不動産トピックス
クローズアップ クラウドファンディング編
2021.05.17 10:38
「貯蓄から投資へ」という流れがあるなかで、業界で人気を博すのがクラウドファンディング。企業規模を問わず多く参戦する中で、競争環境も激化している。直近参入企業がとる戦略や施策に迫った。
「みんなで資産運用」人気 募集金額に対し申込が200%のファンドも
大和財託(東京都渋谷区)は収益不動産を活用した資産運用コンサルティングを展開している。同社では2020年より次世代不動産投資「みんなで資産運用」をスタート。これまで発表したファンド全てで募集金額に対して申込率が100%以上を達成。昨年12月に募集した「神戸市中央区ファミリー区分タワーマンションファンド」では申込率が200%近い水準となった。
ファンドは主にレジデンス物件の区分や1棟を組み込んでいる。既に運用を開始しているものは年間の表面利回り5%~6%以上、実質利回りは3%以上となっている。当面は2カ月に1案件を組成していき、将来的には毎月1案件ずつ募集していく方針。
同社の資産運用コンサルティングのクライアントは経営者や医師、高年収サラリーマンなど高所得層が中心となっていた。一方で「老後2000万円問題」や「終身雇用の終わり」といった問題が噴出。社会的にも「貯蓄から投資へ」という流れが加速してきた。
代表取締役CEOの藤原正明氏は「当社としてもこのような社会課題に対して資産運用のソリューションを提供できないか検討していました」と話す。2017年に不動産特定共同事業法が改正されたことにより電子募集が可能となった。このことを機に「みんなで資産運用」の構想を進めていった。
同社のファンドはこれまでの不動産投資クラウドファンディングのなかでは見られなかった、投資家ファーストの施策が織り込まれている。そのひとつが今年2月に募集した「京都市西京区中古一棟リノベーション物件ファンド」。このファンドでは運用期間中に元本の一部が戻ってくる仕組み「元本払い戻しシステム」を導入。
物件の家賃から得られた収益をベースに毎年元本を1%ずつ投資家に償還していくもので、仮に物件価値が毎年1%ずつ下落しても元本毀損を起こさない。また運用期間が長期化すると、実質利回りを増やす効果ももたらす。たとえば実質利回り3%のファンドに100万円出資した場合、1年後に1%の出資金が戻り出資金は99万円となるが、分配金は3万円のため、実質利回りが3・03%とすることができる。
藤原氏は「みんなで資産運用」を通して、「より幅広い投資家層の資産運用を支えていきたい」と意欲を示す。投資家にとってメリットのあるシステムについても引き続き考案していくとともに、5年以上の長期間運用するファンドの開発なども行っていく計画だ。
JRD 不動産クラウドファンディングサービスを開始
資産形成不動産会社のJRD(東京都渋谷区)はインターネットを活用した不動産投資クラウドファンディング事業「iRD(イルド)」を開始。匿名組合型の商品「iRD匿名1号 セジョリ奥沢」、「iRD匿名2号 ディム三軒茶屋」の募集を4月26日からスタートした。
5月14日12時現在で「セジョリ奥沢」は募集金額1900万円に対し2600万円の応募。ディム三軒茶屋は1790万円に対し2270万円の応募が集まっている。双方ともに運用期間は3カ月、目標利回りは5・6%と5・8%。最低投資金額は10万円からで、今月23日23時59分まで募集を受け付けている。
同社では「iRD」を「不動産投資の第一歩」と位置付ける。組み込んでいく対象物件は賃貸重要の高い物件で、都市型マンション「セジョリシリーズ」を中心としていく。いずれの案件でも劣後部分を40%程度設ける。
「プロパティプラス」開設 飯田グループHD関連会社が運営
分譲戸建て住宅の国内販売シェア最大手の飯田グループホールディングスのグループ会社で、東京・名古屋・福岡などを中心に投資用マンションの企画・設計・販売を行うリビングコーポレーション(東京都渋谷区)は11日、不動産クラウドファンディングサイト「property+(プロパティプラス)」を立ち上げた。
同社では特許取得済みの「10-4CUBE工法」や高い意匠演出による機能性とデザイン性を備えた不動産開発や、高い入居率を支える物件管理に強みがある。これを生かして、参入企業数も多い不動産投資クラウドファンディングのなかでの台頭を測っていく。
第1号ファンドには「Brabche阿佐ヶ谷ファンド1」を予定する。募集金額は1200万円で運用期間は3カ月、年利換算での想定利回りは10%。6月8日~22日までの期間で募集を行っていく予定だ。