものではない。企業は投資家の思惑に大きく左右され、あらゆる立場のステークホルダーがいる。
 著者は、利益追求の「オールド資本主義」、マネーに依存しない「脱資本主義」、環境配慮重視の「ニュー資本主義」、そしてきれいごとの裏には陰謀があるという「陰謀論」と、経済認識の4分類モデルを示す。
 本書は90年代からの変遷を丹念に解説し、ニュー資本主義時代に必要な企業マインドを説く。
 急遽3月末に執筆された補遺では、リーマンショックで欧米はESG思考を磨いたが日本企業は目先のコスト削減に走った、今回は大丈夫だろうかと問う。そして8月現在、著者の懸念は徐々に現実味を帯びてきている。
 本書に「自分たちでものごとを判断することはあまり得意ではないが、政府や国際的な団体が決めたことは愚直に遂行する日本人」とあるが、まさにこのコロナ禍の企業対応にも現れている。
 不況期こそ真価が問われる。最大限の借入金でパート社員にも休業補償をする企業がまさにESG思考だ。真っ先に弱者を切り捨てる大手企業は、ESG先進企業に完敗するだろう。




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