不動産トピックス
今週の一冊
2021.06.29 11:59
「知」の宝庫を守る建築物
日本の図書館建築 建築からプロジェクトへ
著者:五十嵐太郎/李明喜(編)
発行日:2021年3月5日
発行所:勉誠出版
価格:3,500円(税別)
図書館は知の源泉だ。「人類が体の外部につくりだした脳」と表現したのは宇宙学者だったろうか。照明のなかった時代は、いかに自然採光を導くかが課題だったそうだが、図書館はアレキサンドリアの時代から存在した、かくも歴史が古いものなのだ。
本書は、「建築デザインの視点から戦後日本の公立図書館をたどるもの」(はじめに)という。
公立図書館は日本中の自治体に存在するが、選び抜いた66の図書館を丁寧に解説している。
第1章「図書館が根付いた時代の建築」では、戦後間もない頃に建設された神奈川県立図書館、日野市立中央図書館、第2章「多様化する図書館のデザイン」で図書館建築の発展期として紹介するのはかまぼこ型の北九州市立中央図書館、武蔵野市立吉祥寺図書館など、第3章「新しい状況がもたらす図書館建築の変化」では、京都国際漫画ミュージアム、小布施町立図書館まちとしょテラソ、すべてが「本」の為のものだ。
詳細な解説には1館ずつじっくりと訪ね歩きたくなるが、「図書館に入るとお手洗いに行きたくなる」説はどの図書館で実証されるだろうか。読み応え大いに有りのずっしりと重い一冊。