不動産トピックス

クローズアップ 駐車場活用編

2021.09.06 10:30

 シェアリングの概念が浸透して久しい昨今。駐車場の有効活用方法に注目が集まっている。駐車していない時間をいかにして収益化するか。コロナ禍の昨今ならではのニーズをくみ取った活用方法に光明が差す。

「TORBOX」のテストマーケティング開始 日本初の着脱可能なキッチンカーで空きスペースを収益化
 キャンピングカーの企画・製造・販売を行うJUSETZマーケティング(神戸市兵庫区)は7月20日、自社オフィスの駐車場に着脱式キッチンカー「TORBOX(トルボックス)」の焼肉店をオープンした。
 「TORBOX」はJUSETZマーケティングが製造・販売を手掛けるキッチンカー。従来型のものとは異なり、シェル部分が着脱できる点が特徴だ。実店舗を構えるために必要な建築工事が要らず、駐車場や空き地などに設置できる移動型の店舗として活用が期待される。
 開発の経緯を代表取締役の武智剛氏は「キャンピングカーは言ってみれば嗜好品。一時的な利用のニーズが大方なのが現状です。専門メーカーとして、長期的なニーズに対応できるようにと2019年からキッチンカーの企画・開発を始めました。実店舗を構えるとなると施工費用や設備費の初期費用で1000万円かかることも珍しくありませんので、低コストで始められるという点で今後の普及に繋がるのではないかと考え着手しました」と話す。
 キッチンカーの後発として2020年に開発されたのがこの「TORBOX」だ。着脱可能な「TORBOX」はボックス型となっているため、室内飲食も可能となる。1つのBOXの定員は6名。床下に排気口が設置されているため換気面でも問題なし。また内部の壁には特製の壁パネルが設置されており、音とにおいを吸収することも可能。感染リスクへの対策も万全といえる。
 「シェルの部分を着脱式にすることで、安全な場所に設置できることも魅力です。シェルの重量は240kg程度で、大人が数人がかりで押すことで移動できます。実店舗とは違い、原状回復の必要がない点も『TORBOX』の強みです」(武智氏)。
 今回出店した自社保有の駐車場は、神戸市営地下鉄「中央市場」駅徒歩6分に立地。運営するのは本格焼肉が楽しめる「HAKO焼肉じゃけぇ」だ。キッチンカーといえば都心オフィスのランチ難民救済に始まり、昨今はリモートワークの普及から住宅街への出店ニーズも見られ始めるようになった。だが「HAKO焼肉じゃけぇ」が開業した立地は、周辺に工場が並ぶ工業地帯。キッチンカーとしては前代未聞の環境だが、利用者からの反響はまずは上々の様子だ。
 「事前にポスティングで告知を行ったところ、自転車圏内のファミリー層の方々を中心にお越しいただきまして、当初に立てた目標売上も達成しております。メニューの価格設定が競合の焼肉店と比べてリーズナブルだったためだと見ています。安く提供できた背景は、『TORBOX』を活用したことで人件費や施工などの開業コスト、賃料などを抑えることができたのが大きいと捉えています」。
 長期にわたる時短要請や酒類の提供禁止などにより、多くの飲食店舗が苦境に立たされている昨今。閉店を余儀なくされるケースも少なくない中で、各種コストを抑えられるシェアキッチンやキッチンカーの運営を始める事業者も増えている。
 JUSETZマーケティングでは「TORBOX」を売るだけでなく、出店場所や経営戦略などのコンサルティングも含めた提案を行う。武智氏は今後のキッチンカー業界について、こう展望する。
 「事業者が店舗の経営悪化によるコスト削減を考えたとき、真っ先に目をつけるのが賃料だと思います。可動式の店舗経営であれば諸コストを抑えられ、効率よく収益を得ることもできるため主流になってくるとみています。ビル前の共用スペースにキッチンカーが出店をすることは、ビルの付加価値にもつながるため、積極的に誘致をするケースが今後さらに増えていくのではないでしょうか。駐車場であれば駐車スペースとして貸すよりもキッチンカー誘致の方が収入的にも得策です。キッチンカーの事業者数に誘致スペースの数が追い付いていないのが現状ですが、店舗経営者、不動産オーナー共にメリットのある事業だと考えています」。
 キッチンカー業界も転換期に差し掛かっていることを実感させられる。飲食事業のビジネスモデルとして、定番化する日も遠くはないのではないか。

駐車場シェア「特P」のアースカーと中部電力ミライズコネクトが業務提携
 駐車場シェアリングサービス「特P(とくぴー)」を運営するアースカー(東京都千代田区)は、8月に中部電力ミライズコネクト(愛知県名古屋市)と業務提携を締結した。中部電力ミライズコネクトは提携により、新規事業として中部地域の利用客に向けた遊休駐車場の貸出サービスを開始した。
 「特P」は、個人宅や店舗、オフィス、月極駐車場などの遊休駐車スペースを、初期費用ゼロ、運営費用ゼロで貸し出しできるシェアリングサービス。地域のニーズに合わせ「1日貸し」、「時間貸し」のほか、長期の月極利用の「サブスク」、1カ月単位の短期月極の「マンスリー」の4パターンの貸出が可能で、駐車場オーナーは利用に応じた収入を得ることができる。
 オーナーが行うのは最初の簡単な登録のみで、ユーザーとのやり取りや煩わしい契約・管理作業は発生しないため、初心者でも手軽に駐車場運営が可能となる。アースカーでは、ユーザーがネットで予約・検索できる駐車場が増えることで交通利便性が大きく向上し、地域が抱える駐車場不足や違法駐車の問題解決にもつながるとしている。
 中部電力ミライズコネクトは、中部電力ミライズと三菱商事(東京都千代田区)の合弁により2021年4月に設立された。「生涯にわたってお客さまによりそう」をコンセプトに、くらし全般のサービスを提供する。
 提携により中部電力ミライズコネクトは、地盤である中部地域の顧客に遊休駐車場の収益化を提案できるようになる。「特P」を通じた駐車場貸出や集客、ユーザー対応はアースカーがサポートするほか、中部電力ミライズが運営するビジネス向けWEBサービス「ビジエネ」と家庭向けWEBサービス「カテエネ」を通じ、駐車場活用を提案する。中部電力ミライズコネクトでは、昨今の新型コロナウイルスの影響で地域経済が打撃を受けるなか、これらの取り組みを通じたビジネスやコミュニティの「つながり」を創造し、中部地域の活性化と発展に貢献するとしている。
 アースカーは地域企業とのパートナーシップを積極的に行う方針を打ち出しており、今回の中部エリアは沖縄エリアに続く地域パートナー提携となる。今後も地域企業と協業し、パートナー、駐車場オーナー、ユーザーの三者にとって有益となる駐車場シェアリングサービスを全国に広めることで、地域や社会の発展に取り組んでいくという。




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