不動産トピックス

クローズアップ 不動産テック編

2021.06.21 11:36

 多くの企業が不動産テック分野へ参入する中で、競争も激しくなっている。国内事業者だけでなく、海外で展開していた実績を生かし、日本でも展開するケースもある。現在の不動産テックの最新動向を追った。

スイス発のAI不動産鑑定 日本企業にも着実に浸透 技術とコンサルでニーズに対応
 AI不動産査定で、外資系のサービスが頭角を現している。
 不動産テック企業・PriceHubbleはスイスに本社を置く。提供するのは「不動産AI査定サービス」。不動産価格を機械学習やビッグデータなどを駆使して算出する。特徴的なのは国ごとでの価格を決定づける要因を組み込んでいることだ。たとえばスイスなどでは環境情報として騒音や景観をスコア化。それらの数字をビジュアルでわかりやすく表示し、不動産の運用や投資の判断をサポートしている。
 グローバルでサービスを展開しており、日本に加え、スイス、ドイツ、フランスなど、欧州6カ国で事業を展開している。日本法人のプライスハブルジャパンは2019年に設立。2020年より本格的に事業をスタートさせた。
 対象となるのは不動産仲介、デベロッパー、管理、PM、買取再販などの不動産業界の企業全般。また不動産を運用する金融や保険など多岐に及んでいる。(日本においても)既に上場企業を含めた複数の企業が導入。また不動産管理アプリなどとの連携も行っている。
 代表取締役の廣澤祥生氏はその強みを、こう指折り数える。ひとつは「ヨーロッパ最大級の技術スタッフを有していること」。先般、ヨーロッパで最も有望な不動産テック・スタートアップ&スケールアップ企業を表彰する「Prop Tech Startup&Scale―up Europe Awards」のトップ50に選出された。またエンドユーザー向けにも展開しているシステムと比較して「BtoB」に特化していることも企業顧客からの信頼を得ている要因だ。アプリや個々のシステム、またビジュアル化もサービスの拡大に向けて欠かせない。そして、システムを販売するだけでなく、コンサルティングも実施して個別企業により使いやすい形にしていることが、大きく評価されている。
 廣澤氏は「日本では大手企業が先行していますが、今後は中堅・中小の企業へと幅を広げていきたい」と話す。その第一歩がアプリとの連携になりそうだが、「より導入しやすい仕組みも作っていく」とする。
 プロを対象としたサービスが拡大していけば、「不動産テックの浸透は更に進行していきそう」といえよう。 また同社では、17日、電通国際情報サービス(ISID)との提携を発表。ISIDはプライスハブルジャパンの査定技術をベースに、地域金融機関向けサービスの「BANK・R賃貸不動産融資支援サービス」を提供していく。
 このサービスによって地域金融機関は投資用住宅不動産の融資審査、中間管理をより効率的、客観的に行うことができる。廣澤氏は「ISIDと提携し、地域金融機関向けの融資審査サービスを提供できることを光栄に思います。PriceHubbleは、日本のお客様により良いサービスを提供するために、技術と人材への投資を続けていきます」とコメントした。今後の動向にも注目だ。

クリエ・ジャパン/マーキュリー 「分譲マンション紹介動画」サービススタート 動画のDXテクノロジーを活用
 大手から中小企業のマーケティング・DX支援を行うアジャイルメディア・ネットワーク(東京都港区)の子会社、クリエ・ジャパン(東京都港区)はマーーキュリー(東京都新宿区)と業務提携を行い、「分譲マンション紹介動画」サービスを共同で立ち上げた。
 このサービスはマーキュリーが保有するマンションデータを活用し、購入権当社向けに個別最適化した物件紹介動画を自動で生成、それを不動産仲介会社に提供する業界初の取り組みだ。クリエ・ジャパンではサービスで提供している動画DXテクノロジー「PRISM(プリズム)」を活用し、既存サービスのDX推進ならびにビジネスの成長を支援していく。
 マーキュリーの既存サービス「Realnet」では不動産仲介会社へマンションデータを提供。仲介会社はそれを仲介営業におけるツールとして活用している。購入検討者は仲介会社からマンションに関する情報提供を受けるが、主に広告用のチラシ程度の内容で提供されることが多く、ある程度限られた情報の中から判断するケースが多々あった。また仲介会社は売主から専任媒介契約を獲得するために、他の仲介会社と差別化を図る有効なツールへの需要があった。
 今回の「分譲マンション紹介動画」サービスはマンションの特性や魅力を効率よく伝えるもので、仲介会社の担当者が「Realnet」を通じて物件を指定し、取扱店舗名や物件担当者等の問い合わせ先を入力するだけで、個別最適化した物件紹介動画を生成する。生成した物件紹介動画は購入検討者に対するわかりやすい情報提供として、また売主に対する専任媒介契約のプレゼントとして等、様々なシーンで活用できる。
 サービスは導入にあたっての初期費用はなく、完全従量課金制。東京23区内エリアの3000物件でスタートし、今後順次拡大を図っていく。




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