不動産トピックス

クローズアップ マッチング編

2020.12.28 13:59

 スペースシェアリングを中心に不動産業界でのマッチングサービスが数多く現れている。そのなかで不動産業界の業務効率化や課題解決に挑むサービスも登場。今後の広がりが注目される。

地域住民の「働きたい」を清掃業務にマッチング「COSOJI」来年1月正式スタートへ
業界で経験積む中で感じた疑問が契機に
 2020年5月創業のRsmile(東京都中央区)が、来年1月に清掃のワークシェアリングサービス「COSOJI(こそーじ)」をスタートさせる。住居物件の清掃業務と地域の人たちをマッチングさせることを皮切りに、中長期的には全国で不動産の軽作業との総合的なマッチングサービスを展開していく。
 代表取締役CEOの富治林希宇氏は10年間不動産業界に在籍。BMからPM、またAM分野での経験を培ってきた。そのなかで抱いた不動産業界への疑問が、今回の「COSOJI」につながっている。
 「私が不動産業界で最初に行ったのは管理物件に常駐してBM業務を行うことでした。資格を取得して専門的な業務も行っていましたが、その一方で清掃業務などに時間を取られることも多くありました。『この業務を他の人に任せることができれば、物件の価値向上に時間を割くことができるのでは』と考えたのが今回のサービス開発のきっかけでした」
 「COSOJI」を活用することのメリットはオーナー、登録ワーカーの双方にある。オーナーにとってはより付加価値の高い、専門的な業務に時間を割くことができるようになる。加えてコストメリットも出すために、単価も通常の清掃単価よりも抑える。一方登録ワーカーも従来の清掃の業務に比べて、1案件あたりの単価を高く設定する。狙いは質の担保だ。
 「たとえば1回の清掃単価が2500円だとしたら、ワーカーには2000円を還元したいと考えています。ワーカーへの報酬単価を高く設定することで意欲が維持され質の向上などにつなげていきたいです」
 正式に展開するにあたっては、これまで慎重な実証実験を積み重ねてきた。
自らも物件投資 実証実験重ねる
 富治林氏をはじめとした創業メンバーは自らも物件に投資し、運用している。そのうえで「COSOJI」の実証実験を重ねて改善してきた。
 「オーナー様にサービスのご提案をさせていただくなかで、不動産業界での実績はご納得いただくための材料になっています。これに加えて、自らもオーナーとしてサービスを活用していたことを話すと、さらに反響は良いです。オーナーとしての立場もあることで実際にコストダウンの効果が見込めることが数字で出すことができます」  反響も好調に推移する。12月9日にサービスを発表して以後、1都3県の首都圏、群馬、静岡、滋賀などの各県で業務の依頼、ならびにワーカーの登録を開始したが、既に引き合いは300棟近くに迫っているという。
 加えてエリアを拡大していくうえで強力なパートナーとも組んだ。11月9日にジモティー(東京都品川区)などから資金調達を実施した。同社は地元に密着したネット掲示板を全国で運営する。やはり地元に密着したサービスを掲げる「COSOJI」にとって、大きなシナジーをもたらすパートナーとなりそうだ。
 まずは先着50棟が対象となるが、順次取り扱い棟数やエリアを拡大していく予定。
来春にはアプリも サービス拡張も視野
 当初は清掃業務におけるマッチングに限定していくが、早い段階で軽作業に分類される他の業務などにも拡大していく。また中長期的には見積もりや報告書の作成などもカバーしていく方針。また来年春には「COSOJI」のアプリ展開も予定している。このアプリによってスマートフォンひとつで発注をすることができるとともに、発注者からワーカーへのフィードバックや、「以前と同じワーカー」や「評点が高いワーカー」などといった形で希望条件に合ったワーカーを選択できるようになる。
 「中長期的には『COSOJI』を通じて、不動産にまつわる課題を解決していくためのマッチングサービスへと進化させていきたい」(富治林氏)
 管理業務の新しい選択肢として定着していくか。サービス開始後の広がりに注目したい。

YADOKARI/あきやカンパニー運営 「空き家ゲートウェイ」で100円物件掲載
 全国の買い手のつかない空き家を「100均物件(100円or100万円)」として売り手と買い手をマッチングさせるプラットフォームの「空き家ゲートウェイ」が12月、横浜市磯子区にある商店街「浜マーケット」の1つの店舗物件を「100円/月(1年間賃貸)」という値段で掲載、活用の担い手を全国から募集した。同プラットフォーム初の100円賃貸物件を皮切りに、今後全国の商店街にある空き店舗を100円か100万円で掲載し活用を促すPR支援を行っていく。
 全国にあるシャッター商店街。横浜市磯子区の「浜マーケット」でも空き店舗が複数存在し、そのなかの1つである元花屋の物件を同プラットフォームにて紹介。花屋として約50年運営してきたオーナーが自身の体調を理由に閉めることになった物件で、初の取り組みとなる「100円賃貸物件の掲載」を行った。この物件を引き継いで活用できる担い手を募集していく。
 店舗はワンフロアになっていて、花屋だった当時の備品やショーケース、冷蔵庫などが残っている。次の入居者はこれらをそのまま使用することができる。  「空き家ゲートウェイ」では商店街の文化を引
き継ぐ後継者を募集し、その文化を引き継ぎながら新たな価値を商店街にもたらすきっかけとなる空き家プラットフォームを目指し、今後も数多くの商店街の空き店舗物件を「100円物件」として掲載していく予定。また1つの物件の募集を行うだけでなく、その物件がある商店街やエリア全体を訴求していく継続的なアプローチをとるためメディアPR施策など、空き家対策支援サービスも提供していく。




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