不動産トピックス

クローズアップ 空き家管理・活用編

2021.02.08 11:10

 社会課題となっている空き家問題。数年前よりクローズアップ。民間企業のサービスも多くリリースされたが、課題解決には至っていない。この課題に挑戦しようと今も新しいサービスが登場している。

ドルマ 「空き家マンスリーネット」オープンへ 空き家・空室の募集を開始
 ウェブ制作を行うドルマ(新潟市中央区)が空き家や空室と、マンスリーマンション需要者をつなぐ「空き家マンスリーネット」のサービス提供を今春開始する。それに向けて、1月19日、掲載物件の事前募集を開始した。
 代表取締役の大堀蒼汰氏は学生起業家。Youtube上で行われる現代版マネーの虎「令和の虎CHANNEL」(モノリスジャパン運営)という番組にも出場経験がある。「前々から空き家の活用には関心を持っていたが、IT系の事業を主としている自社が関われる点が少なかった」と話す。これまでは空き家を活用するにしてもリノベーションなどのコストが所有者にとって重く、資産を寝かせざるを得なかったのが実情だ。
 そのような状況で襲ったのがコロナ禍だった。感染拡大を防ぐための「新しい生活様式」が提唱された。働き方に関しては、たとえばテレワークなどが各企業で制度として導入されつつある。大堀氏はここに着目した。
 「通常のマンスリーマンション需要である短期出張などに加えて、テレワークが普及する中、在宅勤務の際に普段と違う場所で働く事により気分転換ができるという新たな需要があるのではと思いました。例えば通常マンスリーマンションなどはない田舎の立地にある空き家でも、在宅勤務で田舎暮らしを体験してみたい人に需要があります」
 空き家の所有者にとってもマンスリーで貸し出すことのメリットは多い。収益不動産としての運用ができるとともに、将来的に売却する際も機動的に対応することができる。また人が住むことによって老朽化を抑制し、物件価値の低下も防ぐことができる。
 モバイルルーターによるWi―Fi環境の構築やアメニティの提供、清掃代行業務、ポータルサイトによる集客を「空き家マンスリーネット」の付帯サービスとして提供するため、オーナーは大掛かりなリノベーションをしなくても空き家、空室の期間だけ気軽に利用が可能だ。
 「空き家や空室をリノベーションし事業に活用するビジネスは多いが、最終的に売却や長期賃貸を希望する人には向かない。当社の『空き家マンスリーネット』通じて、そのような場合の空き家期間の機会損失を減らし、空き家問題の解決に寄与できればと思います」(大堀氏)
 これまで培ってきたウェブサービス開発の実績を生かして、空き家オーナーと、マンスリーマンション利用者のマッチングができるかに注目だ。

不動産管理の軽作業ワークシェア「COSOJI」出足は順調
全国古民家再生協会と提携 空き家管理にも対応へ
 Rsmile(東京都中央区)が今年1月よりスタートした「COSOJI」。物件の軽作業と、その周辺のスキマ時間に働きたい人たちとをマッチングさせるサービスとして展開。物件数、ワーカー数、取引数いずれも順調な出足となっている。
 そのなかで1月18日、全国古民家再生協会(東京都港区)と包括的な提携契約を締結。戦略提携パートナーとして「古民家等の再生利活用、空き家課題解決に関する事業」並びに「地域での空き家管理に関する事業」を互いに協力して推進することに合意した。
協会には工務店・工事会社集積 管理業務をカバーでシナジー
 代表取締役の富治林希宇氏は今回の提携を昨年11月頃から準備してきたという。「『COSOJI』のサービスと空き家管理の親和性は高いと感じていました」と話す。空き家管理の事業を提供している会社もあるが、そのような場合、所有者側にとってコストが重い。「COSOJI」ではオーナーと作業者を直接つなげるため、費用を圧縮することが可能になる。
 今回提携した全国古民家再生協会は全国約330社の工事会社や工務店が会員となっている組織。全国の約40の自治体と連携協定を締結し、空き家を含む古民家の再生に向けてのリフォームやアドバイス等を行っている。  「一方で、空き家や古民家の管理業務については協会側では行っていませんでした。空き家の課題解決のため、よりよい仕組みができるという想いが一致して、今回の提携に至りました」(富治林氏)
需要見極めエリア拡大へ 専門性高い業務も
 現在サービスは関東、中部、近畿、中国、四国、九州沖縄の6つエリアで、需給のバランスを見ながら提供中。今後、物件とワーカーを確保したエリアから順次、サービス内容の拡充やエリア拡大を図る。富治林氏は「都市圏はもちろんのこと、地方でも問い合わせが多く来ています。しっかりと需給のバランスがあったところで展開していく方針ですが、早い段階で全国展開が可能になるのでは」と見立てる。加えて「COSOJI」で依頼できる業務内容も現在の「軽作業」だけでなく設備点検などのより専門性の高いものまでカバーしていくことも計画している。




週刊不動産経営編集部  YouTube