不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.11.16 14:16

Wiaas 「ゴーストレストラン」開始 ホテルシェフの料理提供
 デリバリー特化型のゴーストレストラン「DeliStation(デリステーション)」を全国展開する合同会社Wiaas(東京都武蔵野市)にフランチャイズ加盟するベルモントホテル(東京都台東区)では、11月中旬より、ゴーストレストラン事業をスタートさせる。
 既存のホテル内キッチン設備を利用し、タイ料理「ヒウマイ」と薬膳スープ「倖碗」の注文を受け提供する。これにより、来店者しか堪能できなかったシェフの腕を自宅で楽しむことができるようになる。ホテルシェフの作る料理を、ホテルレストランでは提供されない別ジャンルの料理で楽しむことも可能だ。
 外食大手企業も社員食堂の営業時間外を利用しデリバリーを始めるなど参入企業が増えている中、今回の浅草橋ベルモントホテルでの導入は、コロナ禍の打開策としてのみならず、ホテル事業への好影響も期待している。
 ゴーストレストラン導入により、新たなメニュー内容のレストランをオープンさせるのと同じ検証が可能となる。「今回の導入を通し、この地域でどのような料理が好まれるのかを改めて理解していきたい。利用者の声を受け、ホテル内のレストランで新メニューを導入することも検討でき、ホテルレストランで提供するメニュー内容にも良い影響を及ぼすだろうと見込んでいる」(同社)。
 ゴーストレストラン「DeliStation」は現在、全国へ向け展開しており、10月中に全国8拠点を開店、年内にはさらに14拠点の開店を予定している。出店地域は関東圏を中心に、札幌や仙台、名古屋、大阪、博多・北九州、金沢、新潟、高松など12都道府にも及ぶ。
 新型コロナウイルスの影響で、飲食店の売り上げが低迷する中で急成長するフードデリバリー市場。中でもゴーストレストランは店舗をもたないことから運営コスト・人件費を最小限に抑えることができ、売り上げ低迷中の飲食店の打開策の1つとして期待されている。 
 「DeliStation」は、「シェフのストーリーを届ける飲食店」というコンセプトの元、様々な分野から迎えた10名以上のシェフと共に商品開発・ブランド展開を進めている。今年1月の開業以降、1ブランドにおける月商は250万円を突破、リピート率は50%に上る。 
 すでにあるタイ料理、ベトナム料理、和食、薬膳スープ、サラダ・スムージー、ジビエ、中華粥といった7ブランドに加え、年内にタコライス、ルーロー飯、韓国チキンといった多国籍ブランドのほか、カレーやラーメンといった国民的ブランドも増やし15~20ブランドを展開する予定。 
 現在のゴーストレストランの拠点は、中野と幡ヶ谷で直営店を運営し、姉妹店を九段下と武蔵境に構えている他、都内10店舗展開。今後は本提携を機会にホテルやコワーキングスペース、シェアハウスなどの商業施設向けのデリバリーブランドのパッケージも展開していく計画だ。

ロウルズ 平日客室をワーケーションに
 Rowls(ロウルズ 埼玉県さいたま市)は同社が特別に提携する温泉旅館の平日の客室を、ワーケーションの場として企業に格安で提供し従業員に利用してもらえる福利厚生サービスをスタートさせた。
 温泉旅館で仕事をするメリットとして、かつての文豪は、旅館で執筆活動に勤しんでいた。オフィスや自宅など普段とは異なる静かな場所で業務に取り組むことで、集中力が増し、従業員の生産性がアップする。
 また温泉旅館は、自然豊かな場所に位置しているが、ストレスを軽減し、創造性を高める効果があると言われている。温泉に浸かることで、脳の神経細胞が活性化する効果もある。 
 温泉による健康促進効果も見込める。江戸時代より、日本には「湯治」という文化があった。本来は長期滞在が前提だが、短い滞在でも健康促進効果があるような優れた泉質の温泉旅館を選りすぐっている。 
 新型コロナウィルスの影響によってリモートワークを主体とする企業が増えており、場所にとらわれることなく働くことが可能となってきた。その中で、リフレッシュしながら仕事をする「ワーケーション」という働き方が注目を集めているが、同社では「温泉旅館をワーケーションの場として活用することで、仕事のパフォーマンスを上げることができる」と考え、このサービスを開始したもの。 同サービスを通して、温泉旅館の課題である平日の客室余りの解消や、関係人口の増加による地方の活性化にも貢献していきたいという。

杉乃井ホテルが宴会場を拡大
 オリックス不動産(東京都港区)では、同社が運営する「別府温泉 杉乃井ホテル」(大分県別府市)において、2018年12月より改修を進めていた共用施設「ひかりホール」の大規模リニューアル工事が完了。
 新しい「ひかりホール」は、大分県最大級の広さを誇る最大500名を収容可能な「大宴会場」のほか、提供する食事の仕込み作業などを集約して行う「メインキッチン」、そして従業員食堂や研修施設などの「従業員向け施設」となる。
   大宴会場は、オープンテラスとあわせて約1400㎡で、ゆとりのある開放的な空間。ウィズコロナの時代に対応し、同社のクレンリネスポリシーに基づき衛生対策と三密回避を徹底し、ソーシャルディスタンスに配慮したレイアウト・配席をご提案するとともに、体温計やアクリルパネルの無料貸し出しなども行っていく。
   1階のメインキッチンは、ホテルのセントラルキッチンとして、食材の仕入れや仕込みといったメイン機能を集約させた。現在、館内に4カ所ある厨房の役割を、食事の最終仕上げや実演、提供のみとし、食材と調理工程において徹底した衛生管理と業務効率化を行った。
   また、従業員の働きやすい環境の整備や同僚との積極的な交流を目的に、従業員食堂を拡大。加えて、社員教育やキャリア形成の場を創出するため、研修施設を新設した。各部門の実践的な模擬演習が可能な実習室や図書室を備え、利用者サービスのさらなる向上と均質化を図る。

HMI 「ホテルパールシティ神戸」ロビー改装
 ホテルマネージメントインターナショナル(HMIホテルグループ 東京都中央区)が運営する「ホテルパールシティ神戸」(兵庫県神戸市)は、1階のロビーラウンジを改装した。
 ポートアイランドの中央に位置する「ホテルパールシティ神戸」は、周囲を海に囲まれた閑静な場所に建つ、落ち着いた雰囲気が特徴。近隣・県外からの利用者や、国際都市神戸として海外から多くのインバウンドを獲得している。
 今回、“憩いのスペース”としてロビーラウンジの改装。今年1月より改装工事を始め、第1弾としてロビー中央にあったレストランを元和食レストランだった場所へ移動し、第2弾として8月中旬よりロビーの改装工事を開始した。 
 自然光が差し込む開放感あるロビーラウンジは、9月5日にオープンした。壁はベージュを基調としたラウンジが明るく映える壁紙にし、床はパールシティブランドの基本色でもあるブルー=水をイメージした、ブルー&グリーンのグラデーションとなっている。テーブル・椅子もソーシャルディスタンスを意識した余裕のある配置にした。今後は市民のコミュニケーションスペースとしても活用していきたいという。

赤坂エクセルホテル東急 ユニバーサルデザインルームに
 赤坂エクセルホテル東急(東京都千代田区)では、45㎡のスーペリアスイートルーム1室を、ユニバーサルデザインルームとしてリニューアルした。
 今回は、高齢者や障害者のみならず、健常者を含めた多くの宿泊利用者にとっての利便性向上を目的に実施したもの。客室は入口やリビング、バスルームの扉の開口を80cmに確保し、フラットなフロアは車いすでも回転可能な広めのツインルーム。ワードローブ内のハンガーバーは高さが変更可能で、ドアスコープ・コンセントは車いす使用者の利用に配慮した高さに設置した。また、バスタブとトイレの横には手すりバーを取り付け、様々なサポート用具も用意している。
 室内は全体的にエクセルホテルのブランドカラーであるブルーを基調とし、リビングルームはダークブラウンで重厚感のある落ち着いた雰囲気に。また、ベッドルームはライトブラウンとホワイトを取り入れた。

京王プレリアホテル札幌 レンタルスペース事業開始
 京王グループの京王プレリアホテル札幌(北海道札幌市)では、客室を活用した新たなサービスとして、レンタルスペース事業を開始。その第1弾として個室レンタルオフィス6室をオープンさせた。
 同サービスは、コロナ禍におけるオフィスの移転・縮小など働き方のニーズの変化を受け、客室からベッドやソファを撤去し、専用のオフィス什器・備品を配置することで、個室レンタルオフィスに転用したもの。京王グループホテル初の取り組みとなる。 
 同ホテルならではの立地や設備を活かしたハイクオリティな個室レンタルオフィスを1時間あたり1000円からの価格で提供することで、新たな働き方を求めているビジネスパーソンが気軽に利用できるサービスだ。   ビジネスパーソンの隙間時間の活用や、出先での商談など、近年の働き方改革やコロナ禍で加速している場所や時間を柔軟に選択できる働き方をサポートする。 
 新型コロナウイルス拡大後、稼働率は回復基調にはあるものの、インバウンド需要等は引き続き回復の兆しが見えない状況が続いている。同ホテルでは、既存の宿泊需要だけに捉われず、コロナ禍によって加速した社会の変化や利用客のニーズを踏まえた新たなサービスを開発・提供していく。




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