不動産トピックス

クローズアップ スマートロック編

2020.11.24 10:17

 不動産テックを身近に感じるサービスとして認知度を広げてきたスマートロック。現在でも多くの企業が参入し、新たな認証方法の導入も行っている。なかには開発したコア技術をもとに、事業領域を広げる動きも出てきている。

独自システムで信用性担保 鍵からプラットフォームへ
 コロナ禍によって非対面・非接触がキーワードとなっている。そこで熱い視線を送られるのがスマートロック。「bitlock」を展開するビットキー(東京都中央区)はこのコロナ禍でのニーズに応えつつも、その先の布石を打っている。
 同社では先月、大手デベロッパー2社に顔認証スマートロックを導入した。1つは日鉄興和不動産(東京都港区)。「品川インターシティ」内にオープンしたばかりのコワーキングオフィス「SPROUND」に導入。そして、10月7日には中央日本土地建物グループの日本土地建物(東京都千代田区)のオープンイノベーションオフィス「SENQ霞が関」に導入するに至った。この2社以外にも大手不動産デベロッパーが導入したり、出資していたりする。期待の高さが見える。
 「bitlock」の特徴は解錠する際の信頼性や安全性を担保するシステムを、自社で開発していることだろう。スマートロックのなかにはブロックチェーンを管理システムの中に組み込むケースもある。ブロックチェーンは書きこまれた情報を後から改ざんすることに対しての強さがあるからだ。しかし、ビットキーの共同創業者で代表取締役CEOの江尻祐樹氏は「そもそもその情報が正確なのかのチェックがなされていない」と指摘する。実はセキュリティ面で落とし穴があるのだ。そこで同社では独自のシステムを開発し、ブロックチェーンの改ざん耐性と非中央集権という特徴を生かして、かつ情報の正当性も担保した。今回両施設に導入したスマートロックの顔認証も正当性を高める施策の一環だ。加えて利便性の向上も実現した。カメラの正面に立つことや静止することなく、ウォークスルーで入場できるとともに、場所や環境に応じて認証レベルを設定・学習させ、最適化することが可能となっている。「スマートロックにすることで紛失のリスクを無くせます。また日にちや時間帯で解錠の権限を与えることができるので、運用の利便性が格段に向上します。当社製品はこれを低コストで提供しているため、多くの企業から引き合いを頂いています」(江尻氏)。
 一方で同社のビジネスは当初よりスマートロックの先を見据えている。
 「オンラインサービスを利用されていると、サービスごとにIDやパスワードが異なっています。これは利用者にとって不便です。ただ事業者にとってもコストや手間の問題から、各サービスと連携させていくことには消極的です。そこで当社は創業当初にコア技術『bitkey platform』というものを開発しています。これは各サービス上のIDを残したまま連携させることができます。スマートロックも連携サービスの一つという位置付けです」
 さらに、10月15日にはこのプラットフォームをベースとして「働く」にフォーカスしたコネクトプラットフォーム「workhub」の提供を開始。連携が進んでいけば、ビルの設備や人事評価や労務管理といったHRシステムまで、「働く」に関わる様々なサービスと接続していくことが可能になる。
 パートナー第一弾としてオフィス家具メーカーのオカムラ(横浜市西区)と資本業務提携を結んだ。オカムラが提供する家具や什器などと連携させていく。
 スマートロックで実績を積んで生まれたコネクトプラットフォーム。連携事業者を増やしていけば、スマートロックと併せてビルのインテリジェント化に大きく寄与していきそうだ。

低コストで導入しやすさ売りに
 当社では2018年に創業して以来、ハードウェア製品の受注台数の累計は31万台超となっています。他社と比較して低コストでのスマートロック導入ができること、そして新しい体験や価値が提供され利用者満足度の向上につながったことが成長してきた要因だと考えています。当社の新しい事業であるコネクトプラットフォームについても、スピード感をもって普及に取り組んでいきたいと考えています。第一弾としてオカムラ様との提携を発表しましたが、さらに多くのパートナーが加わっていく予定です。

QRコード活用の施錠システムを宿泊施設に導入
 クローズド・ラグジュアリーを提唱するデザイナーズvillaの「SORAPIA villa Mt.FUJI front(ソラピア ビラ マウント フジ フロント)」はチェックインおよび入退館システムとしてレッグス(東京都千代田区)が販売する「(仮称)qlock」のQRコードチェックインシステムを導入した。  「(仮称)qlock」は各種決済などで国際的に認知度の高いQRコードと電気錠のオートロックを組み合わせた施錠システム。
 同物件は今年9月に開業したデザイナーズvillaタイプの4室のホテルだ。宿泊者は予約からチェックアウトまで一貫して、施設スタッフのような他人からの接触・干渉を受けずに自分たちだけの自由な時間を過ごすという「クローズド・ラグジュアリー」のコンセプトのもと、LINE BotとQRコードを使用したチェックインシステムとして採用することとなった。




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