不動産トピックス
今週の一冊
2021.05.06 11:28
収縮する東京の未来図
ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産
著者:榊 淳司
発行日:2020年12月15日
発行所:イースト・プレス
価格:860円(税別)
1960年から1990年までの東京は成長期、1990年から2020年は安定成長。「失われた20年」もあり街並みは変わらない成熟期、そして次の30年は爛熟期と著者は言う。テレワークは現在抵抗しているPCに慣れない昭和就職組が退場していけば「ちゃんと普及する」とのことだが待ち遠しいことだ。
京都人ならではの斜め上から目線で「東京の30年後」を見た本書は読みやすく小気味よく、各テーマごとに「いや、こうなるのでは」と読者それぞれの知見から多くの意見が出てくるだろう。例えば、本書では人口の3割以上が高齢者となる30年後の東京の街は「高齢者仕様」に整えられているというが、はたしてどうか。
どの駅も車いすでスムーズに移動できるようになっているのか。高齢化で車いす人口が増えるといっても、それは労働人口の中心層とは違うところで増加するのだ。未来の経営層はどんな意思決定をしているのだろうか。今現在の我々が老いゆく団塊の世代の不便解消のために何の施策を取っているかを考えれば、あまり期待は持てまい。
「いかに上手に収縮するか」がミッションとなる東京。現在の巨大開発がすっかり落ち着いた30年後、果たして街の風景はどうなっているか、なぜか深く想像してしまう一冊。