不動産トピックス
クローズアップ 外壁改修編
2021.06.07 10:29
ビルの第一印象を決める外壁。日頃から風雨にさらされ劣化の進行も早いことから、定期的なメンテナンスやビルの印象を変えるリニューアルが必要である。建物を長持ちさせ、稼働状況にも貢献する外壁改修・リニューアル方法を検討する。
エム・ワークス 外壁リニューアルで物件をコンセプト化 既存ビルの再生に注力
エム・ワークス(東京都豊島区)は、大手建築設計事務所での勤務経験を持つ三上慎之輔氏が2010年に設立した建築・設計事務所である。現在は主に戸建住宅や店舗の建築コンサルタント業務を請け負っている。
「当社が多くの実績を持つ外装工事は、既存物件をバリューアップさせる上で非常に投資効果が大きいものと考えています。工事を外注する従来のスキームとは異なり、当社は工事部隊を社内に持つことから、コスト面でも優位性を持っています」(三上氏)
また、同社では外装だけではなく内装工事やリノベーションも手掛ける。近年はレジデンスをホテルに、あるいは工場・倉庫をオフィスに転用する例は増えている。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、これまで需要が伸びていたホテルもここへきて急激に減少。ホテルを住宅やオフィスに転用する事例も今後出てくるだろう。三上氏は「その時々に合った運用を行うという考え方は、ますます浸透していくでしょう。一方で既存物件のリノベーションで稼働率向上を狙うなら、物件のコンセプト化は必須事項といえます」と話す。 同社が手掛けた練馬区内でのリノベーション事例では、従来までは一般的なオフホワイトの外観であったマンションのデザインを一新。ブラックを基調とした外壁リニューアルを実施した。建物内は、共用廊下に木目調のシートを施工して温かみを演出。
エレベーター付近の壁面には大きな輸入品の照明器具を配置してモダンな印象を与えている。リノベーションは同社のプロデュースによるものが多いが、「中には施主からデザインの要望を頂くことがあり、できる限り希望に沿ったデザインを提案しています」と三上氏は話す。
東急建設 外装下地ユニット工法を開発 倉庫・工場など大規模建物の外壁工事を高効率・高精度化
東急建設(東京都渋谷区)は、物流倉庫や工場などの大規模建物に外壁を取り付ける際、下地として使用される胴縁材を事前に高い精度でユニット化する「外装下地ユニット工法」を開発した。
近年増加している物流倉庫や工場など大規模建物の外装材には、軽量で断熱性・耐火性に優れる金属断熱サンドイッチパネルを用いる機会が増えている。この外壁は、仕上材となる金属断熱サンドイッチパネルと取り付け下地となる胴縁材で構成されているが、胴縁材の部材数が非常に多く、クレーン等で部材を一つ一つ揚重し取り付けする施工方法では施工効率が悪く、これまでも事前に組み立てるユニット化が検討されていたという。
これまではユニット化の精度に課題があり、下地ユニットを取り付ける際、再度設置位置の調整を行う必要があったが、今回開発された工法では施工寸法に合わせ制作した水平架台上で胴縁材を組むことで、高い精度でのユニット化を実現した。下地ユニット取り付け工数の低減ができ施工生産性の向上が図れるとともに、組み立て精度向上による施工品質向上にも寄与するという。
また従来は外壁と床の隙間の耐火処理のため、外壁工事後にロックウールなどを充填する必要があったが、同工法ではあらかじめ隙間のサイズがわかり、かつ隙間が統一されることから、前もってロックウールを充填しておくことも可能になった。胴縁材の組み立てから本体セットまでに伴う工事は従来と同等のスピードで精度のよい下地面が施工できるため、調整に要する工数も減らすことができる。
東急建設では同工法を標準仕様とすることで、需要が増加している物流施設などの大規模建物における施工生産性をより高めていくとしている。
コンクリやモルタル、タイル目地に塗布するだけ 劣化防ぐ多機能コーティング剤
イングスコーティング(名古屋市西区)が販売する「レインダンス」は、フッ素変性シランを主成分とする水性コーティング材料。コンクリートやモルタルなどの多孔質基材に塗布するだけで表面に保護層を作り、劣化を防ぐ。
タイルや石材、セメント系下地といった多孔質素材の弱点は水分や塩分、酸性雨、薬品などだ。これらが浸透し、徐々に侵食していくことで劣化が進んでしまう。そこに「レインダンス」を塗布することで、表面に耐久性の高い撥水性・防汚性を付与。特にカビ等の生物汚染を受けやすいコンクリートブロック製品や基礎コンクリート廻り、外壁タイル、モルタル目地の美観維持に効果があるという。簡単な施工で高い効果を発揮。構造物の耐久性が格段に上がり、劣化も止められる。
VOCフリーの水性1液型コーティング材料のため安全性にも優れ、ローラーや刷毛、低圧スプレーガンなどで簡単に塗布できる。施工後の外観は施工前と大きな変化がなく、質感もそのまま。微生物による汚染に対しても有効で、基材内部の水分による膨れや剥がれの心配も一切ない。溶液は無臭で塗布時、塗布後も臭いはなく、消臭効果も期待できる。さらに自然放射性触媒を含み、抗菌性能もある。これらの効果は、表面に耐久性の高い撥水層を形成することで得られるという。
外壁はもちろん、建て替えが難しいコンクリート橋脚、磨耗や水・油などの付着が気になる工場の床といった長期間の耐久性が求められる場所にも好適な保護材だ。
室外機などの防音パネルに新工法 枠にカバーをかぶせ本体と一体化
エービーシー商会(東京都千代田区)は、高性能防音パネル「e-WOOL(イーウール)」の枠に本体と同色のカバーをかぶせ、一体感のある仕上がりとなるオプション工法を追加した。
「イーウール」は多孔質構造の吸音材とゴム・金属の複合下地材の組み合わせで、吸音・遮音・防振の基本性能に加え、パネル形状による音の反射など細部にこだわり設計された高性能な防音パネル。音の振動を最大約80%カットし、近年増加傾向にある空調設備や発電機などから発する低周波音にも効果を発揮する。
内部の吸音材はポリエステル繊維で、すばやく水を排出するため雨水で劣化することがなく、グラスウールの防音パネルと比較して長期間にわたり防音性能を保持できる。遮音性能データや防音効果シミュレーションを参考に3タイプの中から必要な減音量に適した製品を選択できる。本体(角波折板部)のカラーは外壁などに合わせて10色を用意した。
新たに追加されたオプション工法は、標準仕様のパネル枠に本体と同色のカバーをかぶせることで色調が統一され、一体感のある仕上がりを実現する。