不動産トピックス

【今週号の最終面特集】ドローン活用最前線

2021.08.30 14:23

活躍の場広がる
機能性・安全性向上で活用しやすく ビル外壁・屋上点検以外の用途多数
 ドローンの注目度が高まっている。東京オリンピック開会式では多数の機のドローンが夜空でパフォーマンスを披露し話題になったが、その利活用範囲は多種多様。ビルの屋上や外壁点検など、ビルオーナーにとっても身近なツールであるドローンの更なる可能性を探る。

災害時のアナウンス 避難誘導や情報伝達
 ドローン(無人航空機)には様々な役割が期待されている。空撮や農薬散布、過疎地への物流、ビルの点検作業など多岐にわたる。用途にあわせ、新たな機能が搭載されたドローンが続々登場している。
 ドローンの活躍場面のひとつは災害時だ。避難誘導や行方不明者の上空からの捜索や、災害発生前の注意喚起のアナウンスなどで活用される。
 クオリティソフト(和歌山県西牟婁郡白浜町)が展開している災害対策用の「アナウンサードローン」は、音声スピーカーを搭載しており、避難誘導など様々な情報伝達ができる。
 音声伝達機能付きのドローンがあれば、広域災害では多くの人に必要な情報を届けることが可能だ。同社の「アナウンサードローン」は圧電スピーカー搭載により、クリアな音質が可能。プロペラの風切り音や周囲の騒音に負けない音声出力を実現。
 人の音声(3・4KHz周辺)の音域をより強く出力することで聞き取りやすい。
 また、非常に省電力で、軽量という特徴もあり、アナウンス放送をしながらの連続飛行時間は他社の2倍以上である約40分間。2019年3月に初期バージョン(中国製機体使用)を発売開始、その後、2020年6月に双葉電子工業(千葉県茂原市)の国産機体を用いたアナウンサードローンが完成・販売開始となった。2021年内には更に音質を改善した国産ドローンが完成予定だ。
 「ドローンからのアナウンスは、圧電スピーカーと音声データ用送信機の音質と音圧の調整が非常に難しいのです。初期バージョンの開発には1年半程度擁しました」と語るのはクオリティソフト ドローンチームリーダーの竹中智彦氏。
 災害時には正確な情報が確実に届くことが重要だ。アナウンスがあっても聞き取ることができなくては意味がない。

圧電スピーカー搭載 29カ国後でアナウンス
 「圧電スピーカーは通常のスピーカーとは構造が違います。もともとは産業機械などの警告音用です。音を大きくするというより、音がより鮮明になる特性でしょうか。静かなところで風がなければ、30~50メートルの高さから500メートル先でも聞こえます。実験では高さ150メートル飛行中のドローンからもアナウンスはクリアに聞こえました」(竹中氏)。
 日本語以外にも対応しており、文章を入力し指定した言語でアナウンスされる。29カ国語でのAIアナウンスが可能だ。

抗菌・抗ウイルス ドローンでコーティング
 他分野に広がるサービスには感染症対策関連もある。
 ミラテクドローン(東京都品川区)では、ドローンによる抗菌・抗ウイルスコーティングサービスを開始した。イベント会場や劇場、ホール、学校・病院などのエントランスで、ドローンを飛ばし、液剤を噴射する。農薬散布用のドローンをもとに、ノズルの部分を改良した機体を使用する。また、GPS信号が受信できない屋内において、対象物である机や椅子から2メートル程度の高さで飛行するため、パイロットには高度な技術が必要となる。
 「パートナー企業である機体メーカーの東光鉄工と試行錯誤を重ね、コーティングの検証結果を得て4月からサービスを開始しました。このサービスは飛行も難しく、パイロットの育成も必要です。当社は全国の通信建設会社等とパートナー契約を結び、約50拠点に150名のパイロットがおり、このサービス向けに育成を進めているところです」と話すのは同社代表取締役社長の佐々木康之氏。
スクール事業のほか、機体の販売やメンテナンス事業も展開しているが、「特に、新たな事業領域で技術を実用化することに注力しています。ドローンによるビル・建物の3D・図面化や測量・点検など、ドローン運航サービスには様々な可能性があります。スクールではそれらの専門的なコースも取り入れパイロットを養成し、事業拡大していきたい」(佐々木氏)。

プログラミング教育 ドローン飛行見学で好反応
 今後、活用場面がさらに広がるドローンだが、まだまだ一般への認知度は低い。
 クオリティソフトは和歌山県教育委員会のプロジェクト「きのくにICT教育」のアドバイザーも務めており、プログラミング教材開発にも力を入れている。
 「これからより一層プログラミング教育の需要が高まると考えています。『プログラムを学びましょう』ではなく、ドローンをどう飛ばしたいのか、どう活用したいのか、そのためにどうプログラムを使うのかというように、課題解決のためのプログラムというコンセプトで教材を作りました。学生の皆さんは、実際にドローンが飛んでいる姿を見せると、非常に反応がいいですね」(竹中氏)。
同社の教材は全国の工業高校、高専を中心に約130カ所以上で購入されており、今後さらに広めていきたいという。

パイロット国家資格制度養成スクール活況
 また、スクール事業も活況だ。東京都内でドローンパイロット養成スクールを運営するハミングバード(東京都港区)は7月、新宿にドローンスクールを新規開校した。
 代表取締役の鈴木伸彦氏は、「2017年のお台場での開校以来、当社のドローンパイロットの養成講座では今までに多くの受講生を迎えました。以前は富裕層の趣味として受講する方が多かったのですが、今はビジネス用途の方も多く受講されます。2022年度にはドローンパイロット国家資格制度がスタートされます。パイロット不足も指摘されており、より多くの方にスキルを身に着けていただけるようVRトレーニングツールも開発しました。新宿校開校でさらなるドローン産業の発展に尽くしていきたい」と抱負を語る。
 法整備や人材育成が進み、ドローンを活用しやすい仕組みが広がればビジネスは大きく前進する。機体の低価格化もあり、ビルオーナーの利用場面も従来の点検作業以外にも様々に広がるだろう。積極的に取組むべきだ。


国産ドローンシェア拡大へ
クオリティソフト ドローンチーム リーダー 竹中智彦氏
 今後更にドローンを使ったサービスの需要が拡大すると考えており、利用方法も多種多様になると考えています。
 ドローンがより身近になることで、安全安心な運用が求められることになり、品質だけでなくセキュリティ対策の面でもしっかりした対策求められてきます。
 そのような市場の動きのなかで、現状非常に小さな国産ドローンのシェアが一気に拡大するタイミングが近づいていると思います。 そのタイミングを逃さずより良いサービスをご提供できるよう、双葉電子工業様との国産機体+クラウドでの管理サービス展開を推進していきたいと考えています。

産業・地域のために
ミラテクドローン 代表取締役社長 佐々木康之氏
 ドローンの市場は海外に比べ、まだ立ち遅れていると思います。特に物流サービスでは、安全、制度、性能等の面で、実用化まで時間がかかっていますが、これから非常に伸びていく分野だと思います。私どもがこれまで手掛けてきた点検・測量・農業等の分野もこれからまだまだ伸びていくと思います。
 現在はまだまだ認知度が低く、街なかでドローンを飛ばしていると警察に通報されることもあります(笑)。産業・地域のためにドローンが有効だということを広く認知してもらうのも私どもの仕事だと思っています。




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